《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士

執筆用bot E-021番 

第19話「ベルとのお食事・後編」

2人分のフレンチトーストが来た。



 パンの耳はこんがり焼けていた。身の部分はミルクとバターをたっぷり吸っているせいか、なかばトロけていた。



 砂糖がまばらにかかっていて、陽光を受けて星屑のようにきらめいていた。



 ナイフとフォークがついてきたが、それを使うほど龍一郎は行儀が良くない。



 耳の部分をつまんで、かじった。ベルはどうやって食べれば良いのかわからないようで、オロオロと龍一郎の顔とフレンチトーストを見比べていた。



 ずっと無反応だったから、見ていて新鮮だった。ようやくベルの人間らしい一面を見れた気がする。



「こうやって、耳の部分をつまんでかじれば良いんだよ」



「こう……」
 パンの身の部分からミルクが垂れて、机上に水滴をつくった。



「ほわっ」
 と、ベルがあわてたような声を発した。



「大丈夫。そのままかじれば良い」



 ベルの桜色の唇が開かれる。白い真珠のような小粒の歯があらわになった。パクリ。フレンチトーストが口の中に消えた。


 
「!」
 雷に打たれたように、ベルのカラダが跳ねた。



「美味しいか?」
「美味しい」



 ベルの青い瞳が輝いていた。感情があるのか怪しかった少女が、ここまで喜んでくれる姿は、見る価値があったなと思った。



 食後に紅茶を頼んだ。



 特別なことをしたつもりはないが、紅茶を頼むとメイドから不審な目で見られた。



 ベルの分も持ってきてもらった。ベルの手は激しく震えていて、紅茶のカップを持つことが出来ないでいた。



「紅茶を頼んだだけなんだけど、高価なブランドだったのか?」



「こ、紅茶とか、コーヒーはこの近くで栽培することが出来ない。だから輸入に頼っていて、それで、税金が高くて――」



「あぁ、要するに高級品なわけか」



 地球でも、プロイセンでは、勝手にコーヒーを飲むことが禁止されるぐらいの高級品だった。



 コーヒーや紅茶が高級なのは、ゼルン王国でも同じなのだろう。龍一郎ぐらいの青年が、紅茶を注文するというのは、それだけ珍しい光景なのかもしれない。



 でも、注文した甲斐はある。



 ベルの顔にはあきらかに動揺の色があった。表情がうまく動かせないと言っていたが、精神的な理由なのかもしれない。心の傷を忘れているときは、表情を動かせることも出来るのだろう。



 紅茶に怯えるベルを見ながら、龍一郎は朝食を楽しんだ。

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