外れスキルのお陰で最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜

血迷ったトモ

第87話 決意しました

「じゃあ俺が間に入るから、適当に会話してみる?」

『勿論するぜ!』

 聡はフラウにも同様の提案をし、快諾してくれたので、間で翻訳をする。

『自分の名前は、京極一輝です。今年で21歳になりました。趣味はアニメ…じゃなくて、えっと、小説を読む事です。彼女は居ません!』

「私はフラウと申します。先日15歳になったばかりです。」

ーえ、15歳って事は、吸血鬼の成人って事になるな…。ー

 聡は驚くが、口には出さない。
 吸血鬼は、15歳の成人を迎えた後、体質の変化により、血を吸う必要が出てくるのだ。その為、先日15歳になったばかりという事は、禁断症状になるまでは、最低でも1ヶ月はかかる為、聡の血を吸うまで、誰の血も吸わなかった可能性が高い。

ー人の血が吸えないから、異端者として追い出された?まぁそこいらの事情は後々聞くとして、今は翻訳に集中しよう…。ー

 今はまだその話題に触れるには、あまりにもフラウの事を知らな過ぎるので、聡は疑問を心の奥底に押し込む。

『じゅ、15歳か〜。まぁ異世界だし、別に問題無いよな?』

「問題大アリだドアホ。お前は合法にしか萌えなかった筈だよな?」

『い、いやまぁそうだけどさ。フラウさん可愛すぎるじゃん。』

「それは犯罪者の供述やん?」

 一輝の色々アウトな発言に、聡は思わずツッコミを入れる。

「あの…。お2人で、どういういった会話をされてるのですか?」

 そこに、すっかり置いてけぼりをくらった、フラウが戸惑った様子で聡に声をかける。

「あ、すみません。フラウさんが可愛いって言ってたんで、それを自分が翻訳するのかと、一輝に文句を言ってたんです。口説くなら、せめてこっちの言葉を覚えてからにしろって。」

「か、可愛いっ!?…ありがとうございます。」

 聡の言葉に・・・・・、フラウは顔を赤くして縮こまる。

 それを見て聡は、微妙な表情で考える。

ー可愛いって褒められるのに慣れてないのか?それとも、人とは交流が無かった?まさか、箱入りのお嬢様…若しくは幽閉…。いや、こういう思考は、取り敢えずやめとこう。ー

 考えが暗い方向へと向かっていくのを、聡は無理矢理軌道修正かける。どうせ考えても、ただの推測でしか無いのだ。

「まぁ、それは兎も角、一輝がもう少し話したそうにしてるんで、続けても良いですか?」

「は、はい、お願いします。」

 未だに顔を赤くしたフラウに、聡は思考を切り上げて話しかける。するとフラウは、顔を赤くしながらも、一輝との話を続けるようだ。

『何か顔を赤くしてたけど、大丈夫なんですか?』

「はい、大丈夫です。えっと、質問なのですが、サトシ様はどういった方なんですか?」

『サトシ様?助けたから恩義を感じて、そう呼んでる?あ、なるほどな。えっと、聡は一言で言えば、良い奴ですね。』

 何故か聡の聞くフラウの言葉を、聡が付け足しをしながら一輝に伝える。

「もう少し詳しくお聞きしたいのですが…。」

『う〜んと、聡は一見気弱で、優柔不断何だけど、腹を括ると途端に頼もしいんですよ。それに、結構優しくて温厚ですね。』

「なるほどなるほど…。教えて下さって、ありがとうございます。」

「何ですか?この辱めは?」

 間で翻訳していた聡は、恥ずかしさで顔を赤くしながら呟く。つい馬鹿真面目に翻訳してしまったが、何故一輝とフラウの会話で、聡の褒め殺しがされるなくてはならないのか。

「す、すみません。サトシ様の事を知りたかったので、ついカズキさんにお尋ねしてしまいました。」

「…いえ、単純に恥ずかしかっただけなので、大丈夫です。それよりも、他に何か聞きたい事はありますか?」

 ボソリと呟いた言葉を拾われて、謝られてしまったので、聡は慌てて話題を変える。フラウを落ち込ませる為に、この通話をさせているのでは無いのだ。

「えっと、この会話は、この機会を逃すと、もう二度と出来なかったりとかするのですか?それとも、魔力を供給すれば、何時でも会話出来るのですか?」

「はい、何時でも可能です。たまに手が離せない用事とかあれば、会話は出来ませんが。」

「そうですか。でしたら、今日のところは大丈夫です。ありがとうございました。」

 礼は一輝に向けてするフラウ。

『え、もう終わり?俺まだ自分の事全然話してないけど…。』

「終わりだ終わり。フラウさんは消耗してるから、ホントなら体を休めないといけないんだよ。」

『そ、そうなのか。分かった。じゃあ、またお話出来る機会を、楽しみにしてますって伝えといてくれ。…聡も、元気でな。』

「おう、お前もな。」

『じゃあ、また電話するからな。じゃあな。』

 そう言って一輝は切る。

ーやっぱり電話じゃ物足りないな…。現実に会って、気楽に遊びに行きたいものだ…。ー

 聡は酷く寂しそうな表情になる。それを見たフラウは、思わずといった感じに、聡に声をかける。

「…今の方は、遠くにいらっしゃるのですか?」

「…えぇ、そうです。自分にも・・・・、少し事情がありましてね。」

 聞いたフラウに、後悔を覚えさせる程、気落ちした表情になる聡。
 何と声をかけて良いか分からないが、最低でも300年は生きている聡が、何だか脆い存在に感じたフラウは、『自身が何とかせねば』と、密かに決意をするのであった。

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