《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士

執筆用bot E-021番 

第16話「都市の入り口」

『暗黒病に感染してるぞ』
『殺せッ』
『やめてくれッ』



 というヤリトリが聞こえた。



 城門棟のほうで騒ぎになっているようだ。どうやら、暗黒病にかかっている人間が見つかったらしい。



『クロエイになる前に殺せ』
 という声も聞こえる。



 野次馬根性が働いて、その成り行きを見守っていた。感染したとされる男性は、城の兵士に剣で首をはねられていた。生首が転がっているのが、チラリと見えた。



「うっ……」
 見なければ良かった。



「もしも都市の中にクロエイが入ったら、大変なことになる。これは仕方のないこと」



 ベルはマッタク動じることなく、暗い目をしたままそう述べた。



「……かもしれないけど」



 並んでいる人にも、すこし動揺が伝わっていたけれど、すぐにおさまった。みんなトウゼンのように都市へと進んで行く。



 さいわいにも、暗黒病にかかっている人間は他には出なかったようだ。



 龍一郎たちの順番が回ってきた。



「グランドリオンに何用か?」



 そう問うてくる衛兵は、皮の鎧を身にまとっていた。その鎧にも、ちゃんとチューブを刺しこめるような穴が開いていた。



 腰には剣が携えられている。その凶刀がひらめくかもしれないと思うと、恐怖でしかない。



「別に、用事というほどでもないんですけど」



 都市があるからそこに行けば良い――とベルに言われたから、来ただけだ。深い事情があったわけではない。


「通行手形や紹介状は?」
「ありません」



 チッ――と衛兵は舌打ちした。



「通号手形や紹介状がない者を、入れることは出来ない。いちおう暗黒病にかかっていないかだけ調べさせてもらう」



「……はい」



 まずはベルから調べられた。調べるのに使っているのは、貸車屋で血質値を調べられた器具と同じものだった。チューブを刺しこまれて、血質値を調べられる。



「血質値3。暗黒病にはかかっていないが、奴隷レベルだな」



 衛兵は、ベルのことを蹴り飛ばした。



「うぐっ」
 と、ベルが突き飛ばされる。
 龍一郎はあわててベルのことを受け止めた。



「なにするんですか!」
 思わず龍一郎は、衛兵にたいして怒鳴った。



 衛兵はムッとした顔になり、刀剣の柄に手をかけていた。



「なんだ? 文句でもあるのか?」
「あ、いや……」



 剣をちらつかせられては、何も言えなくなる。



「大丈夫か?」
「……うん。これは普通のことだから」



 奴隷に暴力を振るうのは、貴族の特権ではないらしい。



「次はお前だ」



 と、なかば強引に衛兵にチューブを刺しこまれた。



 チクリとした痛みが走った。



 龍一郎はされるがままになっていた。おそらく暗黒病にはかかっていないはずだ。が、確信は持てない。



 一度クロエイには遭遇している。そのときに、影を食われているかもしれない。緊張を抱えて、結果が出るのを待った。



「んんっ?」
 と、衛兵が奇怪な声をあげた。



「どうした?」
 と、他の衛兵たちも集まってくる。



「血質計の故障かもしれん。他の血質計を持って来い」



 どうやら血質値をはかる器具を、血質計というらしい。また同じように、血質値を調べられた。



「血質値……200越えだと……。まさか、フィルリア姫と同じ、いや、それ以上の……」



 衛兵はブツブツと呟いていた。



「結果はどうなんでしょうか?」
 と、龍一郎が問いかけた。



 斬り殺される心配のため、こっちはビクビクだ。



「あ、こ、これは失礼いたしました。王族のかたとは知らずに、非常に失礼な行動を働いてしまって」



 どうぞ、お通りくださいッ――と道を開けてくれた。



 衛兵たちの顔は青ざめていて、汗をたらたらと流している。カワイソウになるぐらいの慌てっぷりだ。あまりの対応の変化には、唖然あぜんとさせられた。



「通っても良いんですね?」
「どうぞ、どうぞ」



 龍一郎はベルを連れて城門棟をくぐった。龍一郎が振り返っても衛兵たちはまだ、腰を90度に曲げていた。

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