100回目の勇者人生〜俺の頭の中ではこんなにも《ゆるい転生物語》が繰り広げられている。
9話 村長(完結編)
村長が仲間に加わり約二時間が経とうとしていた。
「そりゃ! どうじゃ! 見たか!」
村長はひたすらスライムを倒しレベル上げを行っている。かなりコツを掴んだみたいで俺のサポート無しで楽々とスライムを倒していた。
「うん。レベルもそこそこ上がったみたいだし、もう一人でも大丈夫かな?」
「ホッホッホッ! 力がみなぎってくるのぅ。スライム相手ならもう、1人でも大丈夫そうじゃの」
本当に逞しくなった、そしてなにより表情が明るくなった。村長はもう大丈夫だ。
「じゃあ、俺はタイージュの村で装備を整えてくるよ。村長はそのまま修行を続けてくれ」
「ホッホッホッ! 気をつけて行きなされ」
「じゃあ行ってくるよ、村長も気を付けて!」
俺はタイージュの村で自分の為に、ナイフとひのきの棒を購入した。あと、村長用に身避けの服と身避けの靴と身避けのバンダナを購入した。
村長の話しを聞いた大樹の木陰に腰を下ろし、ナイフでひのきの棒を削っていく。
一心不乱に削り一振りの木刀を手にする。
「……出来た」
出来上がった木刀を眺めながら試しに何度か振ってみる、刀身が大気を滑らかに切り裂く。
木刀はとても軽く扱いやすい。それでいて、まずまずの攻撃力がある。冒険の中盤まで通用する隠れた名刀だ。
とにかく今回の木刀造りも、大満足の仕上がりとなった。
「スッテータスッ!」
少しはしゃいでみた、意味は無い。
――――――――――
勇猛
Lv   7
HP   56/56
MP   19/19
職業 100回目の勇者
装備 ひのきの木刀
旅人の服
旅人の靴
お金 26G
状態 普通
――――――――――
「お金使っちゃったから、少し貯めておこう」
村長の所に戻る為にタイージュの村の外に出る。
《モンスターが現れた》
相手はスライムだったが木刀の出来を確認したかったので、全力で目にもとまらぬ速度で縦一線に切った。
何が起きたのか理解していないスライムは硬直したまま、その後ゆっくりと身体は左右に分かれ地面に転がった。その際にいつもの断末魔の叫びは無かった。
《戦闘に勝利した!》
「うん。すごくいい」
自分で作ったひのきの木刀に心底惚れ惚れした、さすがプロの勇者。
「さて……」
木刀の出来を確認した俺は、村長の為に買った装備品を持って村長の元に戻った。
が、そこには村長の姿は無く代わりに、
――そこには棺桶が置かれていた。
一瞬で状況を理解し慌てて駆け寄る。
「そ……村長ぉぉぉ!」
棺桶を開けてみると両手を組み仰向けに眠る村長がそこにいた。
「村長ぉぉぉ! 《村長(完結編)》って、そういう意味じゃねえよ!? なに勝手に完結しちゃってんの!?」
俺はすぐさま村長の眠る棺桶を引きずって、タイージュの村の教会へと向かう。
重い木製のドアを開けて教会内に入った俺の視界に飛び込んできたのは、正面の壁に設置された色鮮やかな大きなステンドグラスだった。そこへ陽の光がグラス越しに入ってきて薄暗い教会内の祭壇部分をスポットライトのように照らす。薄闇を飲み込む陽の光は舞い上がった小さな埃を、まるでダイヤモンドダストのように煌めかせ俺の心を捕らえて離さない。
「おお! 迷える仔羊よ! 神の前に――」
決まり文句を語り出す神父の声に、はっと我に返り教会に来た目的を思い出し大声で神父に訴える。
「蘇生だ! 村長を蘇生させてくれ!」
「では1ゴールド寄付してください」
「安っ!」
予想だにしない破格の寄付金を教会へ寄付し村長は無事に蘇生した。
「村長! 何があったんだ村長!?」
村長はゆっくりと目蓋を開いて陽の光に顔をしかめる。
「おお……勇者殿……ワシは……ここは?」
「モンスターにやられてたから教会で蘇生させたんだ」
「ああ……そうじゃ……スライム退治は順調だったんじゃが、二匹同時に現れてのう……あの戦法が通用せんかった」
そうだ。モンスターは複数で襲ってくる事もあるんだ……忘れてた、スライムだからって甘く見てた。
「あの……ごめん……村長。完全に俺が悪かった」
謝る俺を横目で見ながら上体を慎重に起こして棺桶から出てくる村長。
「よっこらしょ。ホッホッホッ! ちょっとビックリしたが、まあええわい」
そう言った村長は杖先で床をリズムよく何度か叩く、渇いた音が教会内で反響する。
村長の器の大きさに救われた俺は村長の為に買って来た装備品を渡し身に付けさせる。
「これを装備したら素早さも防御力も上がってモンスターの攻撃を避けやすくなるよ。だからもう、死ぬ事も……ないはずだ。……たぶん」
「ホッホッホッ! 軽い! まるで身体が羽根のようじゃ。これなら、先程よりも上手く戦えそうじゃ」
「じゃ……じゃあ、もう一度行きます? スライム退治。いけそうですか? 村長様?」
「複数相手の時はきちんとサポートしてくれよ? 勇者殿?」
「はい……我が命に代えても。本当ごめんなさい……」
二度と同じ轍は踏まぬと、俺は固く心に誓った。そして俺と村長は更なる高みを目指して新たな冒険に出た。
