外れスキルのお陰で最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜
第91話 コルネリウス邸にて(1)
「おはよう、サトシ殿。また少女を救ったようですね。」
「お、おはようございます、コルネリウス様。その言い方だと、まるで私が少女ばっかり救ってると勘違いされてしまいます。」
 コルネリウスの屋敷の応接室に入り、開口一番とんでもないセリフが飛んで来た為、聡は苦笑しながら返す。
「まぁまだ2人だけですから、『また』と表現には、語弊がありましたね。では、お掛け下さい。」
 聡をからかって満足したのか、ソファを指し示すコルネリウス。
「はい、失礼します。」
「…。」
「えっと、君は座らないのかい?」
 聡の背後に立ち、そのままソファに座る様子の無いフラウに、コルネリウスが遠慮がちに声をかける。
「はい。私はサトシ様にお仕えする事になりましたので、お話はこのままさせて頂きます。」
「いや、話が長くなるかもしれないので、隣に座ってもらえますか?」
「…はい、畏まりました。」
 謎理論で座ろうとしないフラウに、聡がお願いしてみると、案外直ぐに座ってくれる。
「な、何だか妙な事になっているようですね…。えっとまずは、そちらのフラウさんについて、お話させて下さい。」
「はい、分かりました。」
 すっかり戸惑っていたコルネリウスだが、気を取り直して、本来の目的を果たそうと、真面目な顔を作る。それに合わせて、聡とフラウも表情を切り替える。
「まず聞きたいのは、フラウさんはどうしてサトシ殿に着いてこようと思ったのですか?」
「それは…サトシ様が、血を吸っても大丈夫な方だからです。」
「血を吸っても大丈夫、ですか?」
「はい。…私は、人族を殺すのが嫌で、今まで一滴も血を吸えませんでした。そんな中、森で禁断症状になり、錯乱した状態でサトシ様の血を吸ってしまったのですが、全く平気にしておられたので、この方と一緒であれば、生きていけると思い、御一緒させて頂きました。」
 言いづらそうだが、理路整然と分かりやすい内容の理由を話す。
 吸えなかった事と、森の中に居た事の因果関係については触れていないが、コルネリウスの目的は、『フラウは安全かどうか』の判断である為、その人柄が知れればそれで十分な為、納得したように頷きながら、聡に視線を向ける。
「なるほど。フラウさんの事情は理解しました。次はサトシ殿に質問です。」
「はい。」
「サトシ殿は何故、フラウさんを街に連れてこようと考えたのですか?」
「フラウさんはあのままでは、また人を襲い、殺害してしまう可能性があったからです。それに、フラウさんは私の血を吸った後、『なんて事を…』と後悔されてたので、通常の吸血鬼とは違うなと対話したら、こちらに敵対する意思が全然無かったので、見捨てるのも後味悪いと、保護した形になります。」
「…さっきから言おうと思ってたのですが、禁断症状を吸血鬼に血を吸われて、良く生きていますね。ものの十数秒で絞りカスになると、以前聞いた事があるんですが。」
 連れてきた事情以前に、聡の異様な生命力に、コルネリウスは物申したいようだ。
「あははは…。ルドガーさんから報告があったと思いますが、私は最低でも300年生きている、なんちゃって人族ですので、多少の事では死ねないんですよ。」
 なるべく暗い印象を与えようと、目を伏せながら生き残った理由を言う。これ以上、自身の肉体の特異性に、触れてほしくないので、演技をしているのだ。
「…そ、そうなんですか。えっと、サトシ殿の考えも理解しました。ルドガーからの報告だと、万が一の時はサトシ殿が全責任を負うという事になっていますが、こちらとしては、解決と補填をして頂ければ、それで大丈夫です。」
 聡の演技を、本当の反応だと受け取ってくれたのか、コルネリウスは分かりやすく話を変えてくる。
「はい、分かりました。取り敢えずは、フラウさんをこの街に置いて、大丈夫という事でよろしいでしょうか?」
「はい、フラウさんをこの街に置く事を、許可させて頂きます。」
「ありがとうございます。」
「ありがとうございます。コルネリウス様。」
 ちゃんと言葉にして、フラウの滞在の許可を出したコルネリウスに、聡とフラウは頭を下げて礼を言う。
「いえいえ。他ならぬ、サトシ殿の頼み事ですから。では、この話は以上にして、そろそろニコラを呼んでも大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。」
「助け出された翌日から、会いたい会いたいと騒いでおりまして、目を離せば街に出ようと、身支度を始める始末でして、大変でした。…ニコラを呼んでくれ。」
 どこか疲れた表情で、コルネリウスは言う。よっぽど抑えるのが大変だったのか、虚ろな目をしており、聡は表情を引き攣らせる。
『はい、畏まりました。』
 そんなコルネリウスの指示を、ドアの向こうで受けたメイドの気配が、離れていくのを聡は見送ってから、口を開く。
「あんな目に合ったのに、お転婆は治らないのですか?」
 代官に大してするような口の利き方では無いが、その言葉は純粋に心配する気持ちから出たものなので、コルネリウスも何も言わずに、より一層疲れた表情をする。
「…お恥ずかしながら。『いきなり会いに行っても、サトシ殿に迷惑だぞ』と言えば、直ぐに大人しくなるので、比較的マシですが…。」
