僕は間違っている

ヤミリ

15話

「二人共、どうしたんだい? そんな難しい顔して」
「あ、いや、なんでもないんだ」
どうすれば家の中を探索できる? どうすれば彼杵を見つけられる? 達秋の方を見るが、頭が真っ白になっているようだ。証拠が掴めないのは予想していた事態だが、実際そうなるとパニックになってしまう。落ち着いて打開策を考えた。
獅恩が窓の方を見つめていたので、その隙に達秋に耳打ちする。
「僕が体調が悪い振りをするよ。トイレに行くから、獅恩とずっと会話をしていて」
早口で、最小限の声の大きさで言ったので伝わったか分からない。が、これしか方法は無かったので獅恩に声を掛ける。
「体調、やっぱり悪いからトイレに行ってもいい?」
「ああ、案内するよ! 大丈夫かい?」
「あ、いいんだ!場所さえ教えてくれればいくから」
付いてこられるのはまずい。
「ちなみに他に家に人はいる?」
探索する時に家の人にバレるのも危険なので、確認しておく。
「この時間は誰も居ないさ。なんでだい?」
「ちょっと人見知りだから、かな」
生きている心地がしない。心臓が有り得ないほど跳ねている。早くこの作戦を無事に終わらせたい。
「颯海、途中で漏らさずに頑張れよ」
達秋が笑いながら冗談を言う。僕が焦っていたのに気付いたのか、フォローを入れてくれた。
「馬鹿、漏らす訳ないだろ」
「ははは。二人はほんとに仲良いな。トイレは真っ直ぐ行って、二番目の左手の部屋だよ」
トイレの場所を教えてもらい、扉を開ける。扉を閉めようとすると、獅恩に小さく呼び止められる。
「颯海、一階の右奥の扉もトイレだけど、今壊れてて使えないから、万が一迷っても入らないでね」
達秋にも聞こえない距離でそう囁かれ、扉が閉められる。
「右奥の扉? 尚更気になるな」
迷わず階段を降りて、右へ進む。さっき言われた通り、扉を見つける。迷う暇もなく勢いよく扉を開く。
すると…そこには故障中の張り紙が貼られている、トイレがあるだけだった。
「本当に故障中のトイレの部屋だ…」
絶対に証拠が見つかると思ったのに。思わず拍子抜けする。
しかしこんな所で止まってる場合じゃない、全ての部屋を調べてみよう。色んな部屋を開けて、気になる所を調べていく。が、何も出る様子は無かった。
「もう全部の部屋開けたよな…」
二階の部屋までくまなく調べた筈なのに、何も出てはこない。
どこを探すか立ち尽くして考えていると、達秋からメッセージが来る。
────「早く来い。もう限界だ」
あっちももうできることはやったようだ。けれどこのままでは帰れない。
「もう全部調べたのに…」
悔しい気持ちを押し殺し、獅恩の部屋へと戻っていく。
「ごめん、遅くなった。お腹がギュルギュル鳴ってて」
ははは、と笑いながら誤魔化す。
「無理は禁物だよ。 こっちはウノやってたんだ。達秋が持ってきてくれたみたいで。颯海もやろう」
怪しまれていないようだ。良かった。達秋が上手くやってくれたようで、こちらを向いてウィンクする。
けれど僕は何も掴めていない。何とかしないと。ウノに参加しながらこの部屋をもっと隅々まで確認する。やっぱり普通の部屋だ…家具を一つずつ確認しても、変わったところは…ん? 勉強机が斜めっている。普通奥までくっつけないだろうか。
タンスと勉強机が大き過ぎて奥が見えない。
達秋の肩を叩き、ジェスチャーと指差しでその事を伝える。気付いたはいいものの、どうやって確認すれば…
「獅恩、また新しいゲームしようぜ。王様ゲーム!」
突然達秋が新しいゲームの提案をし始めた。この状況で王様ゲーム? 馬鹿なのか。不安が募っていく。

コメント

コメントを書く

「推理」の人気作品

書籍化作品