風、音、あの時

清雪 桜

早すぎる再会

彼女に別れを告げた。
2人いる内の、若い方の彼女に。
最後まで浮気はバレなかった。夢を見せたままで、画面上で別れを告げた。
きっとあの子は、年上で見た目もそこそこ良い俺に夢中だった。若いっていいよなあ。あんなに一途になれるなんて、他人事のようにうらやましい。女子高生の貴重な青春を浮気な恋愛で奪ってしまって悪いけど、人生甘くないからね。
ま、次の恋愛は俺も一途になってみるかなあ。不可能だと分かりきっていることを考えながら、ホームに滑り込んできた電車に乗る。今までだったらここで部活帰りの彼女が駆け寄ってきて。今までだったら?
「裕翔」
今日も彼女は駆け寄ってきた。別れたあとに鉢合わせは気まずいと思って、いつもより遅い電車に乗ったのに。
「お互い電車遅らせたら、意味無いね」
そう言って顔を伏せる彼女の泣き腫らした目を見ると、さすがに心が痛む。
「まあ、これからも」
こうやって会うだろうけど普通に話そうよ、と言いかけてやめた。我ながら白々しいと思ったし、彼女の心は「なんで振ったの?」で埋まっているのが痛いぐらい分かる。やっぱり年が離れすぎて何か違うとか、正直に言ったところで女という生き物は納得しない。彼女ができるだけ俺の事を嫌いになって、未練がなくなるように、ここは冷たくしないといけない。
「俺、好きな人出来た」


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