５話絶望の夜

　部屋に戻りゆっくりしようかなどと考えていたが、それも出来ず自分の置かれた状況を確認する。

　僕は大切な彼女を失った絶望からか、なぜか自殺してしまった。しかし、ただの自殺ではなくて転生出来ること噂されている不思議な丘から飛び降りたのだ。
　未だになぜ、自らの命を絶とうと考えたのか全くわからないし、今では後悔もしている。
　たかだか１８年しか生きていない僕が、一時的な感情で、死を選ぶなど理解出来ない。
　確かに彼女が死んでしまったのは、僕にとっての絶望に他ならないだろう。だが、彼女の命を絶ったのも僕だ。それなのに僕が命を捨てるなど言語道断だ。

　結局、僕は自分のエゴだけの為に自ら命を絶つという、最高に最低なエゴを貫いたのだ。それを貫くという目的のためだけに友も家族も全部捨ててきたわけだ。
　父にも母にも親友にももう二度とあうことはできない。それも自身の責任ではあるが、それでも僕はもう一度みんなにあい、そしてまた助けて欲しいただそれだけだ。だがそれはもう二度と叶わない。
　転生するという事は死も同然だ。目頭が熱くなり、水滴が宙を舞う。そこに嗚咽も混じったならもう何も止められない。ただお腹がキリキリするのを感じた。

　僕は自分のダメさ加減と、取り返しのつかない現実に正に立ち向かわなければならない。たとえそれが修羅の道だとしても止まってはいけないのだ。それこそが自分が選んでしまった未来なのだから。

　その未来を信じてただ突き進むしか有り得ない。そい思う事だけが心を軽くし、前に進む勇気をくれる。
　それに、全く希望がないわけでもない。彼女の影もこちらの知り合いも僕を助ける要因となり得るだろう。

　だけど、僕にとっては希望を絶望が圧倒的に上回り、ただ、しみじみとなく以外なにも出来なかった。