外れスキルのお陰で最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜

血迷ったトモ

第59話 ドキドキです

「さ、サトシ。兵達が取り押さえた際、一切の抵抗をしなかった事に、深く感謝致します。出来れば、あの場で指示を出していた、娘の護衛隊長の首だけで納めてはいただけないでしょうか?」

 絶句から復活したコルネリウスは、その第一声からとんでもない事を言い出す。しかも、深々と頭を下げてだ。

「ちょ、コルネリウス様!?そんな事されても困ります!」

当の聡は、コルネリウスのとんでもない発言に、思わず大声を出してしまう。
 すると、何を勘違いしたのか、コルネリウスは顔を青くして、少し震えながら言う。
 
「で、では、私の首「首は要りません!!謝罪のみで結構ですから!!」…わ、分かりました。直ぐに呼びます。おい、ディルクを連れて来てくれ!」

『畏まりました。』

 肩をがっしりと掴みながら、全力で言い聞かせるつもりで、コルネリウスの目を見て言う。
 その必死さが通じたのか、何とか納得してくれたのか、コルネリウスは扉の外に向けて呼びかけると、外に居た女性 (恐らくメイド)が返事をして、そのまま気配を消す。

「それと、本来なら娘も今すぐここに来させて、謝罪をさせるべきなのだろうが、本当に申し訳ない。」

「い、いえ。まぁ一応、様子を見たいので、後日に元気な姿・・・・・・・を見せていただければ、それで大丈夫です。」

 最初から謝罪しようという気持ちは伝わってきてたのだが、先程から異様なまでに、聡にへりくだってきているため、このままだとニコラをベッドから引っ張り出して来かねないと思い、手を打つ事にする。

「…元気な姿、ですか。分かりました。ありがとうございます。」

 聡の言葉から、一瞬で意図を汲み取ってくれたコルネリウスは、ぎこちないが、笑顔を浮かべながらお礼を言ってくる。

「はい!?…そ、そうしていただければ幸いです。」

 朗らかに笑いながら、言葉を返そうとした聡だったが、その途中で、遂にエーリカの肩と腕が触れてきて、思わず変な声を出してしまう。

「サトシ殿?」

 その声を不思議に思ったコルネリウスが訝しげな表情をするが、聡は無表情を貼り付け、平坦な声で言う。

「何でもありません。」

「し、しかし今。」

「何でもありません。」

 もう一度、同じ事を言う。

「そ、そうか。」

 コルネリウスは、チラリとエーリカに視線を向けるも、何かを察したかのように、大人しく引き下がる。

 聡とエーリカの対面に腰掛ける、ルドガーとルドルフ兄弟は、驚きの表情で固まっている。まるで、有り得ないものを見たかのような表情である。

ーな、何故エーリカさんはこんな事を!?マジで、女性が考える事が分からねぇ!!ー

 聡は大混乱の真っ最中である。

ーち、近過ぎるって!てか、腕柔らか!そして、謎のいい匂いが!!ー

 300年を超える時を生きた生物(?)とは思えないほどの、慌てぶりである。それもそのはず。残念な事に、聡の女性経験は、21歳の青年並みのものであるからだ。…まぁ、=年齢なのだが。

「サトシさん。」

 カチカチに緊張してる聡に、エーリカが声をかける。聡が視線を向けると、身長差のせいで、上目遣いになっているエーリカと近距離で目があってしまい、更に緊張してしまう。

「な、何ですか?」

「…ちょっと話したい事があるんだけど、その前に、その敬語を止めてもらえるかしら?何だか距離を感じるから。」

「え?…まぁ、エーリカさんがそう言うなら、素で話すよ。」

「…むぅ。」

「な、何?」

「そのさん付けも止めない?」

「…分かったよ、エーリカ。それなら、エーリカも、俺の事をさん付けするの止めない?不平等だぞ?」

 少しの間、躊躇するも、思い切って呼び捨てにしてみる。少しドキドキするが、表には出さないように気を付ける。

「うん!分かったわ、サトシ。」

 すると、エーリカは何ら気恥しさなど感じていないかのように、あっさりと呼び捨てを実行してきて、聡は少し驚きを感じる。

ーあれ?掌で転がされたか?ま、喜んでる様だし、別に良いか…。ー

「じゃあ、本題だけど、サトシは明日、時間ある?」

「特に予定はありま…無いよ。何か用?」

 あまり考えずに言葉を返したため、つい敬語になりそうになるが、エーリカの視線を感じて、慌てて口調を崩す。

「うん。ちょっと1日、私に付き合って欲しいの。」

「…エーリカに?か、買い物の、荷物持ちか何か?」

 思わぬお誘いに、聡の心拍数は少し上がってしまう。悲しいかな、綺麗な女性に誘われれば、ドキドキしてしまうのは男のサガである。

「…うん、まぁそんなところかな?」

 聡の質問に、若干言葉を濁すエーリカ。何故か少し恥ずかしそうである。

「う〜ん。昼前は少しやりたい事があるから、午後からでも大丈夫?」

 少し思案しながら、答える。
 今日の戦闘を思い起こす聡。とてもじゃないが、人に見せられるような光景では無かった。 

 素手で、しかも、ごく短時間であの光景を引き起こせる人間になど、少なくとも聡は、お近付きにはなりたくないと思う。

 かといって、緊急時にあれ以上の手加減は難しいし、武器を使えば、更に有り得ない光景を引き起こすので、早急に何かの対策を打つ必要があると、真剣に悩む聡であった。

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