僕は間違っている

ヤミリ

5話

授業が終わる度、転校生の周りにはたくさんの人だかりができていて、僕は逃げるように教室の外に出ていた。
ようやく昼休みになったのでいつもの場所へと足を運んだ。
僕はいつも屋上の扉前に座って彼杵と弁当を食べている。
トイレの個室二つ分ぐらいのスペースだが、寧ろその窮屈さが良い。
屋上は自殺防止のため開いていないけれど、ここは薄暗くて光が入ってこなくて気に入っている。
最近はずっと1人で食べていて、ぼっち飯だ。達秋や珠里にも「一緒に食べよう」と誘われたがあまり気分がよくなかったので断った。
ここは静かで落ち着く。
目を瞑り寂静に浸っていると、誰かが階段を上る足音がする。

────タン、タン、タン、タン

「やあ」
見上げると、そこには転校生が立っていた。
「どうして、ここに?」
「君に会いに来たんだよ」
「どうして?」
「君に興味があるからさ」
え、それって……。まさか、と思い僕は顔を引き攣らせ後退る。
「あ!違う違う!恋愛的な意味じゃないさ。それにこの学校に好きな子が居るんだ」
好きな人が居るのか、彼女だろうか。こんなに端麗な顔の持ち主なら簡単に交際できるだろうな。
「それより、君の名前を教えてくれないかい?」
転校生は僕の目の前に座り、興味津々に尋ねた。
「………颯海……雪菜」
僕は自分の女の子みたいな名前にコンプレックスを抱いているので、言うのを躊躇したが仕方がないので答えた。
「雪菜!!僕の好きな人と同じ名前じゃないか!」
この学校で『雪菜』といったら僕と彼杵しかいない。彼杵のことが好きなのだろうか。
「もしかして、彼杵雪菜のこと?」
「そうさ!!君は彼女と仲が良いのかい?」
「まあ、そうだね。君は彼杵と親しいの?」
「彼女とはよく話すよ。最近行方不明みたいだけどね……」
彼の表情は飼い主に捨てられた子犬のように哀しみに満ち溢れていた。彼になら、捜索を協力してもらってもいいかもしれない。
「実は、友達と彼杵を探しているんだ。もし良かったら、協力してくれないかな?」
そう提案すると、
「ああ!!協力させてくれ!」
と思わず耳を塞ぎたくなる程の元気な声で返された。
「じゃあ放課後、聞き込みをしながら学校を案内するよ」
「感謝するよ!!そうだ、俺のことは獅恩と呼んでくれ。よろしく」
「よろしく。僕は彼杵と区別するためみんなに颯海って呼ばれているんだ。獅恩もそう呼んで」
僕がそう言うと、昼休みが終わる予鈴が鳴る。
「もうそんな時間か!早く戻ろう」
話をしていて弁当を食べ損ねてしまったが、授業に遅れるのは面倒なので、急いで僕達は教室へと向かった。


────起立、気をつけ、礼。

日直の号令でホームルームが終わる。
早速獅恩に声を掛けようとすると、その前に達秋に声を掛けられる。
「颯海!今日も聞き込みしに行くぞ」
「分かった。その前に、獅恩も手伝ってくれるんだって」
そう言い、隣に居た獅恩に視線を向ける。
「よろしく。君が彼杵さんを探している友達かい?」
そう獅恩が達秋に声を掛けると、
「そうだ。協力してくれる人が増えて嬉しいぜ!俺のことは達秋って呼んでくれ」
「よろしく、達秋。俺のことも獅恩って呼んでくれ」
達秋との自己紹介は済んだので、違うクラスの珠里と千夏にも会いに行った。
二人は同じクラスで、僕達のクラスの左隣ですぐ近くだ。
タイミング良く二人共ドアから出たので咄嗟に声を掛ける。
「珠里!千夏!」
僕がそう呼びかけると、珠里は横に居た獅恩を見て歓喜の声をあげた。
「もしかして、もしかしてもしかして!!モデル兼俳優の、相崎獅恩君!?」
だからクラスのみんなが騒いでいたのか、テレビは見ないから気付かなかった。そんなにすごい人だったなんて。
「そうだよ、彼杵さんを探すのを手伝うことになったんだ。よろしく珠里ちゃん。獅恩って呼んでくれ」
そう言いながら、女子の扱いは慣れているようにウィンクをする。
「よ、よよよろしくですっっっ」
今にも倒れそうな程珠里が大興奮している。流石イケメンモデル兼俳優だ。
珠里があまりに大声で飛び回っていたので千夏が氷の様な冷たい視線を送る。
「一旦落ち着きなさい。ただのイケメンに情けないわね」
千夏はイケメンを目の前にしてもいつも通り冷静だ。流石。
「はは。千夏さん、久しぶりだね」
獅恩は千夏に声を掛けた。
「久しぶりね、一年ぶりかしら?」
「二人は知り合いなのか?」
達秋がそう聞くと、
「ええ。彼杵を通じて知り合ったのよ」
千夏は淡々とそう返した。
やっぱり彼杵とは仲が良かったのか。こんなイケメンに好かれてるなんて彼杵は幸せ者だな。
「そんなことより早く聞き込みを始めましょう?」
千夏がそう言うと、みんなは頷き各場所へ別れた。

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