《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
第30話「わきでるクロエイ」
宿屋を出た。
一瞬感動を覚えた。
空が暗いから夜だというのはわかる。だが、まるで夜だと感じさせないぐらいに、世界は光に満ちていた。
都市の城壁の向こうからは、光があふれている。城壁に設置された外灯も燦然と輝いている。貧民街も、負けじと明かりを放っていた。
しかし、悲しい光だった。
都市のほうは奴隷たちの血を使って、光を放っているのだ。かなりの人員が裂かれているのだろう。
「貧民街のほうは誰の血を使って、明かりを発しているんだ?」
「みんな協力しあって、明かりを保っているんだ。クロエイが沸かないようにな。オレも自分の血を分けている」
クラウスが、そう説明してくれた。
奴隷を虐げてムリに血を採るよりかは、平和的だ。
「じゃあ、どうしてクロエイが町中で沸いてるんだ?」
雨が降っているとはいえ、これだけの明かりを保っているなら沸かないはずだ。クロエイは明かりのない暗闇で生まれてくると聞いている。
「誰かが、外灯のチューブを切ってやがるんだよ」
こっちだ――とクラウスが走った。
雨に打たれながら、クラウスについて行った。
クラウスの真紅の髪も濡れてしなっていた。龍一郎の髪も同じく濡れそぼっているはずだ。足元が酷くぬかるんでいた。滑らないように気を付けて走る必要があった。
クラウスに案内された一角。
そこは広間になっていた。しかし、その広間だけは異様に暗い。近くにある建物もすべて明かりを失っている。まるでその一角で、暗闇が醸造されているかのようだった。異様に粘着質な暗闇が漂っている。
「これを見ろ」
クラウスは近くにあった外灯を指差した。そこから伸びているはずのチューブが、根本から切り落とされていた。
「人為的に誰かが切ったのか?」
「このチューブは龍の血管だ。簡単に切れるようなもんじゃない。誰かが刃物で切ったに違いない」
「でも、誰がそんなことを?」
「わからん。わからんが、頭がオカシイやつの仕業としか思えない。こんなことをしたら――」
クラウスのその言葉の続きは、目の前の現象が証明していた。
人の形をした黒い影が、闇から出産されていた。顔面に口しかないオゾマシイ生物だ。その口からは長い舌が伸びていた。
1匹や2匹ではない。
10匹、20匹――。
次から次へと生まれている。
「すごい数だけど……」
思わず後ずさりをする。
「クロエイは明かりを嫌うが、退治することは出来ない。退治するには血質値30以上の血が必要だ」
「あれを倒せば良いのか」
「都市の人たちが、外灯のかわりになる明かりを用意してくれている。その間、ここを抑える」
「ここだけで良いのか?」
「庶民の中にも血質値がそこそこ高い者もいる。別の道は彼らが封鎖してくれている」
「わかった」
龍一郎は《血影銃》のチューブを袖にあいている穴から刺しこんだ。腕に針がささる。瞬間。チューブに血が流れてゆく。
引き金をしぼった。
銃口からはカラクレナイの弾丸が射出される。
けぶる雨の中をかいくぐり、血の弾丸は1匹のクロエイを貫いた。貫かれたクロエイは苦しそうに悶える。そして渦を巻くようにして溶けていった。
「さすが血質値200は違うな」
そう言う、クラウスは大剣を装備していた。クレイモアというのだろうか。人の丈ほどもある大剣だ。
「剣で戦えるのか?」
「ただの剣じゃない」
大剣からもチューブが伸びている。クラウスはチューブを腕に刺しこんだ。すると大剣は仄赤く発光した。
「血を吸う大剣。《吸血剣》だ」
跳びかかってくるクロエイを、クラウスがなぎ払った。大剣を受けたクロエイは弾き飛ばされていた。
一撃で仕留めることは出来なかったようだが、ダメージを負わせることは出来たようだ。
クロエイは出血していた。いや。血を流しているのではない。よく見ると、黒い影から、墨汁のような闇をこぼしているのだった。
「すごいな」
クロエイ相手に、よく剣で戦おうと思える。あんなバケモノには近づきたくもない。
下手をすると、こちらの影を食われるのだ。影を食われたら、その者もクロエイになる。すなわち暗黒病だ。
「《血影銃》は優秀な武器だが、血の消費が激しい。特に、血質値が低い者にとっては使いにくい武器なんだよ」
「そうなのか」
たしかに一発一発に血を使っている。乱用は出来ないかもしれない。
「気を抜くなよ。来るぞ」
