《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
第61話「龍のウロコ」
便所からロッツェオが戻ってきた。そのときには手に木箱を抱えていた。
「いやー。お待たせしました」
「その箱は?」
と、エムールが尋ねる。
龍一郎は黒騎士――つまりこのエムールのお供という設定だから、なるべく口をはさまぬようにつつしんでいることにした。エムールとロッツェオの話に耳を傾けていた。
「セッカク黒騎士殿に来ていただいたのです。見ていただきたいものがありましてな」
テーブルの上に木箱を置いて、フタを開いた。
中から出てきたのは、皮のようなものだった。動物の皮にしてはやや頑丈すぎるように思える。まるで鉱石から薄皮を剥いだかのようなシロモノだった。
そして何より特徴的なのは、その鮮烈なまでの赤だ。
目が痛くなるほど赤い。
「なんですか、これ?」
と、エムールが身を乗り出していた。
そのヘルムからちゃんと見えているのが、怪しいものだ。
「龍のウロコです」
「龍のウロコ……?」
赤いカタマリが、ますます輝きを帯びて見えた。
ロッツェオがつるつる頭を叩きながら言う。
「このレオーネには、かつて龍がいたとされています。有名な伝承ですな。龍たちは闘争のすえに絶滅した」
その通りです――とエムールが言葉を継いだ。
「龍の死骸は、この世界を埋め尽くしました。龍の死骸が海を覆い大地となり、樹木となり、そして鉱山となった。その龍の怨念がクロエイとなり、この世に出現するようになった。その代わりに、龍の血管に血を注ぎ込むことで、エネルギーが発生する。レオーネの世界中に広まってる話です」
「その龍のウロコですよ」
と、ロッツェオは木箱からウロコを取り出して見せた。
「ホンモノなんですか?」
「村の者たちが言うには、ホンモノだそうですよ」
「それはどういう意味です?」
「このシュバルツ村の者たちは、龍の姿を目撃したことがあるのだそうです。私は見たことありませんがね。龍がはばたいたとき、このウロコを落として行ったのだと聞いとります」
その話を聞くと、龍一郎も龍がはばたく姿をありありと想像できた。
このウロコと同様に真紅のウロコで全身を覆い、荘厳なる両翼をはためかせたのだろう。想像するだけで、その光景に、身震いするほどの興奮と畏怖をおぼえた。
「それでは、ロッツェオさまが直接見たわけではないわけですか」
ええ――とロッツェオが残念そうにうなずく。
「シュバルツ茶の栽培に成功したかわりに、村の者たちから、謝礼として私に渡されたのです。しかし、これはホンモノだと感じますね」
ロッツェオはウロコを木箱にしまって、言葉を続けた。
「このあたりにクロエイが多く発生し、さらには巨大種なんてものが現れるのは、ホンモノの龍が生息しているから――と、シュバルツ村の者は言っております」
「バカな。龍はすでに絶滅したはずでは?」
「人の目を避けて、ヒッソリと生きているのかもしれません。このウロコが何よりの証拠でしょう」
「これは、しかるべき学術機関などに提出したほうが良いのでは? 龍の血管やクロエイについて、何か新しいことがわかるかもしれません」
「しかし、村の者から渡されたものですからな。それは村の者とよく相談して決めようと思います」
龍がいるかもしれない。
龍一郎はずっと黙して耳を傾けていただけだったが、興奮でカラダが火照っていた。
龍がいたからどうってことはないのだが、見てみたいとは思う。陳腐な言葉を用いるなら、男のロマンってヤツだ。
「いやー。お待たせしました」
「その箱は?」
と、エムールが尋ねる。
龍一郎は黒騎士――つまりこのエムールのお供という設定だから、なるべく口をはさまぬようにつつしんでいることにした。エムールとロッツェオの話に耳を傾けていた。
「セッカク黒騎士殿に来ていただいたのです。見ていただきたいものがありましてな」
テーブルの上に木箱を置いて、フタを開いた。
中から出てきたのは、皮のようなものだった。動物の皮にしてはやや頑丈すぎるように思える。まるで鉱石から薄皮を剥いだかのようなシロモノだった。
そして何より特徴的なのは、その鮮烈なまでの赤だ。
目が痛くなるほど赤い。
「なんですか、これ?」
と、エムールが身を乗り出していた。
そのヘルムからちゃんと見えているのが、怪しいものだ。
「龍のウロコです」
「龍のウロコ……?」
赤いカタマリが、ますます輝きを帯びて見えた。
ロッツェオがつるつる頭を叩きながら言う。
「このレオーネには、かつて龍がいたとされています。有名な伝承ですな。龍たちは闘争のすえに絶滅した」
その通りです――とエムールが言葉を継いだ。
「龍の死骸は、この世界を埋め尽くしました。龍の死骸が海を覆い大地となり、樹木となり、そして鉱山となった。その龍の怨念がクロエイとなり、この世に出現するようになった。その代わりに、龍の血管に血を注ぎ込むことで、エネルギーが発生する。レオーネの世界中に広まってる話です」
「その龍のウロコですよ」
と、ロッツェオは木箱からウロコを取り出して見せた。
「ホンモノなんですか?」
「村の者たちが言うには、ホンモノだそうですよ」
「それはどういう意味です?」
「このシュバルツ村の者たちは、龍の姿を目撃したことがあるのだそうです。私は見たことありませんがね。龍がはばたいたとき、このウロコを落として行ったのだと聞いとります」
その話を聞くと、龍一郎も龍がはばたく姿をありありと想像できた。
このウロコと同様に真紅のウロコで全身を覆い、荘厳なる両翼をはためかせたのだろう。想像するだけで、その光景に、身震いするほどの興奮と畏怖をおぼえた。
「それでは、ロッツェオさまが直接見たわけではないわけですか」
ええ――とロッツェオが残念そうにうなずく。
「シュバルツ茶の栽培に成功したかわりに、村の者たちから、謝礼として私に渡されたのです。しかし、これはホンモノだと感じますね」
ロッツェオはウロコを木箱にしまって、言葉を続けた。
「このあたりにクロエイが多く発生し、さらには巨大種なんてものが現れるのは、ホンモノの龍が生息しているから――と、シュバルツ村の者は言っております」
「バカな。龍はすでに絶滅したはずでは?」
「人の目を避けて、ヒッソリと生きているのかもしれません。このウロコが何よりの証拠でしょう」
「これは、しかるべき学術機関などに提出したほうが良いのでは? 龍の血管やクロエイについて、何か新しいことがわかるかもしれません」
「しかし、村の者から渡されたものですからな。それは村の者とよく相談して決めようと思います」
龍がいるかもしれない。
龍一郎はずっと黙して耳を傾けていただけだったが、興奮でカラダが火照っていた。
龍がいたからどうってことはないのだが、見てみたいとは思う。陳腐な言葉を用いるなら、男のロマンってヤツだ。
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