再婚なんて聞いてねぇ!〜義姉妹が突然できました〜

老獪なプリン

稲川淳二は突然に…

「...颯人…くん。起きてく…ださい。颯...人くん。」

ん?オヤジの声か?何だよもう付いたのか...はえぇな。もうちょっと寝させてくれよ。
やはり、寝たりないのか頭も冴えない。ぼけた調子でオヤジの声に対応する。

「あと、5分...」

「あと5分もたったらそれこそ筆記テストが始まるので、そろそろ準備をしてください。」

視界に映ったのはスーツ姿の綺麗な女性。親父は?へ?てか筆記って?ココドコ?
さすがにビックリしすぎて一瞬で意識が覚醒したわ。

「まさか本当になにも聞いていないんですね。ここは貴方の転入志望の高校であり、試験会場です。」

どこか呆れた調子でため息をつく女性。しかし、俺は呆れに対する反応をすぐさまとることすらできなかった。だって、俺は車にのって、それで眠りに落ちたはずだから...
どうやって俺はここまで来たんだ?車が直接入ってくるわけでなし。駐車場との距離もある。と言うことは...

「はぁ!?あの親父!あ、すいません...」

スーツの姿女性は少し驚いた様子で方を小さく揺らした。
この状況はつまりアイツが俺をここまで運んできたのか...喜べねぇ。
どういうことだよ、親父ぃぃ!ヒステリックを起こしそうになったが思い止まった。俺は生理中の女じゃあるまいし、むしろ俺は正真正銘の日本男子だ。
男はそんな過ぎ去った昔の事で女々しく喚いたりはしない!
しかしなんだ。後で一発殴ってスッキリしよう...

「筆記試験を先に行い、終わり次第に簡易的な面接と言う形です。筆記試験は5教科筆記試となっているので頑張ってください。自販機は奥を曲がってすぐのところにありますので水分補給は各自でお願いします。」

「は、はぁ。」

「それでは試験会場に移ります。」

マジで始まるのか...親父はなんで起こさなかったんだよ!そうか、俺を少しでも長い時間寝かせてあげようと配慮してくれたんだ。そういうことにしなければ怒りが収まらない...。

「本当に大丈夫ですか?」

心配そうに声をかけられたが正直なとこ全然大丈夫じゃない。
まぁ、勉強面もそうだがどちらかと言うと内心穏やかじゃない的な意味合いの方で。

「いえ、大丈夫です。きっと...」

「きっと?ま、まぁ大丈夫ならいいですけど。」

「いえいえ。ご心配ありがとうございます。」

完全にお外用の顔になってるんだろーな俺...
まぁ、印象悪いよりいいか。

「そうですか?あ、そろそろですね。」

試験会場であろう扉の前で俺は「ごくり」と生唾を飲み込んだ。

「それではここからはお一人となりますのでよろしくお願いします。」

「はい。」

さぁ。これからが俺の戦いの時間だ。










と、カッコつけたのは良いのだが案外簡単にテストは終わり面接へと向かうのだった。

「こちらです。」

何だったんだあの緊張は...。ちょっと思い出して恥ずかしくなってきたんだけど...///
ま、まぁいいさ。めちゃくちゃ難しくて解けねーってのも無かったはずだし良かったんじゃねーの?
あれ、そういえばテストってなに答えたっけ?俺そういえばミスをしてたんじゃ...って考えても今さら仕方ないか。
残すとこは面接だけかぁ。やだなぁ。こわいなぁ、こわいなぁ。
俺の心の中の稲川淳二がいい仕事してるうちにさぁ、はやくしよう。

「こちらが面接会場です。」

通された場所にはこの学校の教員と思われる先生方がずらーって。...ずらーって。
ん???
アレー思ってたより多いなぁ...(白目
淳二くんが静かになっちゃうぐらいには怖いよね。
まぁ、やるしかないもんはやるしかない。

「では椅子に座ってください。」

「は、ひゃい。」

変な声がでちゃったんだけど...べ、べつにビビってなんかないんだからね!
嘘ですごめんなさい今すぐにでも逃げ出したいくらいには怖いです。
いや、だってこんな沢山の大人にか囲まれて圧迫面接とかどんなハード!?
もし俺が世間知らずでこれが本当の面接だと言うのなら、俺がいままで受けてきた面接はおままごとだ。

「では質問です。貴方は何故、いかなる理由でここへの転入を決められましたか?」

中央に座る貫禄のある教師が低い声でそう問いかけてきた。

「えーっとですね...」

そんなもん知るか!親父が決めてて昨日知りました♪とか言える空気じゃない。
あと、俺がえーっとっていった瞬間にメモ取り始めるの怖いんだけど!なにかが減点されている気がする...

「やはり学業への意欲ですかね。」

「ほうほう。」

「私が在学しておりました高校はどうも勉強に対する関心が薄いようでした。勿論それに対してどうこう言える立場でないのは百も承知ですが自分は意欲的に勉学に励めるであろうこの高校がより自分にとってよい場所であり環境であると考えたため転入試験を受けさせていただきました。」

次に声を上げたのは若い女性の教員だろう。

「次の質問です。あなたの考える自分の良い点を挙げ説明してください。」

俺のい、いいところですかい?
俺のいいとこ...親父!たまには俺にヒントをくれ!
親父は俺のことをいつも何て呼ぶ...そうだ!モンスター顔だ!
って、やかましーわ!
畜生が!親父は役に立たないし、なんかないのか......そうだ!

