青い果実 -Unripe fruit-

*おれんぢ*

-未成熟-

"ガラッ"

あたしは躊躇ためらい無くドアを開けた。
"怒り"  "悲しみ"  "後悔"…。
様々な感情が交差する中、扉を開けた先には。。


『何も無かった』


正しく言うと、"誰もいなかった"

全ての結論、結末を期待した扉の先には、ただ真っ白で少し鼻につく 医薬品の匂いしかなかった。

少しずつ強くなっていく医薬品の匂いに襲われながら
至る所にいるはずの患者の声もナースの声もあたしには、少しも聞こえていなかった。

求めていた結論、閉じ込めていた感情、吐き出すはずだったこの言葉を一体どこにぶつければいいのか。
その事であたしの頭はいっぱいだった。

全てをぶつけるはずだった輝希の姿はない。

それどころか、この場所にいるはずの佑衣も居ない。

全てがスタート地点に、いや…マイナスになったあたしは、脱力感と喪失感によりふらつく足元をしっかりと見つめ、病室をあとにした。





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コメント

  • ゆあ

    続き楽しみにしてる!!

    0
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