《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
第33話「クラウス・ヒューリー」
クラウス・ヒューリーは一度、領主館に行くことにした。
奴隷を人として扱わない父のことは嫌いだ。だが、このグランドリオンの領主であり、侯爵である父はチカラを持っている。そのチカラに頼ろうと思ったのだ。
何者かによって、外灯のチューブが切断されていた。イタズラにしては悪質すぎる。
明日もまた、どこか別の場所にイタズラをされるかもしれない。そうなったらもう、クロエイを抑えられない。そのために、貧民街に警備の兵士を派遣するように頼みに行こうとしていた。
都市の入口である城門棟が近づいてくる。
「おおっ。クラウス殿。お父上が探しておられましたよ」
と、城門棟を見張っていた衛兵が、そう言った。
「どうも、すみません」
と、クラウスは頭を下げておいた。
「明日には、フィルリア姫を領主館に招くので、そのさいにクラウス殿にも同席してもらうとのことです」
衛兵がそう言ってくる。
この都市の兵士はすべて、父の手駒だ。父の跡を継ぐとは限らないが、媚びへつらってくる兵士は少なくない。
「いちおう血質値を計ってくれ」
都市内に入るには、暗黒病にかかっているか否かの検査も兼ねて、血を調べるのが慣例だった。
「いやいや。侯爵さまの御子息にそのようなことは出来ません。ささっ、領主館までご案内しますよ」
衛兵の狙いは見え透いている。
父がクラウスを探すように命じていた。この衛兵はあたかも自分が、クラウスを発見したように父に報告するのだろう。
とはいえ、急いでくれることにはありがたい。
こうしている今でも、外灯のチューブを切られているかもしれないのだ。
ふと友人の顔が思い浮かんだ。シラカミリュウイチロウ。変わった名前の男だが、血質が低いからといって他人を見下さないところに好感が持てる。
血質値200の彼に、フィルリア姫がいれば、貧民街は無事だろう。焦る気持がすこし軽くなった。
「さあ、どうぞ」
と、領主館に通された。
必要以上に大きな庭がある。
わずかな暗闇ですら払拭するかのように、あちこちに外灯が立てられている。外灯のもとにはくくりつけられている女奴隷たちがいた。
舌打ちしたくなるような光景だ。どの女もそこそこ顔立ちが良くて、傷だらけなこともクラウスを不愉快にさせる。
こういう父のやり方が気にくわないから、家にはあまり寄りつかないようにしているのだ。
「それでは私は、侯爵さまをお呼びしてきますので」
と、衛兵は先に領主館に入って行った。
どうせ、いかに苦労して御子息を見つけ出したか――といった話をしているのだろう。クラウスが領主館に入ると、メイドたちが集まってきた。
「お久しぶりです。クラウスさま」
別に頼んでもいないのに、カラダ中をタオルで拭いてくれる。そうこうしてるうちに父が現れた。
「クラウス! なんだその姿は。ドブネズミになりおってからに」
「父上。すこしお話したいことが」
「小遣いでもせびりに来たのか」
怒鳴り返してやりたいところだが、あまり怒らせると頼みを聞いてもらえなくなる。
「そういうわけでは――」
「良い。私の部屋まで。それからくれぐれも床を汚すなよ。カラダを隅々まで拭いてから上がるように。明日にでもフィルリア姫がいらっしゃる予定なのだからな」
「はい」
フィルリア姫が貧民街にいるとは、想像もしていないのだろう。父が知らなくて、自分が知っているということに少し優越感を覚えた。
メイドたちに靴の裏まで拭かれて、ようやく家のなかに上がることを許された。階段をのぼってすぐのところに父の部屋がある。
ノックする。
「入れ」
父の声が返ってきた。
奴隷を人として扱わない父のことは嫌いだ。だが、このグランドリオンの領主であり、侯爵である父はチカラを持っている。そのチカラに頼ろうと思ったのだ。
何者かによって、外灯のチューブが切断されていた。イタズラにしては悪質すぎる。
明日もまた、どこか別の場所にイタズラをされるかもしれない。そうなったらもう、クロエイを抑えられない。そのために、貧民街に警備の兵士を派遣するように頼みに行こうとしていた。
都市の入口である城門棟が近づいてくる。
「おおっ。クラウス殿。お父上が探しておられましたよ」
と、城門棟を見張っていた衛兵が、そう言った。
「どうも、すみません」
と、クラウスは頭を下げておいた。
「明日には、フィルリア姫を領主館に招くので、そのさいにクラウス殿にも同席してもらうとのことです」
衛兵がそう言ってくる。
この都市の兵士はすべて、父の手駒だ。父の跡を継ぐとは限らないが、媚びへつらってくる兵士は少なくない。
「いちおう血質値を計ってくれ」
都市内に入るには、暗黒病にかかっているか否かの検査も兼ねて、血を調べるのが慣例だった。
「いやいや。侯爵さまの御子息にそのようなことは出来ません。ささっ、領主館までご案内しますよ」
衛兵の狙いは見え透いている。
父がクラウスを探すように命じていた。この衛兵はあたかも自分が、クラウスを発見したように父に報告するのだろう。
とはいえ、急いでくれることにはありがたい。
こうしている今でも、外灯のチューブを切られているかもしれないのだ。
ふと友人の顔が思い浮かんだ。シラカミリュウイチロウ。変わった名前の男だが、血質が低いからといって他人を見下さないところに好感が持てる。
血質値200の彼に、フィルリア姫がいれば、貧民街は無事だろう。焦る気持がすこし軽くなった。
「さあ、どうぞ」
と、領主館に通された。
必要以上に大きな庭がある。
わずかな暗闇ですら払拭するかのように、あちこちに外灯が立てられている。外灯のもとにはくくりつけられている女奴隷たちがいた。
舌打ちしたくなるような光景だ。どの女もそこそこ顔立ちが良くて、傷だらけなこともクラウスを不愉快にさせる。
こういう父のやり方が気にくわないから、家にはあまり寄りつかないようにしているのだ。
「それでは私は、侯爵さまをお呼びしてきますので」
と、衛兵は先に領主館に入って行った。
どうせ、いかに苦労して御子息を見つけ出したか――といった話をしているのだろう。クラウスが領主館に入ると、メイドたちが集まってきた。
「お久しぶりです。クラウスさま」
別に頼んでもいないのに、カラダ中をタオルで拭いてくれる。そうこうしてるうちに父が現れた。
「クラウス! なんだその姿は。ドブネズミになりおってからに」
「父上。すこしお話したいことが」
「小遣いでもせびりに来たのか」
怒鳴り返してやりたいところだが、あまり怒らせると頼みを聞いてもらえなくなる。
「そういうわけでは――」
「良い。私の部屋まで。それからくれぐれも床を汚すなよ。カラダを隅々まで拭いてから上がるように。明日にでもフィルリア姫がいらっしゃる予定なのだからな」
「はい」
フィルリア姫が貧民街にいるとは、想像もしていないのだろう。父が知らなくて、自分が知っているということに少し優越感を覚えた。
メイドたちに靴の裏まで拭かれて、ようやく家のなかに上がることを許された。階段をのぼってすぐのところに父の部屋がある。
ノックする。
「入れ」
父の声が返ってきた。
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