僕は間違っている

ヤミリ

21話


彼杵と初めて会ってから数ヶ月後。僕達はたまに遊ぶ仲だったが、現在程仲良くはない。
誰よりも彼杵と仲良くなったのは、ある雪の日の出来事がきっかけだった。
その日は遊ぶ約束もしていなくて、たまたま遭遇しただけだった。最悪な形で。
彼女の雪と同じ様にとけてしまいそうな、悲しい横顔に違和感を感じたが、何も知らなかった僕は気軽に声を掛けた。
「彼杵!何してるの?」
けれど僕の声は目の前を通るトラックの音に掻き消された。
彼杵は道路に飛び込み、そのトラック目掛けて走っていった。
────ドスッガシャン
トラックは勢いよく道壁に衝突し、前部分が形を留めていなかった。
「その、ぎ?」
彼杵の姿が見えない。走って現場に近付く。僕はその瞬間悟ってしまった。彼杵は死んでしまったんだと。
「う、うわああああ。うわあああん」
大きく泣き叫ぶ。堪えきれない涙は滝のようだった。
しかし、その直後、後ろから肩を叩たかれる。
「はや、み?」
「え?」
死んだと思った人が生きている。幽霊? 今度はそっちの意味で涙が溢れてくる。
「うわあああああ!」
「ち、ちょっと落ち着けよ!泣きたいのはこっちだ……うっうう」
彼杵も涙が目に溜め込まれて、ポロポロ雫が落ちている。それを見た僕は、涙が引っ込む。
「どうしたの? 痛いの?」
「お父さんと、お母さんが、死んじゃって……私は養子に、出されちゃうんだ」
小さい僕にはそのことが直ぐには理解出来なかったが、悲しいことというのは理解が出来た。
「もう、殴られなくなっちゃう。蹴られなくなっちゃうって。生きる意味がない。生き甲斐がないんだ!!」
子供とは思えない程の圧力がその時の言葉にはあった。
そう、その頃から彼杵の愛情表現は歪んでいたのだと気付き始める。彼杵の隠されていた狂気は普通のものではなかった。
「じゃあ、僕が君の生き甲斐になる。一緒に生きよう、死ぬ時も一緒だ」
自殺を選んでしまう程の悲しみを持っていた彼杵に、僕はそんな言葉を発した。とても放っておけなくて。
「本当か? 死ぬ時絶対一緒?」
「うん」
そう答えると、天使のような笑顔を向けてくる。もうそれを見てしまったら、何をされてもいいと思った。
その日から彼杵雪菜の生き甲斐は、颯海雪菜になった。
それから分かったことがあった。彼杵は前の両親に暴行されていて、それを愛情表現だと勘違いしていた。それでもその境遇は消えずに、今でも暴力をされると満たされた気持ちになる。
まるで呪いのようにこびりついていて、表面上では完璧な彼女だったが、僕の前ではその愛情表現(暴行)を要求してきていた。僕も断らずに受け入れ、完璧な依存関係が出来上がってしまった。

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