大人より、子供。

黒川 魁

第1話 プロローグ

日本では古来から月をその時の形によって様々な名で呼んできた。さりげなく夜を照らす静かな守護者。そんな月に人々は沢山の夢を抱いてきた。

ある子供は言った。

「きっとウサギが餅をついているんだ。」

それを聞いた大人が言う。

「あれは背中の曲がったお婆さんだよ。」

夢を追う若者が訊ねる。

「あれは宇宙人の落書きでしょう?」

知らない事が知りたくなる。それは人間の性さがである。

現代では人類の科学の発展によって、その月に行くことも可能になった。

しかしいつからかその技術を戦争に用い、夢を追う若者は戦場で敵兵を追うようになり、月の真実を知ったあの人は月より遠くへ旅立った。

ある人は言う。

「人類は月になんてまだ行っていない。」

その言葉から、再び夢が始まる。本当のことは分からない。しかし、その事実に胸をときめかせる人々がいる。

夢を追う事に終わりはない。始まりも人それぞれだ。

ならば、我々も永遠に続く夢を追いかけよう。

夢から醒めてしまわないように。ずっと、ずっと。



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