青い果実 -Unripe fruit-

*おれんぢ*

-苦い苦い毒林檎-

…ブブッ…ブブブッ…ブーッブッ…ブブブッ
「んんぅっ、む?あ"〜寝てたわ。今何時…?」
いつの間にか寝ていたらしく、開け放ったカーテンから見える夜空はあたしを闇にいざなうかのように…
「って、うるさいなぁ…なに?」
うるさく鳴り響くスマホのバイブレーションが耳障りなことを除けば寝起きは幸せだった。
鞄の中からスマホを取り出す。
「はーもう。こんな時間に誰だよ…」
(時計は見てない)
『はい、なに?何時だと思ってるの?もー』
不機嫌なのを隠そうともせずに電話に出た。時間は確認せずに(ここ大事)
『もしもし、こんな時間に…って、まだ8時半…だけど…』
まだ8時半か…これはしまったなぁ。
『まぁそんなことはどーだっていいんだわ!で?要件はなに?洸希、くん?笑』
『ぇ、いやっ…』
『あー、もやもやして待ちきれなかったんだ?佑衣のこと♡』
洸希の焦る声が面白い。わかり易すぎる。
『ちっ!違っ!俺のとこ、こられても、なんか!みんなにあらぬ誤解を受けるだろ?!』
…そんなこたぁねーだろ。
みんなそこまで恋愛脳で頭の中お花畑じゃないわ。ってか
『あー、お前あれだ!佑衣に、誤解されたくないんだな。大丈夫だわ笑』
『ほ、ほんとにそんなんじゃねーって!周りのヤツら、変な風に誤解するから!さ!だから…備えあれば、嬉しいな…?みたいな!』
備えあれば憂いなしだわ。こいつ馬鹿だ。あたしも相当だけどもっと馬鹿だ。
『はいはい、わかったわかった。っとまぁ本題に入るけど、佑衣には、中2からのらぶらぶな彼氏がおります。』
めんどくさいから早く電話を切りたくてバッサリと切り捨てた。
『あ、やっぱそっか…』
『ん。そう。以上!』
…洸希は二股するような男、たとえ彼氏がいなかったとしても佑衣はお前にだけはやらない。佑衣は優しすぎる子だから…最後にいつも1人で傷つく…だからっ、。
『そー、なん、だ。でm…』
『洸希はっ、!!佑衣の事が好き?って事なのかな?まぁ、そこは、いいんだけどさ。』
『ん、好き…だよ。本気で。』
《本気で…》
なんで。なんで、、?本気、洸希がまさか、。佑衣に、本気…?
…なにか黒いモヤが心…頭…全身を駆け巡り侵食していく。
『でも、さ。洸希って佑衣と友達ですらないんじゃない?佑衣から話題でたことないし。佑衣はね、凄くいい子なの。すごく優しくて…彼氏がいても、モテてるの。それに友達も多いし、あたしと違ってみんなの人気者で…。洸希には、無謀だと思うな?!その気持ちは、一時の気の迷いじゃない?本気なんて…簡単に言ってない?』
……。
流石に言い過ぎた、気がする。
佑衣のため…だけじゃなく、私情も挟んでしまった。流石に…
『うん。俺には璃夢がそこまで言う理由がわかんないけど…一目惚れだった。
急に好きとか、変だと思うけど…
明るくていつも笑顔で、そんなとこが好き。モテるのもわかる。でも入野さんを困らせるつもりは無い…俺、馬鹿だからさ?でも…
入野さんのことが好きな馬鹿なんだ。それだけ。じゃ、おやすみ』
プッ…切れた。
通話…切れた。
それと同時に私をつなぎ止めていた何かも、切れた。

なんなのっ、、あたしの時は…違っ…なんっ…でっ、
ねぇ、、「なんっ…ひど、いよっ…」
涙が落ちる。止まらない。全てが堕ちていく。
いや。もう、堕ちている。
頭の中も心も涙もぐちゃぐちゃで…
あたしが、あたしの中が黒く、ベトベトしたもので汚染されていくのが分かる。
「…なんでっ、いつもっっ…ぁたしはっ…」
くらくらする。視界も、頭も…
自分が悪いのは分かっていた。洸希を傷つけたことも。それが後々佑衣を傷つけることになるということも。
でも、それでも認めきれなかった。
あたしには、それが、出来なかった…。


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