不良の俺、異世界で召喚獣になる
3章4話
「状況を整理しましょう」
ボロボロとなった家の中、リビングに集まったキョーガたちは、先ほど起きた出来事について、話し合っていた。
「先ほどの『吸血鬼』はアルマさんのお父様で、アルマさんを取り返すためにここに来た……間違いないですね?」
「【肯定】 あの男から感じる気配と、アルマの気配は完全に一致。血縁関係にあるのは明らか。さらに、アルマがあの男を『お父さん』と呼んでいるのを聞いた……よって、親子だと判断」
―――俺は……俺は、何をやっている?
「……アルマさんたちは、『サモンワールド』に帰ったんですよね?」
「家に帰るって言ってたから、多分『サモンワールド』だと思うよっ♪」
―――あのクソ野郎に一撃も与えられず、無駄に家をぶっ壊して……何がしたかった?
「……【提案】 リリアナ、アルマを呼べないのか?召喚士ならば、使役している召喚獣を呼べるはずだが?」
「先ほどから呼び掛けてはいるんですけど……ダメです」
「【理解不能】 召喚獣ならば、契約している召喚士の呼び出しには応じなければならないのでは?」
「そういう契約条件を結んでいるのでしたら……例えば、『召喚士の呼び出しには必ず応じる事』とか結んでいれば、必ず応じなければならないですけど……私とアルマさんが結んでいる契約条件は、『毎日血液を供給する事』だけなんですよ」
―――数時間前だぞ?ついさっきだぞ?
アルマと約束したのは……何かあっても、俺が守ってやると約束したのは……たった数時間前なんだぞッ?!もう約束を破るのかッ?!心底クソ野郎だな俺はッ!
「……【理解】 つまり、アルマがリリアナの呼び出しを拒否している、と?」
「はい……多分、そういう事かと」
「あは~♪……詰めが甘いね、リリちゃん♪」
―――どうやって償うッ?!どうやって言い訳するつもりだよッ?!なあ!何とか言えよクソ野郎ッ!
「……キョーガさん?大丈夫です―――」
「ああァあああああああああああァあああああああァああウッゼェなァああああァあああああああああァああああああッッ!!」
拳を振りかぶり、机を殴り付ける。
突然の出来事に、リリアナがビクッと肩を跳ね上げ、マリーが心配そうにキョーガを見つめる。
「ごちゃごちゃ考えんのは後だァ!というかァ、話してる時間が勿体ねェ!サリスゥ、『サモンワールド』に行くぞォ!」
「あは~♪あたしは元からそのつもりだけど……相手はアルちゃんの父親だよ?出会った後の事は考えてるの?」
「知るかアルマに会ってから考えるッ!というかァ、アルマは親父の事が嫌いっつってたんだよォ!アルマの顔見たかァ?!俺ァあんな顔のアルマなんざ見たくねェ!あいつにゃ笑顔が似合うんだァ、悲しそうな顔なんか認めねェぞォッ!」
よくわからない事を言いながら、キョーガが怒りを叫ぶ。
「あ、アルマさんは、お父様の事が嫌いなんですか?」
「俺がこん前聞いた時ァなァ!なんなら暴力を振るわれたりィ、暗い牢獄に閉じ込められたりされてたらしいんだよォ!んな所にアルマを置いとけるかァ?!」
「……親子関係に口出しするのは、本来ダメでしょうけど……」
困ったように頬を掻き……リリアナが、キョーガをまっすぐに見つめ直した。
「アルマさんがどうしたいかを聞いてきてください。そして……できるならば、連れて帰ってきてください」
「当ったり前だァ!なんなら嫌がってても引きずって連れ帰ってやらァッ!」
「そ、それはどうかと……」
いつにも増して気合いの入った様子のキョーガに、リリアナが困った表情を見せる。
―――何故、リリアナが中途半端な意見を言うのか。
そもそも、リリアナはかなりの常識人だ。
だから、よその家庭の事情に口出しなんて、あり得ないと思っているのだ。
もちろん、リリアナは間違ってはいない。
間違ってはいない……のだが―――
「……あのさ、リリちゃん♪」
どこか不機嫌そうに見えるサリスが、リリアナの肩に手を置いた。
「そのどっち付かずの意見、やめなよ♪あたし、ハッキリしない人って大嫌いなんだよ♪」
「そ、そうは言っても……人様の家庭に、口出しするなんて……」
「だからいつまで経っても甘ちゃんだって言われるんだよこのバカ♪……あのさ、アルちゃんは友達なの♪アルちゃんの顔を見なかったの?あんな顔のアルちゃん、今まで見た事なかったでしょ♪……それでも、アルちゃんが不幸に見えないって言うなら―――」
