100回目の勇者人生〜俺の頭の中ではこんなにも《ゆるい転生物語》が繰り広げられている。

しみずん

47話 村長のいない世界

《戦闘に勝利した!》

 光の柱が開けた城の天井の大穴を見つめ、今思うのは、自分の未熟さ、甘さ、不甲斐なさ、弱さ、至らなさ、罪深さ、犯した罪の重さだった。

「村長様は私達を守る為に、自らを犠牲にしたんです。ご自身の魔力の全てを解き放ち大魔王諸共……」

「そんなっ! じゃあ、じゃあ、おじいちゃんは!? そっ……そうだ! 教会行こうよ! 教会で生き返らせて貰えば……あれ? おじいちゃんの棺桶は? 兄貴! おじいちゃんの棺桶が!」

「…………」

「あれだけの魔力の暴走だったんです……肉体が残っているとは……とても考えられません」

「…………」

「落ち込まないで下さい、勇者様。これは……村長様が望んでやった事なんですから……あの時、動揺する勇者様の姿を見た村長様は助かる方法はこれしかないとすぐに決意なされ、私に大魔王の所まで運ぶよう指示されました。そして……」

「でもっ! 僕等が助かったって! おじいちゃんが死んじゃったら……」

「全滅よりはいい……そうお考えになったのでしょう……」

「そんな……おじいちゃんを犠牲にして大魔王に勝ったって、なんにも……ねえ兄貴! なんとか言ってよ、兄貴!」

「…………」

 あの日村長と交わした約束を思い出していた。スライムにやられた村長を生き返らせた直後の約束。

――――同じ徹は二度と踏まない、次こそは我が命に代えても御守りします。

 そう、心に堅く誓った筈なのに。

 何が勇者だ、何が守ってやるだ、自分の非力さも知らない能なし勇者が、バカで、アホで、カスで、役立たずで、エロガッパで、最低のクズ野郎だ、俺は……俺は……。



「俺は……」

 

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