僕は間違っている

ヤミリ

9話

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「あっちいなあ…」
俺はさっきまで学校付近で生徒や近所の人に話を聞いていた。見つけた手掛かりと言えば居なくなった前日に、凄いイケメンと彼杵が一緒に歩いていたという情報だ。もしかして俺のことか。でもその日(土曜日)は会わないしな。
今は暑過ぎて少し休憩している。
「なんか飲み物買いに行くか」
自動販売機が無いか周りを見渡すが、あるのは住宅だけだった。一番近くだと校内にしか自販機は無さそうだ。
「学校には…颯海と獅恩が居たな。ついでに会いに行くか」
校門の方へと足を向け、進んでいく。すると見覚えのある後ろ姿を見つける。何故か周りをキョロキョロと見渡している。
「珠里!?」
珠里は驚いたようで身体をビクッと震わせる。
「え!? あ、達秋か…もう!びっくりさせないでよ!」
やっぱり珠里だったか。
「すまんすまん。でもなんでここにいるんだ?」
「あまりに情報が無くて、こっちに戻ってきたの」
それにしては少し早くないか? まあいいか。時間を無駄にするよりかはマシだよな。
「じゃあ学校一緒に戻ろうぜ」
「あ、ごめん!ちょっと部活に用事あるから先行っててよ」
「おう。分かった」
なんだか挙動不審で怪しい。ちょっと付けてみるか。いや、それはそれでストーカーみたいか。
遠くから見ていると、何故か自販機のある方へと歩いていくのが見えた。珠理は確か弓道部だったはずだが、なんで反対方向へ行くんだ。
「やっぱり付けるべきだなこれは」
恐る恐る距離を取りつつ、珠里を付けていく。すると急に立ち止まった。
「なんだ? なんで止まったんだ? まさかこっちに戻ったりしないよな!?」
その予想とは反対に、また珠里は前へと歩き出した。
「なんで止まったり進んだり…」
誰かを見て動いているかのような不自然な行動をしている。まさか尾行か。誰をだろうか。
確認するため二歩分だけ近付こうとした時、珠里がこちら側に振り向いた。咄嗟に近くのゴミ箱に屈んで隠れた。
「気の所為? かな」
そんな声が聞こえ、安堵する。良かった、危うく社会的に死ぬ所だったかもしれない。もっと慎重に後を追わなければ。
先程よりも神経を研ぎ澄ませ、視線を離さないよう尾行を続けていく。三回程立ち止まった所で、驚くべきことが分かった。
「颯海と獅恩!?」
珠里の視線の先にはあの二人が居た。思わず大きな声で驚いてしまったが、朱里は気付いていない。二人を付けていたのか。でも何故だろう。今、珠里を問い詰めるべきか。そう迷っている時、颯海が獅恩に肩を貸してもらい、保健室に入っていく姿が見える。
「颯海どうしたんだ!?大丈夫かよあいつ…」
様子を見に行きたいが珠里の謎の行動の真相を確かめなければならない。モヤモヤする心を抑え、珠里から視線を外さないようにする。
数分後、獅恩と保健室の先生が出て行き、保健室には颯海しか居ない状況となった。珠里はそれを確認すると、保健室へと静かに入っていった。俺もそれに続き、ドアの隙間から様子を伺う。すると、珠里は颯海の窓際のベッドの方へと向かっているのが見えた。
「なんだ? あいつ、颯海を襲う気か!?」
もしかしたら颯海が危ないかもしれない。危機を感じ、器用に音を立てないようドアを開く。そしてベッドの方へと忍び足で近付き、カーテンの隙間から覗いてみる。
すると、珠里が颯海の手を握っているのが見えた。それと同時に何かを呟いているようだった。
「珠里、颯海が好きなの。本当はいつも隣に居る彼杵が羨ましくて仕方がない。だから…」
────ザザザッザー
続きを聞こうとした時、急な突風の響きに遮られ、よく聞こえなかった。それにしてもとんでもないことを聞いてしまった。まさか!珠里が彼杵を誘拐した犯人なのだろうか。
もっと珠里の話し声を聞こうとしたが、もう喋っていないようだ。ずっと見守っていたが、何かをするつもりではないらしい。
考えが整理出来ずに困惑しながら、保健室へと靴音を殺し出て行った。自分の胸の痛みに気付かない振りをしながら。

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