雰囲気が一変。地獄の底から響くような声に、キョーガさえも身震いしてしまった。
「―――舐めないでね『人類族』。自身が契約を交わした召喚獣を助けようとしない召喚士に、あたしは付いていくつもりはないから」
「………………あ、ぅ……」
殺意をたぎらせるサリスが、噛み付く勢いでリリアナを睨み付ける。
「……そこまでにしとけよォサリスゥ。それ以上はァ許さねェぞォ」
「……あ、は♪………………ごめんねリリちゃん。ちょっとイライラしてて、八つ当たりしちゃった」
「あ、い、いえ……ハッキリしない私が悪いんですから……」
「あはは♪……ね、キョーちゃん」
グルリと振り返り、まだ不機嫌さが残る顔でキョーガを見据える。
「怒りで頭がおかしくなりそ~なのは、あたしも同じ♪……ね?だから……行こ、キョーちゃん。あの子を……アルちゃんを助けに」
「……当たり前だァ……俺も怒りで頭が燃えそォなんだァ……」
立ち上がり、拳の骨を鳴らす。
そして―――何かに気づいた。
「……ァ……そォいやァサリス」
「な~にキョーちゃん♪早く行くよ♪」
「いやァ……んの『サモンワールド』ってどォやって行くんだァ?」
「…………………………はっ……はあ?」
―――――――――――――――――――――――――
「……よしィ、いつでも行けるぜェ」
制服姿に着替えたキョーガが、気合い充分に凶悪な笑みを浮かべる。
その隣で、いつも通り下着同然の格好のサリスが、ニコニコ笑いながら手を掲げた。
「【懇願】 マスター。当機も連れて行ってくれ」
「ダメだここにいろォ……おめェまで付いてきたらァ、リリアナが1人になるだろっがァ」
「【反論】 しかし、当機はマスターのために生き、マスターのために―――」
「やかましい大人しく言う事聞いてろォ……おめェにしか頼めねェんだァ」
乱暴に頭を撫で……不満そうにキョーガを見上げる。
「……【了解】 マスターの口車に乗ってやる……ただし、約束してくれ」
「アルマとの約束も守れなかった俺に約束ねェ……なんだァ、言ってみろォ」
「【約束】 必ず、無事で帰ってくる事。必ず、アルマを連れて帰ってくる事。必ず、勝つ事。必ず―――」
「あーあー長ェ長ェ!俺ァ負けねェから安心しろォ!」
サリスの手に光が集まり始め、その肩に手を乗せる。
「よ~し……行くよ、キョーちゃん♪ちゃ~んとあたしに触れててね♪」
「あァ……いつでも行けるゥ」
キョーガが返事すると同時、光が輝きを増していき―――
ボロボロとなった家の中、リビングに集まったキョーガたちは、先ほど起きた出来事について、話し合っていた。
「先ほどの『吸血鬼』はアルマさんのお父様で、アルマさんを取り返すためにここに来た……間違いないですね?」
「【肯定】 あの男から感じる気配と、アルマの気配は完全に一致。血縁関係にあるのは明らか。さらに、アルマがあの男を『お父さん』と呼んでいるのを聞いた……よって、親子だと判断」
―――俺は……俺は、何をやっている?
「……アルマさんたちは、『サモンワールド』に帰ったんですよね?」
「家に帰るって言ってたから、多分『サモンワールド』だと思うよっ♪」
―――あのクソ野郎に一撃も与えられず、無駄に家をぶっ壊して……何がしたかった?
「……【提案】 リリアナ、アルマを呼べないのか?召喚士ならば、使役している召喚獣を呼べるはずだが?」
「先ほどから呼び掛けてはいるんですけど……ダメです」
「【理解不能】 召喚獣ならば、契約している召喚士の呼び出しには応じなければならないのでは?」
「そういう契約条件を結んでいるのでしたら……例えば、『召喚士の呼び出しには必ず応じる事』とか結んでいれば、必ず応じなければならないですけど……私とアルマさんが結んでいる契約条件は、『毎日血液を供給する事』だけなんですよ」
―――数時間前だぞ?ついさっきだぞ?
アルマと約束したのは……何かあっても、俺が守ってやると約束したのは……たった数時間前なんだぞッ?!もう約束を破るのかッ?!心底クソ野郎だな俺はッ!
「……【理解】 つまり、アルマがリリアナの呼び出しを拒否している、と?」
「はい……多分、そういう事かと」
「あは~♪……詰めが甘いね、リリちゃん♪」
―――どうやって償うッ?!どうやって言い訳するつもりだよッ?!なあ!何とか言えよクソ野郎ッ!
