青い果実 -Unripe fruit-

*おれんぢ*

-春-

甘い恋なんてよく分からない。
そんなことを思いつつ夕日が沈むのを教室の窓から眺めている。
松野 璃夢まつの りむ
今まで幾度となく恋をしてきたあたしは今。そう、now!
現在進行形で好きな人がいない。
記憶の限りでは今まで
『好きな人がいない』
という時期が無いに等しかったので
正直戸惑っている。
…戸惑っているというのに。
「あぁ〜もう大好きどうしよう♡
…璃夢は?いないの?好きな人!」
あたしの親友は今日も騒がしい。
入野 佑衣いりの  ゆい
現在ラブラブな彼氏がいる佑衣は今日も惚気が止まらない。
健全な普通の女子とは本当に恋バナが大好きな生き物だ…。
だがしかし!
好きな人がいないあたしにだって、嫁はいる!だぁい好きなアニメの悪役キャラ♡あたしの永遠のか・れ・s…
「あー。はいはい。何考えてるかわかった。推しが彼氏とか言うんだもんね。もー、璃夢 意外ともててるのに、こんなんだからなぁ…」
軽くdisられたようだ。佑衣のテンションが一気に下がった。
そして、あたしはもててるそうだ。
まぁ、そんなことは信じてない。
本当にそうならあたしは今頃告白の嵐でウハウハのはずなんだけどな…おかしいな…。



…って、色々考えてるようでなぁんにも考えずにアニメに没頭した高1。
そろそろ青春したいなぁなんて考え始めたのが一ヶ月前。そして、まだ少し肌寒い冬の風が吹く4月15日、今日。
教室の窓からオレンジ色の綺麗な夕日が差し込む放課後。
「ねね。佑衣〜あたしさぁ陽斗はるとのこと、好き…だと…おもう。」
「え!陽斗?!ええええっ、うそ、。」
驚きすぎて語彙力5歳児になった佑衣の口からは、日本語ではない言語が発せられていた。
「お、落ち着いて!多分!!だから…」
本当に『好き』なのかは、ハッキリと分かってない。
恋をしたい。と、強く思いすぎての勘違いかもしれない。
でも…。
「そっかぁ!遂に璃夢も恋かぁ!いっぱい恋バナ!しようね!今まで私のばっかだったもんね♡」

佑衣には中2から付き合ってる彼氏がいて、その惚気をいーーーーっつも聞かされて…。

チッ、爆発しろ…。

「んー、ま、頑張ろーっかな?」
「うんうん!璃夢、頑張ってね!」
個人的には…佑衣とあたしで付き合うってのも、ありかなっ笑
なんて言いながら佑衣に抱きつく。
すると
「どぉーん!なになにぃ?れず?芳乃もいーれてっ♡」
すごい勢いで飛びつかれ、2人でよろめく。
上川 芳乃かみかわ よしの
手入れされた黒髪のボブを左右2つに結んでいる。
身長も低く、モルモットなどの小動物のようで可愛いと、男子にもあたしにも評判だ。
が、
「何してたの?!芳乃抜きで!酷いなぁもぉ!恋バナでしょ!芳乃抜きだなんてひどいにゃぁぁ!」
開いた口が塞がらないほどのぶりっ子。
まぁ、元も可愛いし、自称ぶりっ子キャラを貫き通してるあたり、素じゃないだけマシだ。
「え!嫌だ!瀧人の話しかしないから面白くない!はーなーれーてぇぇ!」
思ったことがすぐ口から出る佑衣は、すぐさま拒否した。
そういう所…嫌いじゃない((
「はー?リア充はだまってろ!笑
芳乃わぁ、璃夢とするの!佑衣は彼氏のところにでも行ってこーい!」
「はぁ?!今はそれ関係ない!」
毎日の日課のように行われる口喧嘩。
また、始まった。
「あー。じゃあ佑翔に、佑衣が別れるって言ったってゆってくる!」
「違うじゃん!ねぇ!ねぇ!まっ、まってぇぇ!」
「じゃあ好き?大好き?愛してる?」
「えっ、ぁ、それっ…は…」

お。雲行きが怪しくなってきたぞ…

「す、き?(圧)」
「ぅーぁー、うんんぅ、」
「愛してる??」
「ぇーぁー。ぅ、ん…」
「ふぅーん、だってさ!良かったね♡」

「ふふっ、そうだね?うれしいねぇ〜♡」
2人の会話の間に佑翔ゆうと(佑衣の彼氏)
が教室の入口に立ってにやにやしながら見ていたことに佑衣は、佑衣だけは気づいていなかった。
「っはぁぁぁぁ!!なんっ、もぉ、えっいや嘘でしょ!ぁぁぁぁぁぁぁ!」
今日の芳乃はフルスロットルに佑衣をいじめたおす。
佑衣は泣き目でしゃがみこんでしまった。
佑翔が近づいてきたので、佑衣のことは任せてあたしは芳乃の所へ向かう。
「芳乃、流石にやりすぎ、後でごめんなさいしなよ〜?」
「やーだぁ芳乃悪くないもぉーん」
我儘わがままな芳乃は、自分が正しい!で譲らない。

チラ…と、佑衣の方を見やる。
佑翔が上手く言いくるめたのか、佑衣には明るい表情が戻っている。
視線に気づいた佑衣は、近づいてきて
「璃夢、あたし佑翔と帰るから、また来週ね!」
と、笑顔で報告してくる。
佑翔は佑衣を迎えに来たらしかった。
「〜〜〜っ!」
帰り際に佑衣はあたしの耳元で意味のわからないことをボソボソと囁き、
「璃夢、あとは頼んだッ!」
佑翔も、意味不明なことを言って、そそくさと教室をあとにして行った。


「璃夢♡リア充共は帰っちゃったし、お話…しよっか♡」
それと同時に芳乃の表情が変わった。
雲行きが…怪しく、なってきた…。
「いやぁ、あたし今日は早めに帰…」
「りむぅ♡璃夢は、あの、クソリア充共と違って、芳乃のお話、聞いてくれるよね♡ね?(圧)」

何かを察したあたしは、何とか帰ろうと試みるが、芳乃の圧に勝てそうにない…。
腕を掴まれ、スッポンのように離さない。
このままでは、まずい、日が暮れるまで芳乃の話に付き合わされる…!!

だ、誰か助けてぇぇぇぇ!!!!

心の中で助けを求める中、佑衣の囁きを思い出した。

「璃夢ごめんね頑張れっ!」


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