100回目の勇者人生〜俺の頭の中ではこんなにも《ゆるい転生物語》が繰り広げられている。
7話 村長(前編)
スライムサッカーをあくまで紳士的に楽しんだ俺は、とある村の入口付近で軽い準備運動をしていた。
大樹に寄り添う村《タイージュ》
この村での目標は守備力を強化してくれる《守りのクリスタル》を手に入れる事、それだけだ。
守りのクリスタルは、村の一番奥の左側にある青い屋根の小さな民家のタンスの中にある。
知っている。
100回目だから。
イメージトレーニングをしながら入念に準備運動をして、スタートダッシュの姿勢をとる。
3・2・1……。
俺は守りのクリスタルに向かって走り出した。
のどかな村の空気を一変させる猛ダッシュ、異変に気付いた村人達は一斉に振り返り、俺が巻き上げた砂埃をただ見つめる。
風にすっかり洗われた砂埃の中に俺はもういない。
青い屋根の小さな民家が見えて来た。
と。全力疾走中の俺の右サイドから何者かが現れた。
「おぉぉぉ待ち下さぁぁぁい勇者どのぉぉぉ!」
――村長だった。
村長は俺を楽々と抜き去り俺の行く手を阻んだ。
『ワシの話を聞かずに村を出ようなど何を考えておるのじゃ、このたわけ者!』と言いたげに俺を強い眼差しで睨みつけてくる。
「はあ……はあ……」
互いに肩を大きく揺らし何も喋れないでいたが、やがて。
「お……お主みたいな……勇者は、はあ、はあ……初めてじゃ」
「俺だって……はあ、全力疾走で村に入るなんて……はあ、はじ……初めてだぜ」
「全……全力疾走の勇者なんて、はあ……。聞いた事……ないわい……よし、そんな……全力勇者に……はあ、ワシの話を聞かせよう」
結局、村が出来た経緯とか村自慢の特産物とか、本当にどうでもいい極めてくだらない話(100回目)を延々と一時間近く聞かされる羽目になった。
この話しが嫌だから走り抜けようと思ったんだが、まさか追い抜いて来るとは……なんという強靭な足腰の村長だ。
一通り話し終えた村長は満足げな表情を浮かべ『では気をつけて行きなされ勇者殿』と、いつものセリフを吐いて解放してくれる。
いつもならブツブツ文句言いながらクリスタルを取りに行くんだが、今回は行動を変えてみた。
ちらりと村長を横目で見る。
さっきまでの満足げな、嬉しそうな表情は影を潜め何だか物言いたげな、哀しげな表情で俺を見送ろうとしていた。
知らなかった、そんな顔で見送ってくれていたのか。
どうしようか、かなり迷ったが俺は。
「どうした村長? まだ何か話したい事でもあるのか?」
と聞いてみた。
すると村長の顔がパッと明るくなり俺に言う。
「えっ!? ああ……いや、何でもないんじゃ。ただの老人の愚痴……と言うか何というか……」
「何だまだ話しがあるんなら聞かせてくれよ! 村長!」
言って、俺は流石に立ち話は疲れたので、大樹の下に移動して根っこの部分にどっかりと腰を下ろした。
村長は今までに聞いた事の無い話を始めた。
大樹に寄り添う村《タイージュ》
この村での目標は守備力を強化してくれる《守りのクリスタル》を手に入れる事、それだけだ。
守りのクリスタルは、村の一番奥の左側にある青い屋根の小さな民家のタンスの中にある。
知っている。
100回目だから。
イメージトレーニングをしながら入念に準備運動をして、スタートダッシュの姿勢をとる。
3・2・1……。
俺は守りのクリスタルに向かって走り出した。
のどかな村の空気を一変させる猛ダッシュ、異変に気付いた村人達は一斉に振り返り、俺が巻き上げた砂埃をただ見つめる。
風にすっかり洗われた砂埃の中に俺はもういない。
青い屋根の小さな民家が見えて来た。
と。全力疾走中の俺の右サイドから何者かが現れた。
「おぉぉぉ待ち下さぁぁぁい勇者どのぉぉぉ!」
――村長だった。
村長は俺を楽々と抜き去り俺の行く手を阻んだ。
『ワシの話を聞かずに村を出ようなど何を考えておるのじゃ、このたわけ者!』と言いたげに俺を強い眼差しで睨みつけてくる。
「はあ……はあ……」
互いに肩を大きく揺らし何も喋れないでいたが、やがて。
「お……お主みたいな……勇者は、はあ、はあ……初めてじゃ」
「俺だって……はあ、全力疾走で村に入るなんて……はあ、はじ……初めてだぜ」
「全……全力疾走の勇者なんて、はあ……。聞いた事……ないわい……よし、そんな……全力勇者に……はあ、ワシの話を聞かせよう」
結局、村が出来た経緯とか村自慢の特産物とか、本当にどうでもいい極めてくだらない話(100回目)を延々と一時間近く聞かされる羽目になった。
この話しが嫌だから走り抜けようと思ったんだが、まさか追い抜いて来るとは……なんという強靭な足腰の村長だ。
一通り話し終えた村長は満足げな表情を浮かべ『では気をつけて行きなされ勇者殿』と、いつものセリフを吐いて解放してくれる。
いつもならブツブツ文句言いながらクリスタルを取りに行くんだが、今回は行動を変えてみた。
ちらりと村長を横目で見る。
さっきまでの満足げな、嬉しそうな表情は影を潜め何だか物言いたげな、哀しげな表情で俺を見送ろうとしていた。
知らなかった、そんな顔で見送ってくれていたのか。
どうしようか、かなり迷ったが俺は。
「どうした村長? まだ何か話したい事でもあるのか?」
と聞いてみた。
すると村長の顔がパッと明るくなり俺に言う。
「えっ!? ああ……いや、何でもないんじゃ。ただの老人の愚痴……と言うか何というか……」
「何だまだ話しがあるんなら聞かせてくれよ! 村長!」
言って、俺は流石に立ち話は疲れたので、大樹の下に移動して根っこの部分にどっかりと腰を下ろした。
村長は今までに聞いた事の無い話を始めた。
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