よみがえりの一族
33話 ふたり
「……お前はそいつが何に反応してるか知ってるか?」
堺が僕に向かってそう尋ねたが、僕にはなんのことだか意味がわからない。
そんな僕を見て苛立ちを隠せない様子の堺で、ぐっと拳を握りつぶしてる。だがそれもしょうがないことなのかもしれない。僕は前に比べ幾分戦いにかける想いが少なくなっている気もする。
「お前にだって闘争心くらいあるやろ? ……お前は俺が無意識に出してる殺気よりもお前の殺気が劣ってるってことやぞ……?」
そういう堺の顔はどこか寂しげだった。僕はやるせない気持ちになる。
「――――僕は……戦いが好きだ。だけど、それでも僕はもうあの時の実力も熱意さえも失った。だからこそ僕は自分を失ってしまったんだ!」
僕の悲痛な叫びは堺には届かない。僕は自分のことを情けなく思うと同時に涙する。
「……」
「もう自分を失うわけにはいかないんだ 」
決意を新たに僕は前に進むだけだ。たとえそれが茨の道だとしても……。
「さよか……ならええねんけどな……」
堺が気持ちを沈めると同時にじっと堪えていたヤークトフントが堺に向かって飛びかかる。
――――僕が次に気がついた時にはヤークトフントは真っ二つになっていた。
剣を出す動作が全く見えず、僕は自分の目を疑った。剣を出すのが見えないというだけであればまだ理解出来る範囲ではあるが、剣が出たところも戻したところも見えず、僕に見えたのは堺が少し動いたということと、その結果だけだ。
「今の見えた?」
子供な無邪気さで僕に向かってそう言葉を投げかけた。僕にとってそれほど腹立たしいことはない。
血に染まった道と転がった死骸を見ながら僕は答えを返すことが出来ない自分が相当腹立たしい。自分の弱さを認めることは出来たとしても口に出すことはどうしても嫌だ。
「見えへんかったやろ? でもこれ昔お前に止められた攻撃法やで……だからこそお前は強くならないとあかんのや! 俺は凡人やからこんな糞みたいな抜刀術でしか戦われへんから……だから、この状況を変えられるのは俺じゃないお前なんや 」
状況を変える、それがどういうことか僕にはわからないが、堺が僕を認めてくれているということは確かだ。だがおそらくそれは今の僕じゃなく過去いや、未来の僕のことだろう。
だから堺は苛立ちをつのらせているのだろう。あさっての方向にあるきだす。僕はその早足に必死に食らいついていくように早足になる。
「僕に期待してくれるのは嬉しいけど、僕は堺の言う『状況を変える』のは僕じゃないと思うんだ…………」
「いや、お前だよ!」
「いいや僕じゃない……」
「じゃあ、誰だと言うんや?」
それは――――
「『僕達』だよ!」
その答えが以外すぎたのか、堺は顔を赤らめていたような気がするが、もしかすると夕日のせいだったのかもしれない。
「ばか、恥ずかしいこと言うんやない! ……でもお前の言うことももっともやな、お前だえに任せるのもなんか不安になってきたし、俺も手伝ってやるかな!」
堺がそう言ってくれるのであれば、これほど嬉しいことはない。だけど一つ疑問が残る。
「……というか状況を変えるってどういうことだ?」
なんだかよくわからなかったが、僕はそう聞くしかなかった。と言うか意味がわからないのに僕は何かっこつけたことを言ってしまったのだろう。僕にはおそらくその答えはわからい、ただ単に本能のままにそう言ってしまった。
堺がずっこけるのも無理はないだろう、なぜなら僕は奇しくもボケ倒してしまった。
「俺が言ったこの状況っていうのは、悪魔がはびこるこの日本から全て排除することや」
悪魔を全て排除する? それはまずいのではないのか?