「自分は強い意思と高い行動直を持っています。それに加え大きな向上心を持ち続けることができるのは自分の長所であると考えます。私は自らを客観的に見ることができず、それ故にどこか自らの実力を驕ってしまうことが多々ありました。しかし、今はその失敗を糧に自らの不勉強さを恥じ、同時にその驕りを驕りと呼ばれないぐらいの実力を持ちたいと感じ勉強に対して真っ正面から向き合うことができるようになったと思います。」

わりとまともなことを言えた気がするぞ!

「ふぅ~ん、なるほどね。」

20代ほどの教師が声を漏らした。

「んじゃ、次は僕ね」

「は、はぁ。」

「あはははっ。そんなに固くならなくていいからさ。もっとリラックスしてほしいな~。」

ひとしきり笑った後、男はそう言った。

「は、はい。善処します。」

「まったく肩の力が抜けてないけど本人が頑張るって言ってるみたいだしそれはそれでひとまずいっか。で、質問なんだけどね...」

「は、はい。」

なんで溜めるの!?

「ねぇ、隼人君って今好きな子っているの?」

「ブフゥーッ」

散々溜めておいて何を言ってるんだこの人。それは俺の転入と絶対関係ないだろ!

「あははははっ。その目だよその目。蔑まれてるみたいでゾクゾク来ちゃうよ。
僕は最初の君より今のきみの方がずっと好きだな。」

ゾクゾクっ。ヒッ!こっちがゾクゾクするわ!もちろん背筋がな!
おえ~...少し気が引けるが仕方あるまい。断るときは断らないとな。

「いえ、好きな人はいませんがさすがに男の人はちょっと...」

「違うって!僕だって男はごめんだ!...って、あれ?僕の方がやり返されちゃったか。」

「くくく...」

「ふふ...」

誰かは分からないが堪えるような笑い声がちらほらと聞こえる。
よかったぁ。これでガチ切れされてたら俺は泣いてた。

「うん。やっぱり君いいね!面白いって言うかユーモアのセンスがあるよ。相手に不快感を覚えさせずに笑顔にすることができるのはもはや能力といってもいい。ぼくは君のことが気に入ったよ。」

うげ。気に入られたのは嬉しいのだがそれが気色の悪い男色野郎じゃなぁ...

「君は顔に露骨に出しすぎだよ...。まぁ、嫌な感じじゃないからそれもよし!」

「は、はぁ。」

なんだこの面接は...。圧迫面接かと思いきや変態面接させられたんだが。
気持ち悪いが俺も嫌いじゃない感じのノリだ。

「さて、そろそろ化けの皮も剥がれてきたところだろう。今の表情を見るに今の君が本来の姿なのであろう。面接直後は頑張っていいことを言おうとしてた面が大きいしな。」

メガネをクイっと上げながら見るからにカリスマオーラぷんぷんの目算30代の教師が声を上げた。
いや、なに言ってるの俺。どういうことだよカリスマぷんぷんって。何臭だよそれ。まぁいい。
しかし、そしたら今までのは俺の化けの皮を剥ぐことが目的のお遊びでこっからが本番ってことか!?
いまの俺への印象は正直言って相当に不味いと思う。変態面接のかいあってか、今の俺はわりと本性の大部分が晒されている。
最初被っていた猫は、家出をしてもはやどこかにいってしまった。
やばいやばいやばいやばいやばい.........

「おめでとう。君は合格だ。」

「え?」

トリッキーな面接を繰り出してきた変態教師。もとい、男性教師がそう言ったのが聞こえた。
え?お前が言うの?

「あぁ、ごめんごめん。なんでそんなこと決められるんだよ?って顔してるね。って言うのはね僕がこの学校の校長だからさ!」

え?

はぁぁぁぁぁぁぁあ!?お前が校長なの?マジでいってんのかよ!
状況が理解できない...

「まぁ、面接なんて正直要らなかったんだよね~。君のテストの結果だけどなんであの高校にいたのか分からないぐらい良かったからね。猫被ってたときに言ってたこともあながち嘘じゃないのかもしれないね。
なによりお疲れ様。先生方ももういいですよ。」

その瞬間に周りを囲んでいた教師の表情が一気にほぐれた。

「あぁ、疲れたぁ」
「けど、面白かったわな」
「校長に「男の人はちょっと...」って断ったとき笑いそうだったもん」
「ほんとにね!私ちょっと笑っちゃったわ」
「てか、よくこの圧迫面接耐えたな」
「点数の方もそうとう良かったからのう」
「にしても今回の生徒はは当たりだったと思いますよ校長」

さっきの圧迫面接を担当していたとは思えないほどの物腰の柔らかさなんだが...

「あ、隼人君。お疲れ様。明日ここにまた来ておくれ。時間はそうだなぁ、8:00かな。制服や、教材の類いはもう届いていると思うから明日はそれを来てくるといいよ。それじゃあ、また明日ね。」

「あ、はい。さようなら...。」

なんだかよくわかってないうちに俺は合格したらしい。
良かった~...一時はどうなるかと思ったがなんとか受かったようで安心した。

「早く帰らねーと。って、あれ?俺はどこに帰ればいいんだ?」

試験の終わった俺はもうひとつの課題を抱え校門の前で一人立ち尽くしていた。

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