「そりゃ! どうじゃ! 見たか!」
村長はひたすらスライムを倒しレベル上げを行っている。かなりコツを掴んだみたいで俺のサポート無しで楽々とスライムを倒していた。
「うん。レベルもそこそこ上がったみたいだし、もう一人でも大丈夫かな?」
「ホッホッホッ! 力がみなぎってくるのぅ。スライム相手ならもう、1人でも大丈夫そうじゃの」
本当に逞しくなった、そしてなにより表情が明るくなった。村長はもう大丈夫だ。
「じゃあ、俺はタイージュの村で装備を整えてくるよ。村長はそのまま修行を続けてくれ」
「ホッホッホッ! 気をつけて行きなされ」
「じゃあ行ってくるよ、村長も気を付けて!」
俺はタイージュの村で自分の為に、ナイフとひのきの棒を購入した。あと、村長用に身避けの服と身避けの靴と身避けのバンダナを購入した。
村長の話しを聞いた大樹の木陰に腰を下ろし、ナイフでひのきの棒を削っていく。
一心不乱に削り一振りの木刀を手にする。
「……出来た」
出来上がった木刀を眺めながら試しに何度か振ってみる、刀身が大気を滑らかに切り裂く。
木刀はとても軽く扱いやすい。それでいて、まずまずの攻撃力がある。冒険の中盤まで通用する隠れた名刀だ。
とにかく今回の木刀造りも、大満足の仕上がりとなった。
「スッテータスッ!」
少しはしゃいでみた、意味は無い。
――――――――――
勇猛
Lv   7
HP   56/56
MP   19/19
職業 100回目の勇者
装備 ひのきの木刀
旅人の服
旅人の靴
お金 26G
状態 普通
――――――――――
「お金使っちゃったから、少し貯めておこう」
村長の所に戻る為にタイージュの村の外に出る。
《モンスターが現れた》
相手はスライムだったが木刀の出来を確認したかったので、全力で目にもとまらぬ速度で縦一線に切った。
何が起きたのか理解していないスライムは硬直したまま、その後ゆっくりと身体は左右に分かれ地面に転がった。その際にいつもの断末魔の叫びは無かった。
《戦闘に勝利した!》
「うん。すごくいい」
自分で作ったひのきの木刀に心底惚れ惚れした、さすがプロの勇者。
「さて……」
木刀の出来を確認した俺は、村長の為に買った装備品を持って村長の元に戻った。
が、そこには村長の姿は無く代わりに、
――そこには棺桶が置かれていた。
一瞬で状況を理解し慌てて駆け寄る。
「そ……村長ぉぉぉ!」
棺桶を開けてみると両手を組み仰向けに眠る村長がそこにいた。
「村長ぉぉぉ! 《村長(完結編)》って、そういう意味じゃねえよ!? なに勝手に完結しちゃってんの!?」
俺はすぐさま村長の眠る棺桶を引きずって、タイージュの村の教会へと向かう。
重い木製のドアを開けて教会内に入った俺の視界に飛び込んできたのは、正面の壁に設置された色鮮やかな大きなステンドグラスだった。そこへ陽の光がグラス越しに入ってきて薄暗い教会内の祭壇部分をスポットライトのように照らす。薄闇を飲み込む陽の光は舞い上がった小さな埃を、まるでダイヤモンドダストのように煌めかせ俺の心を捕らえて離さない。
「おお! 迷える仔羊よ! 神の前に――」
決まり文句を語り出す神父の声に、はっと我に返り教会に来た目的を思い出し大声で神父に訴える。
「蘇生だ! 村長を蘇生させてくれ!」
「では1ゴールド寄付してください」
「安っ!」
予想だにしない破格の寄付金を教会へ寄付し村長は無事に蘇生した。
「村長! 何があったんだ村長!?」
村長はゆっくりと目蓋を開いて陽の光に顔をしかめる。
「おお……勇者殿……ワシは……ここは?」
「モンスターにやられてたから教会で蘇生させたんだ」
「ああ……そうじゃ……スライム退治は順調だったんじゃが、二匹同時に現れてのう……あの戦法が通用せんかった」
そうだ。モンスターは複数で襲ってくる事もあるんだ……忘れてた、スライムだからって甘く見てた。
「あの……ごめん……村長。完全に俺が悪かった」
謝る俺を横目で見ながら上体を慎重に起こして棺桶から出てくる村長。
「よっこらしょ。ホッホッホッ! ちょっとビックリしたが、まあええわい」
そう言った村長は杖先で床をリズムよく何度か叩く、渇いた音が教会内で反響する。
村長の器の大きさに救われた俺は村長の為に買って来た装備品を渡し身に付けさせる。
「これを装備したら素早さも防御力も上がってモンスターの攻撃を避けやすくなるよ。だからもう、死ぬ事も……ないはずだ。……たぶん」
「ホッホッホッ! 軽い! まるで身体が羽根のようじゃ。これなら、先程よりも上手く戦えそうじゃ」
「じゃ……じゃあ、もう一度行きます? スライム退治。いけそうですか? 村長様?」
「複数相手の時はきちんとサポートしてくれよ? 勇者殿?」
「はい……我が命に代えても。本当ごめんなさい……」
二度と同じ轍は踏まぬと、俺は固く心に誓った。そして俺と村長は更なる高みを目指して新たな冒険に出た。
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