僕は間違っている

ヤミリ

23話

全てを思い出した僕は、証拠を投げ捨てた崖へ向かった。
激しい後悔に苛まれた体は、上手く動かずに震えていた。何回も転んでは、起き上がる。そうして彼杵に逢いに行く。
僕はようやく気付いた。彼杵が好きだったことを。今更気付いた。あの時止めれば良かった。愛していたのに。誰よりも、誰よりも守りたい存在だったのに。こんなこと、いっそのこと気付きたくなかった。
崖までやっと来た所で、珠理と達秋らしき人の声が聞こえる。
「待って、待って!」
「颯海!! 行くな!」
最後まで良い友達だった。けど、もう僕は引き返すことは出来ない。
崖から左足を降ろす。けれど右足が動かない。
────また、逃げるのか?
そんな声が聞こえた。
刹那、僕の右足は地面を思いきり蹴って、体は宙へ浮かんだ。
途端に下へと落ちていく。
おかしいな。彼杵の笑顔が見える。一緒に居た時間がまた繰り返されているような気分だ。これが走馬灯というものだろうか。
けれど幸せな時間はすぐ終わり、
────グシャリ
僕の体は川へは落ちずに頭蓋骨から岩へと叩きつけられた。その不快な音は、川の流れさえも止めてしまうような、耳に残る苦しい音だった。
ああ、『僕は間違っている』────



置き手紙〈二〉
颯海雪菜へ
この手紙を読んでいるということは私は死んでいるのかもな。実はこの前、こっそりタンスの中に入れさせてもらった。
私は、この平凡で退屈な日々の中で、颯海のおかげで刺激を貰えていた。本当にありがとう。
私の最後の望みを叶えてくれてありがとう。死なせてくれてありがとう。
といっても、私が強引に殺させたと思うけどな。
なぜそんなこと分かるかって? 私は颯海の性格をよく知っている。例えば、「別に」は嘘を言っている時に使うよな。あと、私に存在を否定されるのが嫌いだろう。
颯海には重荷を任せてしまったな。本当にごめんなさい。
愛しています。
彼杵雪菜より

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