「わかってる」
一瞬感動を覚えた。
空が暗いから夜だというのはわかる。だが、まるで夜だと感じさせないぐらいに、世界は光に満ちていた。
都市の城壁の向こうからは、光があふれている。城壁に設置された外灯も燦然と輝いている。貧民街も、負けじと明かりを放っていた。
しかし、悲しい光だった。
都市のほうは奴隷たちの血を使って、光を放っているのだ。かなりの人員が裂かれているのだろう。
「貧民街のほうは誰の血を使って、明かりを発しているんだ?」
「みんな協力しあって、明かりを保っているんだ。クロエイが沸かないようにな。オレも自分の血を分けている」
クラウスが、そう説明してくれた。
奴隷を虐げてムリに血を採るよりかは、平和的だ。
「じゃあ、どうしてクロエイが町中で沸いてるんだ?」
雨が降っているとはいえ、これだけの明かりを保っているなら沸かないはずだ。クロエイは明かりのない暗闇で生まれてくると聞いている。
「誰かが、外灯のチューブを切ってやがるんだよ」
こっちだ――とクラウスが走った。
雨に打たれながら、クラウスについて行った。
クラウスの真紅の髪も濡れてしなっていた。龍一郎の髪も同じく濡れそぼっているはずだ。足元が酷くぬかるんでいた。滑らないように気を付けて走る必要があった。
クラウスに案内された一角。
そこは広間になっていた。しかし、その広間だけは異様に暗い。近くにある建物もすべて明かりを失っている。まるでその一角で、暗闇が醸造されているかのようだった。異様に粘着質な暗闇が漂っている。
「これを見ろ」
クラウスは近くにあった外灯を指差した。そこから伸びているはずのチューブが、根本から切り落とされていた。
「人為的に誰かが切ったのか?」
「このチューブは龍の血管だ。簡単に切れるようなもんじゃない。誰かが刃物で切ったに違いない」
「でも、誰がそんなことを?」
「わからん。わからんが、頭がオカシイやつの仕業としか思えない。こんなことをしたら――」
クラウスのその言葉の続きは、目の前の現象が証明していた。
人の形をした黒い影が、闇から出産されていた。顔面に口しかないオゾマシイ生物だ。その口からは長い舌が伸びていた。
1匹や2匹ではない。
10匹、20匹――。
次から次へと生まれている。
「すごい数だけど……」
思わず後ずさりをする。
「クロエイは明かりを嫌うが、退治することは出来ない。退治するには血質値30以上の血が必要だ」
「あれを倒せば良いのか」
「都市の人たちが、外灯のかわりになる明かりを用意してくれている。その間、ここを抑える」
「ここだけで良いのか?」
「庶民の中にも血質値がそこそこ高い者もいる。別の道は彼らが封鎖してくれている」
「わかった」
龍一郎は《血影銃》のチューブを袖にあいている穴から刺しこんだ。腕に針がささる。瞬間。チューブに血が流れてゆく。
引き金をしぼった。
銃口からはカラクレナイの弾丸が射出される。
けぶる雨の中をかいくぐり、血の弾丸は1匹のクロエイを貫いた。貫かれたクロエイは苦しそうに悶える。そして渦を巻くようにして溶けていった。
「さすが血質値200は違うな」
そう言う、クラウスは大剣を装備していた。クレイモアというのだろうか。人の丈ほどもある大剣だ。
「剣で戦えるのか?」
「ただの剣じゃない」
大剣からもチューブが伸びている。クラウスはチューブを腕に刺しこんだ。すると大剣は仄赤く発光した。
「血を吸う大剣。《吸血剣》だ」
跳びかかってくるクロエイを、クラウスがなぎ払った。大剣を受けたクロエイは弾き飛ばされていた。
一撃で仕留めることは出来なかったようだが、ダメージを負わせることは出来たようだ。
クロエイは出血していた。いや。血を流しているのではない。よく見ると、黒い影から、墨汁のような闇をこぼしているのだった。
「すごいな」
クロエイ相手に、よく剣で戦おうと思える。あんなバケモノには近づきたくもない。
下手をすると、こちらの影を食われるのだ。影を食われたら、その者もクロエイになる。すなわち暗黒病だ。
「《血影銃》は優秀な武器だが、血の消費が激しい。特に、血質値が低い者にとっては使いにくい武器なんだよ」
「そうなのか」
たしかに一発一発に血を使っている。乱用は出来ないかもしれない。
「気を抜くなよ。来るぞ」
「わかってる」
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