外れスキルのお陰で最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜

血迷ったトモ

第55話 泣かれました→連行されました→牢屋なう

 「はぁ…。何でこんな事に…。」

 ジメジメとした石造りの牢屋・・の中、聡は1人、深いため息をつく。

事の発端は、今から約6時間前に遡る。

 小鬼の森から走って40分後、漸く門の前に着き、聡がほっと一息安堵した時、事件は起こった。

「いや〜、着きましたよ。」

「…ぅ。」

「う?」

「…ぅ、うわぁぁぁ〜ん!!!」

「え、ちょ、え!?」

 そりゃあ、直接的な被害を受けてない聡ですら、安堵してしまう状況で、骨身に染みる程の恐怖を味わってきた少女が、安堵のあまり泣いてしまうのは、仕方無い事であろう。

 だがしかし、間の悪さと、聡の格好、そして少女のボロボロな格好が合わさり、とんでもない事態へと発展する。

「き、貴様!!そのお方・・を離せ!!」

 聡は見るからに怪しい、ローブの男。そして、少女は毛布を巻いているが、隙間から見える服はボロボロ。そして髪もボサボサで、すっかり疲労困憊した表情を浮かべている。

 その為、聡は少女を誘拐し、乱暴した不届き者。そして少女はその被害者である、という状態に見られてしまった。

「あ、いや、俺は「貴様!抵抗するか!!」…はぁ。ここに下ろしますね〜。」

 釈明しようとするが、怒り狂った表情の兵士から槍を向けられて、『あ、もうめんどくさ』となった聡は、大人しくお縄にかかることにした。

 泣き叫んでる少女の下に、アイテムボックスから更に取り出した毛布を敷き、その上にゆっくり下ろしてやる。そして、背負っていた採取袋をその隣に置いてから、手を上にあげて、少女から10メートルくらい離れる。

「そ、総員、かかれ〜!!!」

『おう!!!』

 その瞬間、リーダー格っぽい男が発した命令に従い、騒ぎを聞きつけて外に出てきた兵士たち、およそ10名が一斉に聡に飛び掛ってくる。

「ちょ!抵抗しないんで、もう少しお手柔らかに!」

「黙れ外道!!貴様にかける情けなど無いわ!!」

「あ、聞く耳もtぐぅえ!!」

 最後まで文句は言わせて貰えずに、聡は兵士たちに押し潰され、されるがまま殴られ、蹴られ、押さえ付けられなど、ありとあらゆる暴力のフルコースを味わっていた。

ーいやこれ、普通の人間なら死んでるから!幾ら俺が痛みを感じない・・・・・・・からと言っても、不快には感じるんだぞ!!ー

 数分後、漸く蹂躙が終わった頃には、聡は両手足を縛り上げられ、うつ伏せの状態で地面に転がされていた。

 ローブはボロボロで、フードも完全に取れて素顔が露になった状態だが、一切の傷は見受けられない。

「えっと、満足されましたか?」

「く、クソがっ!何で無傷なんだ!?」

「出来れば、衛士長のヴィリーさん、冒険者のルドルフさん、受付嬢のエーリカさん、ギルドマスターのルドガーさんに、聡が捕まったと伝えてくれると助かります!」

 兵士の言葉は無視して、取り敢えず助けを呼ぶ事にした聡は、それなりの声量で叫ぶ。

「うるせぇ!黙れ!さっさとコイツを、牢にぶち込んでやれ!!」

『はっ!!』

 兵士から、更にローブを胴体に回され、ずるずると引き摺られて行く聡。
 そのまま、街に入った瞬間、先程と同じ事を1回叫ぶと、兵士の1人から頭を踏みつけられる。

「黙れよ、下衆が。今すぐ首を撥ねてやろうか?」

「騒がしくして、すみません。」

 穏やかな声色で謝っておく聡。そんな聡に、チッと舌打ちをして、兵士は足を退けてからまた、引き摺って行く。

 その後、暫く引き摺られた後、乱暴に地下の牢屋にぶち込まれ、現在に至るのだった。

「う〜ん、そろそろ誰か来てくんないかな?」

 最初に兵士が聡を咎めた際、少女の事を『そのお方』と言っていたので、少女はこの街でそれなりの身分の者だと理解出来る。
 そして、そんな人物の恩人を、いつまでもこんな牢屋にぶち込んでおくなど、通常では有り得ない仕打ちであるからして…。

 と、そこに、1人の兵士が血相を変えて、聡の牢屋の前に現れる。

「さ、サトシ様!ご無事ですか!?」

「お、ヴィリーさん。はい、無事です。無傷ですよ。」

 鉄格子が嵌められた出入口に近付いて、笑いかけながら言う。

「そ、そうですか。来るのが遅れてしまい、申し訳ありませんでした。」

「いえ、私の予想した限りでは、もう少し時間がかかってもおかしくないと考えてたので、謝る必要は無いですよ?全て、あの少女から聞いたんですよね?」

「はい、そうです。この街の代官である、コルネリウス・ベルクフリート様の御息女の、ニコラ・ベルクフリート様から、全て聞かせていただきました。」

「へ〜。あの子、代官の娘さんだったんですか。」

「はい、そうなります。ニコラ様から聞いたところ、小鬼の森にて、体調2メートルはあるゴブリンに襲われていたところ、聡様がこれを殲滅、後に周囲のゴブリンも殲滅されたと。」

「えぇ、その通りです。あ、ギルドカードをどうぞ。」

 聡は、懐からギルドカードを取り出して、ヴィリーに見せる。
 そのカードの討伐履歴の欄には、新しく、

・ゴブリン:157匹
・ゴブリンキング:1匹

 と記載されており、今日作ったばかりなので、ニコラを救出した際に倒した数となっていた。

「こ、これは、ゴブリンキング!?サトシ様は、ソロでこの数を討伐されたのですか!?」

「はい、そうです。」

「こ、こうしちゃ居られないですよ!早く上に行きましょう!皆様がお待ちです!」

 鍵をガチャガチャと開け、扉を開け放ちながら焦ったように言うヴィリー。

「え?出ていいんですか?」

 意地悪く、ニヤリと笑いながらそんな事を言ってみる。

「出てきて下さい!お願いします!」

 すると、泣きそうな表情なヴィリーの叫びが、牢屋の中に響き渡るのだった。

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