《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
第24話「ベルの所有権」
領主が会いたがっていると聞いた。領主と言うと、グランドリオンでイチバン偉い人なのだろう。会っても損はないかと思った。
そう思って龍一郎は領主館に来た。しかし、ベルを奪われそうになったので、あわてて逃げてきた。
「大丈夫だったか?」
「……うん」
「領主だからってムチャクチャしやがるな。奴隷のことを人間だとも思ってない感じだったし」
不愉快だ。
レオーネに奴隷制度があるなら、それは受け入れるしかない。そういう世界なのだから、奴隷を雑に扱うのも仕方がないと許容できる。
しかし、ベルのことを「使い古し」だとか言って、ムリヤリ取り上げようとしてきた。
怒りが込み上げてくる。
裏路地に、身をひそめていた。
ゴミ箱として使われていた木樽が置かれていた。そこに隠れていた。マチス侯爵のメイドたちが通り過ぎて行った。
「行ってくれたみたいだ」
「どうして、ここまでするの?」
「何が?」
「新しい奴隷に、交換してもらえば良かったのに」
ベルの口調は淡々としたものだが、どことなくスねているようにも感じた。
「そんなこと言うなよな」
好きになったから――とは言えない。
照れ臭い。
「正確には私の所有権はまだ、ソトロフ男爵の物。仮にソトロフ男爵が返せと言ってきたら、返さなくちゃいけない」
「返すとか、返さないとか、そういう問題じゃないだろう。ベルが帰りたいのかどうかっていう話で」
「そんなキレイゴトは通じない。奴隷の所有権は、ちゃんと決められている」
ベルの言葉は、凍てつくように冷たい。
セッカクの青くてキレイな瞳が死んでいる。
ハッとした。
今の、マチス侯爵とのヤリトリでイチバン傷ついたのは、ベル自身なのだろう。
「その所有権ってのは、どうやったら得られるんだ?」
「私の所有権?」
「そ、そうだ」
所有権というからには、権利を持っていれば、個人の所有物になるのだろう。なら、ベルの所有権を手に入れることが出来れば、ベルは龍一郎の所有物ということになるのだ。
所有物になったからといって酷いことをしようとは思わない。思わないが、ベルの所有権を欲しいと思ってしまった。男性的な愚かしい欲求だとわかっていても……。
「ソトロフ男爵から買い取れば良い」
「血でか」
「そう。奴隷にたいして執着を持つ貴族は少ない。だから、買いたいと言えば、たいていはすぐに商談が成立する」
「でも、生きてるのか。ソトロフ男爵とやらは」
ケルネ村が襲われた際に、ほとんどの人間はクロエイになってしまった。
「たぶんスクラトア・クェルエイが、今の私の所有権を持ってる」
「誰だ、それ?」
舌を噛みそうな名前だ。
「ソトロフ男爵の息子で、長男。あの、私を殴ってた1人」
ケルネ村の屋敷に龍一郎が忍び込んだときに、遭遇した相手だろう。金髪のイケメンの顔が、脳裏に浮かんできた。
「どうでも良い質問なんだけど、爵位ってふつうは家の名前につけられるもんじゃないのか?」
マチス侯爵もソトロフ男爵も、個人名だろう。
「爵位は個人に与えられるものだから」
「そういうもんなのか」
爵位が、家に与えられるというのは、日本的な考え方なのかもしれない。
「爵位は、血質値が高い人間に与えられる。血質値の高い親から生まれた子供は、同じく血質値が高いことが多い。だから、そのまま爵位を継承するのが常」
ベルは、そこで辛そうに言葉を切って続けた。
「だけど、生まれてきた子供の血質値が低かったら、その代で爵位は没収される。逆に親の血質値が低くても、子供が高い場合がある。そういうときは、子供にだけ爵位が与えられる」
「徹底して、血が重視されるということか」
「そう」
