《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士

執筆用bot E-021番 

第33話「クラウス・ヒューリー」

 クラウス・ヒューリーは一度、領主館に行くことにした。



 奴隷を人として扱わない父のことは嫌いだ。だが、このグランドリオンの領主であり、侯爵である父はチカラを持っている。そのチカラに頼ろうと思ったのだ。



 何者かによって、外灯のチューブが切断されていた。イタズラにしては悪質すぎる。



 明日もまた、どこか別の場所にイタズラをされるかもしれない。そうなったらもう、クロエイを抑えられない。そのために、貧民街に警備の兵士を派遣するように頼みに行こうとしていた。



 都市の入口である城門棟が近づいてくる。



「おおっ。クラウス殿。お父上が探しておられましたよ」



 と、城門棟を見張っていた衛兵が、そう言った。


「どうも、すみません」
 と、クラウスは頭を下げておいた。



「明日には、フィルリア姫を領主館に招くので、そのさいにクラウス殿にも同席してもらうとのことです」



 衛兵がそう言ってくる。



 この都市の兵士はすべて、父の手駒だ。父の跡を継ぐとは限らないが、媚びへつらってくる兵士は少なくない。



「いちおう血質値を計ってくれ」



 都市内に入るには、暗黒病にかかっているか否かの検査も兼ねて、血を調べるのが慣例だった。



「いやいや。侯爵さまの御子息にそのようなことは出来ません。ささっ、領主館までご案内しますよ」



 衛兵の狙いは見え透いている。



 父がクラウスを探すように命じていた。この衛兵はあたかも自分が、クラウスを発見したように父に報告するのだろう。



 とはいえ、急いでくれることにはありがたい。



 こうしている今でも、外灯のチューブを切られているかもしれないのだ。



 ふと友人の顔が思い浮かんだ。シラカミリュウイチロウ。変わった名前の男だが、血質が低いからといって他人を見下さないところに好感が持てる。



 血質値200の彼に、フィルリア姫がいれば、貧民街は無事だろう。焦る気持がすこし軽くなった。



「さあ、どうぞ」
 と、領主館に通された。



 必要以上に大きな庭がある。



 わずかな暗闇ですら払拭するかのように、あちこちに外灯が立てられている。外灯のもとにはくくりつけられている女奴隷たちがいた。



 舌打ちしたくなるような光景だ。どの女もそこそこ顔立ちが良くて、傷だらけなこともクラウスを不愉快にさせる。



 こういう父のやり方が気にくわないから、家にはあまり寄りつかないようにしているのだ。



「それでは私は、侯爵さまをお呼びしてきますので」
 と、衛兵は先に領主館に入って行った。



 どうせ、いかに苦労して御子息を見つけ出したか――といった話をしているのだろう。クラウスが領主館に入ると、メイドたちが集まってきた。



「お久しぶりです。クラウスさま」



 別に頼んでもいないのに、カラダ中をタオルで拭いてくれる。そうこうしてるうちに父が現れた。



「クラウス! なんだその姿は。ドブネズミになりおってからに」



「父上。すこしお話したいことが」
「小遣いでもせびりに来たのか」



 怒鳴り返してやりたいところだが、あまり怒らせると頼みを聞いてもらえなくなる。



「そういうわけでは――」



「良い。私の部屋まで。それからくれぐれも床を汚すなよ。カラダを隅々まで拭いてから上がるように。明日にでもフィルリア姫がいらっしゃる予定なのだからな」



「はい」



 フィルリア姫が貧民街にいるとは、想像もしていないのだろう。父が知らなくて、自分が知っているということに少し優越感を覚えた。



 メイドたちに靴の裏まで拭かれて、ようやく家のなかに上がることを許された。階段をのぼってすぐのところに父の部屋がある。



 ノックする。



「入れ」
 父の声が返ってきた。

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