 目頭を押さえて、溜息をつくコルネリウスを見て、心の中で『ご愁傷様です…』と呟く聡。
 無事フラウの事が認められ、気が抜けた聡は、リラックスした状態で、ニコラの到着を待つのだった。
「お、おはようございます、コルネリウス様。その言い方だと、まるで私が少女ばっかり救ってると勘違いされてしまいます。」
 コルネリウスの屋敷の応接室に入り、開口一番とんでもないセリフが飛んで来た為、聡は苦笑しながら返す。
「まぁまだ2人だけですから、『また』と表現には、語弊がありましたね。では、お掛け下さい。」
 聡をからかって満足したのか、ソファを指し示すコルネリウス。
「はい、失礼します。」
「…。」
「えっと、君は座らないのかい?」
 聡の背後に立ち、そのままソファに座る様子の無いフラウに、コルネリウスが遠慮がちに声をかける。
「はい。私はサトシ様にお仕えする事になりましたので、お話はこのままさせて頂きます。」
「いや、話が長くなるかもしれないので、隣に座ってもらえますか?」
「…はい、畏まりました。」
 謎理論で座ろうとしないフラウに、聡がお願いしてみると、案外直ぐに座ってくれる。
「な、何だか妙な事になっているようですね…。えっとまずは、そちらのフラウさんについて、お話させて下さい。」
「はい、分かりました。」
 すっかり戸惑っていたコルネリウスだが、気を取り直して、本来の目的を果たそうと、真面目な顔を作る。それに合わせて、聡とフラウも表情を切り替える。
「まず聞きたいのは、フラウさんはどうしてサトシ殿に着いてこようと思ったのですか?」
「それは…サトシ様が、血を吸っても大丈夫な方だからです。」
「血を吸っても大丈夫、ですか?」
「はい。…私は、人族を殺すのが嫌で、今まで一滴も血を吸えませんでした。そんな中、森で禁断症状になり、錯乱した状態でサトシ様の血を吸ってしまったのですが、全く平気にしておられたので、この方と一緒であれば、生きていけると思い、御一緒させて頂きました。」
 言いづらそうだが、理路整然と分かりやすい内容の理由を話す。
 吸えなかった事と、森の中に居た事の因果関係については触れていないが、コルネリウスの目的は、『フラウは安全かどうか』の判断である為、その人柄が知れればそれで十分な為、納得したように頷きながら、聡に視線を向ける。
「なるほど。フラウさんの事情は理解しました。次はサトシ殿に質問です。」
「はい。」
「サトシ殿は何故、フラウさんを街に連れてこようと考えたのですか?」
「フラウさんはあのままでは、また人を襲い、殺害してしまう可能性があったからです。それに、フラウさんは私の血を吸った後、『なんて事を…』と後悔されてたので、通常の吸血鬼とは違うなと対話したら、こちらに敵対する意思が全然無かったので、見捨てるのも後味悪いと、保護した形になります。」
「…さっきから言おうと思ってたのですが、禁断症状を吸血鬼に血を吸われて、良く生きていますね。ものの十数秒で絞りカスになると、以前聞いた事があるんですが。」
 連れてきた事情以前に、聡の異様な生命力に、コルネリウスは物申したいようだ。
「あははは…。ルドガーさんから報告があったと思いますが、私は最低でも300年生きている、なんちゃって人族ですので、多少の事では死ねないんですよ。」
 なるべく暗い印象を与えようと、目を伏せながら生き残った理由を言う。これ以上、自身の肉体の特異性に、触れてほしくないので、演技をしているのだ。
「…そ、そうなんですか。えっと、サトシ殿の考えも理解しました。ルドガーからの報告だと、万が一の時はサトシ殿が全責任を負うという事になっていますが、こちらとしては、解決と補填をして頂ければ、それで大丈夫です。」
 聡の演技を、本当の反応だと受け取ってくれたのか、コルネリウスは分かりやすく話を変えてくる。
「はい、分かりました。取り敢えずは、フラウさんをこの街に置いて、大丈夫という事でよろしいでしょうか?」
「はい、フラウさんをこの街に置く事を、許可させて頂きます。」
「ありがとうございます。」
「ありがとうございます。コルネリウス様。」
 ちゃんと言葉にして、フラウの滞在の許可を出したコルネリウスに、聡とフラウは頭を下げて礼を言う。
「いえいえ。他ならぬ、サトシ殿の頼み事ですから。では、この話は以上にして、そろそろニコラを呼んでも大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。」
「助け出された翌日から、会いたい会いたいと騒いでおりまして、目を離せば街に出ようと、身支度を始める始末でして、大変でした。…ニコラを呼んでくれ。」
 どこか疲れた表情で、コルネリウスは言う。よっぽど抑えるのが大変だったのか、虚ろな目をしており、聡は表情を引き攣らせる。
『はい、畏まりました。』
 そんなコルネリウスの指示を、ドアの向こうで受けたメイドの気配が、離れていくのを聡は見送ってから、口を開く。
「あんな目に合ったのに、お転婆は治らないのですか?」
 代官に大してするような口の利き方では無いが、その言葉は純粋に心配する気持ちから出たものなので、コルネリウスも何も言わずに、より一層疲れた表情をする。
「…お恥ずかしながら。『いきなり会いに行っても、サトシ殿に迷惑だぞ』と言えば、直ぐに大人しくなるので、比較的マシですが…。」
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