僕にはよくわからないことだが、悪魔を全て倒すということは自然をなくすことと同意なはずだ。つまり悪魔とは自然の一部であり、僕らの生活に関わる重要なものには変わりない。
だから、悪魔の全てを消滅させるということはとどのつまり僕達人間、ひいてはこの星を滅ぼすことと同意である。
「それはまずいんじゃないのか?」
「なんか勘違いしてるんちゃうか? 俺が言う悪魔ってのはこっちの世界の悪魔のことじゃなくて、あっちの世界の悪魔のことだぞ?」
あっちの世界という堺はまるで全てを見通しているようで、どこか不気味であった。だがそれとは別になんだか羨ましくもある。
「それはつまり、霧の悪魔のようなやつがこっちにいるってことか?」
「そういうことや……つまりは悪い悪魔を……」
話いた堺だが途中で言葉をつまらせる。あたりを警戒しているようだ。そしてまたあるきだす。いつの間にかビルの方へと来てしまったようだ。
少し進んだところで、堺が手で僕を制止した。
「なんかおかしい...…」
緊張感で心臓がドキドキと鳴る。僕たちの目の前にはヤークトフントの死骸が転がっている。だが、冒険者がやったわけではなさそうだ。
ヤークトフントの死骸は爪で引き裂かれたような異様なものだった。何か巨大な生物の爪でだ。
堺が僕に向かってそう尋ねたが、僕にはなんのことだか意味がわからない。
そんな僕を見て苛立ちを隠せない様子の堺で、ぐっと拳を握りつぶしてる。だがそれもしょうがないことなのかもしれない。僕は前に比べ幾分戦いにかける想いが少なくなっている気もする。
「お前にだって闘争心くらいあるやろ? ……お前は俺が無意識に出してる殺気よりもお前の殺気が劣ってるってことやぞ……?」
そういう堺の顔はどこか寂しげだった。僕はやるせない気持ちになる。
「――――僕は……戦いが好きだ。だけど、それでも僕はもうあの時の実力も熱意さえも失った。だからこそ僕は自分を失ってしまったんだ!」
僕の悲痛な叫びは堺には届かない。僕は自分のことを情けなく思うと同時に涙する。
「……」
「もう自分を失うわけにはいかないんだ 」
決意を新たに僕は前に進むだけだ。たとえそれが茨の道だとしても……。
「さよか……ならええねんけどな……」
堺が気持ちを沈めると同時にじっと堪えていたヤークトフントが堺に向かって飛びかかる。
――――僕が次に気がついた時にはヤークトフントは真っ二つになっていた。
剣を出す動作が全く見えず、僕は自分の目を疑った。剣を出すのが見えないというだけであればまだ理解出来る範囲ではあるが、剣が出たところも戻したところも見えず、僕に見えたのは堺が少し動いたということと、その結果だけだ。
「今の見えた?」
子供な無邪気さで僕に向かってそう言葉を投げかけた。僕にとってそれほど腹立たしいことはない。
血に染まった道と転がった死骸を見ながら僕は答えを返すことが出来ない自分が相当腹立たしい。自分の弱さを認めることは出来たとしても口に出すことはどうしても嫌だ。
「見えへんかったやろ? でもこれ昔お前に止められた攻撃法やで……だからこそお前は強くならないとあかんのや! 俺は凡人やからこんな糞みたいな抜刀術でしか戦われへんから……だから、この状況を変えられるのは俺じゃないお前なんや 」
状況を変える、それがどういうことか僕にはわからないが、堺が僕を認めてくれているということは確かだ。だがおそらくそれは今の僕じゃなく過去いや、未来の僕のことだろう。
だから堺は苛立ちをつのらせているのだろう。あさっての方向にあるきだす。僕はその早足に必死に食らいついていくように早足になる。
「僕に期待してくれるのは嬉しいけど、僕は堺の言う『状況を変える』のは僕じゃないと思うんだ…………」
「いや、お前だよ!」
「いいや僕じゃない……」
「じゃあ、誰だと言うんや?」
それは――――
「『僕達』だよ!」
その答えが以外すぎたのか、堺は顔を赤らめていたような気がするが、もしかすると夕日のせいだったのかもしれない。
「ばか、恥ずかしいこと言うんやない! ……でもお前の言うことももっともやな、お前だえに任せるのもなんか不安になってきたし、俺も手伝ってやるかな!」
堺がそう言ってくれるのであれば、これほど嬉しいことはない。だけど一つ疑問が残る。
「……というか状況を変えるってどういうことだ?」
なんだかよくわからなかったが、僕はそう聞くしかなかった。と言うか意味がわからないのに僕は何かっこつけたことを言ってしまったのだろう。僕にはおそらくその答えはわからい、ただ単に本能のままにそう言ってしまった。
堺がずっこけるのも無理はないだろう、なぜなら僕は奇しくもボケ倒してしまった。
「俺が言ったこの状況っていうのは、悪魔がはびこるこの日本から全て排除することや」
悪魔を全て排除する? それはまずいのではないのか?
僕にはよくわからないことだが、悪魔を全て倒すということは自然をなくすことと同意なはずだ。つまり悪魔とは自然の一部であり、僕らの生活に関わる重要なものには変わりない。
だから、悪魔の全てを消滅させるということはとどのつまり僕達人間、ひいてはこの星を滅ぼすことと同意である。
「それはまずいんじゃないのか?」
「なんか勘違いしてるんちゃうか? 俺が言う悪魔ってのはこっちの世界の悪魔のことじゃなくて、あっちの世界の悪魔のことだぞ?」
あっちの世界という堺はまるで全てを見通しているようで、どこか不気味であった。だがそれとは別になんだか羨ましくもある。
「それはつまり、霧の悪魔のようなやつがこっちにいるってことか?」
「そういうことや……つまりは悪い悪魔を……」
話いた堺だが途中で言葉をつまらせる。あたりを警戒しているようだ。そしてまたあるきだす。いつの間にかビルの方へと来てしまったようだ。
少し進んだところで、堺が手で僕を制止した。
「なんかおかしい...…」
緊張感で心臓がドキドキと鳴る。僕たちの目の前にはヤークトフントの死骸が転がっている。だが、冒険者がやったわけではなさそうだ。
ヤークトフントの死骸は爪で引き裂かれたような異様なものだった。何か巨大な生物の爪でだ。
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