「……キョーガさん?大丈夫です―――」
「ああァあああああああああああァあああああああァああウッゼェなァああああァあああああああああァああああああッッ!!」
拳を振りかぶり、机を殴り付ける。
突然の出来事に、リリアナがビクッと肩を跳ね上げ、マリーが心配そうにキョーガを見つめる。
「ごちゃごちゃ考えんのは後だァ!というかァ、話してる時間が勿体ねェ!サリスゥ、『サモンワールド』に行くぞォ!」
「あは~♪あたしは元からそのつもりだけど……相手はアルちゃんの父親だよ?出会った後の事は考えてるの?」
「知るかアルマに会ってから考えるッ!というかァ、アルマは親父の事が嫌いっつってたんだよォ!アルマの顔見たかァ?!俺ァあんな顔のアルマなんざ見たくねェ!あいつにゃ笑顔が似合うんだァ、悲しそうな顔なんか認めねェぞォッ!」
よくわからない事を言いながら、キョーガが怒りを叫ぶ。
「あ、アルマさんは、お父様の事が嫌いなんですか?」
「俺がこん前聞いた時ァなァ!なんなら暴力を振るわれたりィ、暗い牢獄に閉じ込められたりされてたらしいんだよォ!んな所にアルマを置いとけるかァ?!」
「……親子関係に口出しするのは、本来ダメでしょうけど……」
困ったように頬を掻き……リリアナが、キョーガをまっすぐに見つめ直した。
「アルマさんがどうしたいかを聞いてきてください。そして……できるならば、連れて帰ってきてください」
「当ったり前だァ!なんなら嫌がってても引きずって連れ帰ってやらァッ!」
「そ、それはどうかと……」
いつにも増して気合いの入った様子のキョーガに、リリアナが困った表情を見せる。
―――何故、リリアナが中途半端な意見を言うのか。
そもそも、リリアナはかなりの常識人だ。
だから、よその家庭の事情に口出しなんて、あり得ないと思っているのだ。
もちろん、リリアナは間違ってはいない。
間違ってはいない……のだが―――
「……あのさ、リリちゃん♪」
どこか不機嫌そうに見えるサリスが、リリアナの肩に手を置いた。
「そのどっち付かずの意見、やめなよ♪あたし、ハッキリしない人って大嫌いなんだよ♪」
「そ、そうは言っても……人様の家庭に、口出しするなんて……」
「だからいつまで経っても甘ちゃんだって言われるんだよこのバカ♪……あのさ、アルちゃんは友達なの♪アルちゃんの顔を見なかったの?あんな顔のアルちゃん、今まで見た事なかったでしょ♪……それでも、アルちゃんが不幸に見えないって言うなら―――」
雰囲気が一変。地獄の底から響くような声に、キョーガさえも身震いしてしまった。
「―――舐めないでね『人類族』。自身が契約を交わした召喚獣を助けようとしない召喚士に、あたしは付いていくつもりはないから」
「………………あ、ぅ……」
殺意をたぎらせるサリスが、噛み付く勢いでリリアナを睨み付ける。
「……そこまでにしとけよォサリスゥ。それ以上はァ許さねェぞォ」
「……あ、は♪………………ごめんねリリちゃん。ちょっとイライラしてて、八つ当たりしちゃった」
「あ、い、いえ……ハッキリしない私が悪いんですから……」
「あはは♪……ね、キョーちゃん」
グルリと振り返り、まだ不機嫌さが残る顔でキョーガを見据える。
「怒りで頭がおかしくなりそ~なのは、あたしも同じ♪……ね?だから……行こ、キョーちゃん。あの子を……アルちゃんを助けに」
「……当たり前だァ……俺も怒りで頭が燃えそォなんだァ……」
立ち上がり、拳の骨を鳴らす。
そして―――何かに気づいた。
「……ァ……そォいやァサリス」
「な~にキョーちゃん♪早く行くよ♪」
「いやァ……んの『サモンワールド』ってどォやって行くんだァ?」
「…………………………はっ……はあ?」
―――――――――――――――――――――――――
「……よしィ、いつでも行けるぜェ」
制服姿に着替えたキョーガが、気合い充分に凶悪な笑みを浮かべる。
その隣で、いつも通り下着同然の格好のサリスが、ニコニコ笑いながら手を掲げた。
「【懇願】 マスター。当機も連れて行ってくれ」
「ダメだここにいろォ……おめェまで付いてきたらァ、リリアナが1人になるだろっがァ」
「【反論】 しかし、当機はマスターのために生き、マスターのために―――」
「やかましい大人しく言う事聞いてろォ……おめェにしか頼めねェんだァ」
乱暴に頭を撫で……不満そうにキョーガを見上げる。
「……【了解】 マスターの口車に乗ってやる……ただし、約束してくれ」
「アルマとの約束も守れなかった俺に約束ねェ……なんだァ、言ってみろォ」
「【約束】 必ず、無事で帰ってくる事。必ず、アルマを連れて帰ってくる事。必ず、勝つ事。必ず―――」
「あーあー長ェ長ェ!俺ァ負けねェから安心しろォ!」
サリスの手に光が集まり始め、その肩に手を乗せる。
「よ~し……行くよ、キョーちゃん♪ちゃ~んとあたしに触れててね♪」
「あァ……いつでも行けるゥ」
キョーガが返事すると同時、光が輝きを増していき―――
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