冷静になって考えてみれば、地球も同じようなことかもしれない。才能のある人間が優遇されるのは摂理だ。
そう思って龍一郎は領主館に来た。しかし、ベルを奪われそうになったので、あわてて逃げてきた。
「大丈夫だったか?」
「……うん」
「領主だからってムチャクチャしやがるな。奴隷のことを人間だとも思ってない感じだったし」
不愉快だ。
レオーネに奴隷制度があるなら、それは受け入れるしかない。そういう世界なのだから、奴隷を雑に扱うのも仕方がないと許容できる。
しかし、ベルのことを「使い古し」だとか言って、ムリヤリ取り上げようとしてきた。
怒りが込み上げてくる。
裏路地に、身をひそめていた。
ゴミ箱として使われていた木樽が置かれていた。そこに隠れていた。マチス侯爵のメイドたちが通り過ぎて行った。
「行ってくれたみたいだ」
「どうして、ここまでするの?」
「何が?」
「新しい奴隷に、交換してもらえば良かったのに」
ベルの口調は淡々としたものだが、どことなくスねているようにも感じた。
「そんなこと言うなよな」
好きになったから――とは言えない。
照れ臭い。
「正確には私の所有権はまだ、ソトロフ男爵の物。仮にソトロフ男爵が返せと言ってきたら、返さなくちゃいけない」
「返すとか、返さないとか、そういう問題じゃないだろう。ベルが帰りたいのかどうかっていう話で」
「そんなキレイゴトは通じない。奴隷の所有権は、ちゃんと決められている」
ベルの言葉は、凍てつくように冷たい。
セッカクの青くてキレイな瞳が死んでいる。
ハッとした。
今の、マチス侯爵とのヤリトリでイチバン傷ついたのは、ベル自身なのだろう。
「その所有権ってのは、どうやったら得られるんだ?」
「私の所有権?」
「そ、そうだ」
所有権というからには、権利を持っていれば、個人の所有物になるのだろう。なら、ベルの所有権を手に入れることが出来れば、ベルは龍一郎の所有物ということになるのだ。
所有物になったからといって酷いことをしようとは思わない。思わないが、ベルの所有権を欲しいと思ってしまった。男性的な愚かしい欲求だとわかっていても……。
「ソトロフ男爵から買い取れば良い」
「血でか」
「そう。奴隷にたいして執着を持つ貴族は少ない。だから、買いたいと言えば、たいていはすぐに商談が成立する」
「でも、生きてるのか。ソトロフ男爵とやらは」
ケルネ村が襲われた際に、ほとんどの人間はクロエイになってしまった。
「たぶんスクラトア・クェルエイが、今の私の所有権を持ってる」
「誰だ、それ?」
舌を噛みそうな名前だ。
「ソトロフ男爵の息子で、長男。あの、私を殴ってた1人」
ケルネ村の屋敷に龍一郎が忍び込んだときに、遭遇した相手だろう。金髪のイケメンの顔が、脳裏に浮かんできた。
「どうでも良い質問なんだけど、爵位ってふつうは家の名前につけられるもんじゃないのか?」
マチス侯爵もソトロフ男爵も、個人名だろう。
「爵位は個人に与えられるものだから」
「そういうもんなのか」
爵位が、家に与えられるというのは、日本的な考え方なのかもしれない。
「爵位は、血質値が高い人間に与えられる。血質値の高い親から生まれた子供は、同じく血質値が高いことが多い。だから、そのまま爵位を継承するのが常」
ベルは、そこで辛そうに言葉を切って続けた。
「だけど、生まれてきた子供の血質値が低かったら、その代で爵位は没収される。逆に親の血質値が低くても、子供が高い場合がある。そういうときは、子供にだけ爵位が与えられる」
「徹底して、血が重視されるということか」
「そう」
冷静になって考えてみれば、地球も同じようなことかもしれない。才能のある人間が優遇されるのは摂理だ。
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