《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士

執筆用bot E-021番 

第22話「マチス・ヒューリー侯爵Ⅱ」

 マチスの息子は、家を出ている。



 貴族のやり方が肌に合わないとか言って、今は貧民街のほうで暮らしていると聞いている。正確な場所はつかめていない。



 貴族の息子がそんなことでどうするのか。息子のことを考えると、腹が立ってくる。



 フィルリア姫が来たときには、息子にも挨拶をさせるつもりだ。自分の跡継ぎと王室をつないでおくのは、トウゼンの策だ。


 
「いかんいかん」
 呟く。



 フィルリア姫のことや、息子のことも大切だが、とりあえず、目下の問題に着手しなければならない。



 血質値200とかいうバケモノのことだ。



 いちおう失礼のないように応接間に通そうと思った。


 
「おい」
 メイドのひとりに声をかけた。



「なんでしょうか?」



「奴隷を1人用意しろ。応接間の明かりをつける必要がある」



「はい」



 メイドがすぐに、奴隷をひとり連れてきた。この領主館では、30人の奴隷を飼っている。全員が女性だ。



 鉱山奴隷なんかでは男のほうが便利だが、私用で使う分には女性のほうが良い。好みの問題だ。



 逆に女貴族であれば、顔立ちの整った男の奴隷をそろえている場合が多い。



「よし。応接間のチューブにつないでおけ」
「わかりました」



 飲み物と血質計の準備もさせた。そうこうしているうちに、シラカミリュウイチロウが領主館に到着した。




 見た感じ、ただの青年だった。



 王族や貴族の持つ輝きは感じられない。眠たげなまなこに、丸い鼻。顔全体のバランスは悪くないが、人を惹きつける顔立ちとは言えない。ただ、血質値が200を越えると聞いているから、無下むげにはできない。



 その隣にいる少女の奴隷も、いかにも粗悪品といった感じがする。



 もとの顔立ちは良かったのかもしれない。だが、酷いヤケドの痕があるし、歩き方もぎこちない。使い古しているのだろうと思った。



「ようこそ、おいでくださいました。シラカミリュウイチロウさま。とりあえず、応接間のほうへご案内しましょう」



「はぁ、どうも」
 応接間に通す。



 応接間は暖炉とソファの置かれただけの部屋だが、客を通す場所なので、けっこう工夫を凝らしてある。



 この暖炉もチューブをつなげば、火がつくようになっている。天井からつるされているシャンデリアにも、こまやかな装飾がほどこされている。



 奴隷はガラス張りのケースに入れてある。暴れないように手足の枷が壁に設置されており、カラダ全体にチューブが刺さっている。



 シラカミリュウイチロウはしばらくその、奴隷を見つめていた。



 マチスは少し得意気になる。



  だいたいの家は奴隷を、チューブでつなげるだけだ。こうしてガラス張りにしてあるのは、マチスの工夫の1つだった。奴隷と同じ空気を吸いたがらない人も多い。そのために、処置だ。




「どうかしましたか?」
「いえ。何でもないです」



 と、シラカミリュウイチロウは視線を落とした。



 その反応に、すこし不満を覚える。



 たいていの貴族ならここで、ガラス張りにしてある処置について、賞賛の言葉が出るものだ。



 それとも、これぐらいの処置はトウゼンの環境で育ったのだろうか。血質値200を越えるということは、王族である可能性も充分ありうる。王族なら、これぐらいでは驚かないのかもしれない。



「さっそくですが、なにやら血質値が200を越えるとか?」



「そうみたいです」



「しかし200というのは信じられませんな。試しにこの場で計測させていただいても、よろしいかな?」



「ええ。どうぞ」


 
 何でもないことのように、腕を差しだしてきた。戦士や庶民の腕ではない。チカラ仕事には慣れていない感じだ。



 だとすると、やはり貴族か王族の出だろう。その腕にチューブを刺しこんだ。



 マチスは、食い入るように血質計を覗きこんだ。



 0を指していた針が、じょじょに傾いていく。50を突破した。そのまま順調良く80も越える。



 舌打ちしたい気分だ。



 マチスが80だから、抜かされたことが悔しいのだ。



 もしも同じ貴族であった場合、自分の家系は後塵を拝することになる。血が物を言う世界だ。それは仕方がない。しかし、敵対心を抱いたことがバカらしくなる事態が起きた。



 針がいっきに200を振り切ったのだ。



「200……」



 信じられない。
 だが、証拠は目の前にある。



 レオーネに現存している血質計はすべて200までだ。200を越えるような血質計が必要なかったからだ。



「信じてもらえましたか?」



 シラカミリュウイチロウがそう尋ねてきたので、マチスは我に帰った。



「た、たしかに200ですな。あるいはそれ以上という可能性もあります。もしかしてどこかの王子さまでしたか」



「いえ。ただ、龍神族かもしれません」
「そう……でしたか」



 今のところレオーネという世界において、龍神族は12人いるとされている。



 マチスも数人は知っている。



 1人はフィルリア姫の130。もう1人はゼルン王国騎士長の125。しかし、200に差しかかるというのは聞いたことがない。



(これは、使える)

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