妖狐少年の人間観察譚
第1話 プロローグ
熱風が吹き荒ぶ。
何処からともなく断末魔の叫びが聞こえてくる。そう、ここは地獄の最下層。生前、最も悪行を重ねた者達が必死にもがき続けている。
そんな中をある親子が談笑と共に闊歩する。
「お前、またアイツらに喧嘩を売ったのかぁ?」
ははははっ、と愉快そうに笑う大柄な男性。
「喧嘩を売ったんじゃなく、気になったことを聞いただけだよ。そしたら、いきなり殴りかかってきたんだ。」
困ったように頬の引きつった笑みを浮かべる青々しい青年。この2人の親子は、周りの人々から訝しむような目で見られることが多い。
なぜなら、鬼と妖狐の親子だからだ。鬼が捨て子だった妖狐の赤ん坊を拾って育てたので血も繋がっていない擬似親子である。
「それで?またやり返して相手をボコボコにしたのか?」
この大柄な鬼は血気盛んで何でも暴力で解決しようとする所がある。ただ、その力も伊達ではないので警察組織に務め、脱走者の捕獲や反逆を目論む者達を(物理的に)成敗し、一役買っている。
「ボコボコにって…、前も暴れてご近所さんに白い目で見られ続けて結局引っ越しまでしたんだから流石にやるわけないでしょ…。」
この気弱そうな妖狐の青年も父親のせいなのか喧嘩が強く、未だに負けたことがない。ただ、あまり喧嘩は好まない性分のためやられっぱなしの事が多く、周りや父親に馬鹿にされやすい。そして自由な父親のせいで中々苦労が絶えない。
「別にそんなこと気にしないからドーンっとやってこればいいのに。」
「気にしないのは父さんだけだからっ!!」
この前も減給されてたでしょっ!と説教が始まったところで鐘の音が周囲に響き渡る。
「もう、行くのか…?」
そう、青年は今日、大きな旅に出る。この地獄を出て人間界へ行き、本当の苦しみとはなにかを調べて来るのだ。ただ、1度人間に転生する必要があるため輪廻の輪を通り、帰ってくることは難しいとされている。
寂しげな父の声に青年の心が揺らぎそうになるが、
「うん!父さんが1人でも大丈夫かすごく心配だけど、2人で決めたことでしょう?」
「そう、だな…。」
ここまで落ち込んだ父を見て青年も本当に行っても良いのか不安になってきた。これからは、帰ってくることも難しい。もし父に何かあっても駆けつけることはできない。術を使えば交信する事も可能だがそれでも寂しいのだろうか。
まだ子供の青年には他人の感情を理解することは難しく、本人の感情ですら理解しているのか危うい。今回の事は、そんな息子が自分から興味を持って行動に移した事だ。背中を押さねばならないのは分かっているが、自分の育てた息子が手の届かない所へ行ってしまうのは少し心配でもある。つくづく息子が女でなくて良かったと思う。もし娘ならば、この調子だと家からも出せなくなるだろう。
「父さん、もう行くね?早く行かないと頭領に送ってもらえなくなっちゃう。」
「ああ、行ってこい。ビビって帰ってくるなよ?」
最後にニヤリと笑った父を見て青年は安心して頭領の所へ向かう。
何処からともなく断末魔の叫びが聞こえてくる。そう、ここは地獄の最下層。生前、最も悪行を重ねた者達が必死にもがき続けている。
そんな中をある親子が談笑と共に闊歩する。
「お前、またアイツらに喧嘩を売ったのかぁ?」
ははははっ、と愉快そうに笑う大柄な男性。
「喧嘩を売ったんじゃなく、気になったことを聞いただけだよ。そしたら、いきなり殴りかかってきたんだ。」
困ったように頬の引きつった笑みを浮かべる青々しい青年。この2人の親子は、周りの人々から訝しむような目で見られることが多い。
なぜなら、鬼と妖狐の親子だからだ。鬼が捨て子だった妖狐の赤ん坊を拾って育てたので血も繋がっていない擬似親子である。
「それで?またやり返して相手をボコボコにしたのか?」
この大柄な鬼は血気盛んで何でも暴力で解決しようとする所がある。ただ、その力も伊達ではないので警察組織に務め、脱走者の捕獲や反逆を目論む者達を(物理的に)成敗し、一役買っている。
「ボコボコにって…、前も暴れてご近所さんに白い目で見られ続けて結局引っ越しまでしたんだから流石にやるわけないでしょ…。」
この気弱そうな妖狐の青年も父親のせいなのか喧嘩が強く、未だに負けたことがない。ただ、あまり喧嘩は好まない性分のためやられっぱなしの事が多く、周りや父親に馬鹿にされやすい。そして自由な父親のせいで中々苦労が絶えない。
「別にそんなこと気にしないからドーンっとやってこればいいのに。」
「気にしないのは父さんだけだからっ!!」
この前も減給されてたでしょっ!と説教が始まったところで鐘の音が周囲に響き渡る。
「もう、行くのか…?」
そう、青年は今日、大きな旅に出る。この地獄を出て人間界へ行き、本当の苦しみとはなにかを調べて来るのだ。ただ、1度人間に転生する必要があるため輪廻の輪を通り、帰ってくることは難しいとされている。
寂しげな父の声に青年の心が揺らぎそうになるが、
「うん!父さんが1人でも大丈夫かすごく心配だけど、2人で決めたことでしょう?」
「そう、だな…。」
ここまで落ち込んだ父を見て青年も本当に行っても良いのか不安になってきた。これからは、帰ってくることも難しい。もし父に何かあっても駆けつけることはできない。術を使えば交信する事も可能だがそれでも寂しいのだろうか。
まだ子供の青年には他人の感情を理解することは難しく、本人の感情ですら理解しているのか危うい。今回の事は、そんな息子が自分から興味を持って行動に移した事だ。背中を押さねばならないのは分かっているが、自分の育てた息子が手の届かない所へ行ってしまうのは少し心配でもある。つくづく息子が女でなくて良かったと思う。もし娘ならば、この調子だと家からも出せなくなるだろう。
「父さん、もう行くね?早く行かないと頭領に送ってもらえなくなっちゃう。」
「ああ、行ってこい。ビビって帰ってくるなよ?」
最後にニヤリと笑った父を見て青年は安心して頭領の所へ向かう。
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