外れスキルのお陰で最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜

血迷ったトモ

第102話 鏖殺(1)

 聡の質問に、ルドガーは眉間に深いシワを作りながら、重い口を開く。

「奴の固有魔法である【ディスアピアー】は、視界内にある対象物を、消し去る事が出来る。その対象物は、生物や建物などと指定出来ると言われてるんだが、建物を消すと、接地面には何も痕跡が残らないんだ。普通に消し飛ばしたなら、何かしら抉れてたりするだろ?」

「なるほど。確かに私が普通に消し飛ばそうとしたなら、地面ごと抉れますね。」

「…ふ、普通は消し飛ばせないんだが?えっと、まぁそういう訳で、犯人は『鏖殺』で間違い無いと考えている。」

 聡のボソッとした呟きに、ルドガーは呆れた様子でツッコミを入れる。

「つまり、私にその『鏖殺』とやらを見つけ出して、これを討伐、若しくは捕縛して欲しいという事でしょうか?」

「…あぁ、その通りだ。このまま放っておけば、この街にも来るかもしれん。何より、魔王と互角の戦力だというサトシならば、この10年で数多くの村や街を滅ぼした奴を、倒せるかもしれない。」

-いや、そんな危ない奴を、10年も放置してたんかい!この国、何で滅んで無いんだ!?-

 どんな事よりも、明らかに優先して対処すべき事態を、何で放っておいたのかと、聡は驚愕のあまり全力でツッコミを入れてしまう。

「…サトシの言いたい事は、理解出来る。『鏖殺』は半年に一度とかの頻度で、小さな村を消すんだが、国にとっては被害は大きく無いから、そこまで大規模な討伐隊が組まれた事が無いんだ。んで、小規模な討伐隊が組まれても、最終的には見つからないか、部隊丸ごと消滅させられるんだ。」

「にしても、ですね。そいつ、国の暗部とかに属してて、たまに暴走して目に見える被害を齎すって事なんじゃないですかね?」

 聡は人に聞かれれば、不敬だなんだと言われて、しょっぴかれそうな事を言ってしまう。

「はぁ…。それが否定出来ないのが辛いところだ。…頼まれてくれるか?」

 ルドガーは頭を抱えながら、縋るように聡のお願いする。国に助けを求めても無駄なので、聡を頼るしか無いのだ。

「う〜ん、お受けしますが、3つほど条件があります。」

「あ、あぁ、大抵の望みは叶えられるよう、動くつもりだ。何でも言ってくれ。」

 こうもあっさり引き受けてくれるとは思っていなかったルドガーは、戸惑いながらもしっかりと力強く頷く。

「さ、サトシ様!そのような危険なお尋ね者の討伐を、安請け合いしてしまって大丈夫なのですか!?」

「そうよサトシ。私としては、この話は蹴って欲しいと思ってるの。」

 と、ここで、聡の両隣から抗議の声があがる。
 どうやらエーリカとフラウは、聡が『鏖殺』の討伐を請け負う事に反対のようだ。

 両側から腕を抱えられてしまい、聡は身動きが取れなくなってしまう。

「ま、まぁ何とかなると思ってるから、大丈夫だよ。寧ろ、俺を殺せる生物が居るなら、是非とも会ってみたいと思ってくらいには、俺は強いんだぜ?」

 腕に感じる暖かく柔らかい感触に、聡はドギマギしながらも、鉄壁の意志で捩じ伏せて、自信満々な笑みを顔に貼り付けて見せる。

「で、でも、どんな生物でも、体を消されたらおしまいでしょ!?」

「そうです!何か対策でもあるのですか!?」

 これが何の関係も無い、赤の他人からの言葉であれば、聡は無感情に切り捨てて、さっさとルドガーとの話し合いに移っていただろう。しかし、純粋な好意から来る2人の言葉を、無視出来るほど聡は冷酷な人間では無かった。

「…俺の、ステータスを、見るか?」

 聡は何とか言葉を絞り出す。もうこれ以外で、2人を安心させる手段が思い浮かばなかった。

 【不老不死】のスキル自体を消されない限り、肉体が消失しようとも、回復出来ることは、既に実験している・・・・・・。だから、『鏖殺』とやらの魔法をくらっても、死ねない・・・・だろう。

 だがそれを実践して見せる訳にもいかず、聡はこのような手段を取ろうとしているのだ。

「さ、サトシ…。本気なのか?以前聞いた時は、絶対に見せたくないという、強い意志を感じたんだが…。」

「まぁ見せたくはありませんが、このままだと2人が腕を解放してくれなさそうなので、仕方が無いかなぁと。」

 『あはは』と苦笑いしながら、聡は肯定する。

 この世界の事を、たっぷり勉強していた聡は、【不老不死】とステータス値の異様さ、そして【亜神】という称号が世に与える影響を、正確に理解していた。

 しかしそれ以上に、ここで『鏖殺』を野放しにして、エーリカやフラウ、ニコラ、ルドルフ達に被害が出る事は、何としてでも避けたいと、聡は強く思っている。

 だからこそ聡は、外に出て1ヶ月もしないうちに、ステータスを人に見せる事を決めたのだった。

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