《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士

執筆用bot E-021番 

第24話「ベルの所有権」

 領主が会いたがっていると聞いた。領主と言うと、グランドリオンでイチバン偉い人なのだろう。会っても損はないかと思った。



 そう思って龍一郎は領主館に来た。しかし、ベルを奪われそうになったので、あわてて逃げてきた。



「大丈夫だったか?」
「……うん」



「領主だからってムチャクチャしやがるな。奴隷のことを人間だとも思ってない感じだったし」



 不愉快だ。



 レオーネに奴隷制度があるなら、それは受け入れるしかない。そういう世界なのだから、奴隷を雑に扱うのも仕方がないと許容できる。



 しかし、ベルのことを「使い古し」だとか言って、ムリヤリ取り上げようとしてきた。



 怒りが込み上げてくる。



 裏路地に、身をひそめていた。



 ゴミ箱として使われていた木樽きたるが置かれていた。そこに隠れていた。マチス侯爵のメイドたちが通り過ぎて行った。



「行ってくれたみたいだ」
「どうして、ここまでするの?」
「何が?」



「新しい奴隷に、交換してもらえば良かったのに」



 ベルの口調は淡々としたものだが、どことなくスねているようにも感じた。



「そんなこと言うなよな」
 好きになったから――とは言えない。



 照れ臭い。



「正確には私の所有権はまだ、ソトロフ男爵の物。仮にソトロフ男爵が返せと言ってきたら、返さなくちゃいけない」



「返すとか、返さないとか、そういう問題じゃないだろう。ベルが帰りたいのかどうかっていう話で」



「そんなキレイゴトは通じない。奴隷の所有権は、ちゃんと決められている」



 ベルの言葉は、凍てつくように冷たい。
 セッカクの青くてキレイな瞳が死んでいる。



 ハッとした。



 今の、マチス侯爵とのヤリトリでイチバン傷ついたのは、ベル自身なのだろう。



「その所有権ってのは、どうやったら得られるんだ?」



「私の所有権?」
「そ、そうだ」



 所有権というからには、権利を持っていれば、個人の所有物になるのだろう。なら、ベルの所有権を手に入れることが出来れば、ベルは龍一郎の所有物ということになるのだ。



 所有物になったからといって酷いことをしようとは思わない。思わないが、ベルの所有権を欲しいと思ってしまった。男性的な愚かしい欲求だとわかっていても……。



「ソトロフ男爵から買い取れば良い」
「血でか」



「そう。奴隷にたいして執着を持つ貴族は少ない。だから、買いたいと言えば、たいていはすぐに商談が成立する」



「でも、生きてるのか。ソトロフ男爵とやらは」



 ケルネ村が襲われた際に、ほとんどの人間はクロエイになってしまった。



「たぶんスクラトア・クェルエイが、今の私の所有権を持ってる」



「誰だ、それ?」
 舌を噛みそうな名前だ。



「ソトロフ男爵の息子で、長男。あの、私を殴ってた1人」



 ケルネ村の屋敷に龍一郎が忍び込んだときに、遭遇した相手だろう。金髪のイケメンの顔が、脳裏に浮かんできた。



「どうでも良い質問なんだけど、爵位ってふつうは家の名前につけられるもんじゃないのか?」



 マチス侯爵もソトロフ男爵も、個人名だろう。



「爵位は個人に与えられるものだから」
「そういうもんなのか」



 爵位が、家に与えられるというのは、日本的な考え方なのかもしれない。



「爵位は、血質値が高い人間に与えられる。血質値の高い親から生まれた子供は、同じく血質値が高いことが多い。だから、そのまま爵位を継承するのが常」



 ベルは、そこで辛そうに言葉を切って続けた。



「だけど、生まれてきた子供の血質値が低かったら、その代で爵位は没収される。逆に親の血質値が低くても、子供が高い場合がある。そういうときは、子供にだけ爵位が与えられる」




「徹底して、血が重視されるということか」
「そう」



 冷静になって考えてみれば、地球も同じようなことかもしれない。才能のある人間が優遇されるのは摂理だ。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品