外れスキルのお陰で最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜
第33話 平和的解決?(4)
 自分たちの最大戦力であるフレシエットが無力化されたアノマリー御一行が、完全に沈黙するのに、10分もかからなかった。もちろん、戦闘ではなく、聡による説得でなされたのだった。
「さてと、そろそろ帰ってもらえるかな?」
 村の門の前で正座するアノマリー達を、ぐるっと見回しながら聡は言う。
「は、はい!了解であります!」
「あ、その前にちょっと…。」
 正座しながら元気良く従うアノマリーに、聡は顔を寄せながらヒソヒソと話し始める。
「分かっているとは思うけど、夢の中での出来事は、決して口外しないように。まぁ、どうせ言ったところで、誰にも信じて貰えない上に、俺が植え付けた魔法で、地獄の業火で焼かれるかのような気分を味わいながら死ぬ羽目になるけどな。」
 いくら魔法が自由に作成出来るとはいえ、効果の実験をする時間もなかったため、この言葉はハッタリである。しかし、アノマリーにとってはクリーンヒットしたらしい。
「わ、分かりました。」
  顔面を蒼白にしながら、ブンブンと首を縦に振っている。
「それと、悪事はもう働くなよ?」
「勿論です!」
「お前の悪事について、少しでも怪しい噂が俺の耳に入ったら、な?」
 ニヤリとしつつも、声色だけは低くし、念押しをする。
「め、滅相もない!こ、これからの人生は、贖罪に充てることを誓います!」
 聡の表情と言葉に、アノマリーは顔面蒼白で脂汗をびっしりとかきながら、泣きそうな顔をしている。
ーうん、これなら問題ないかな。この表情は、本物の怯えを含んでいる気がする。知らんけど。まぁ何か不都合が生じれば、どうとでも出来るしな。ー
 一見慢心に見えるかもしれないが、実際に聡の手に掛かれば、出来ないことはほとんど無いのだ。
「そう?なら良いんだけど。」
「え?」
 もっと追及があるのかと身構えていたアノマリーは、聡のあっさりとした態度に驚いてしまう。
 普通の精神状態の者であれば、ここで『甘いヤツめ!』とか考え、ほくそ笑むところではあるが、散々教育を受けてきたアノマリーは、聡の態度から言い知れぬものを感じ取り、大人しく帰っていくのであった。
「ふぅ。ようやっと嵐が過ぎ去ったか。」
 アノマリー達の姿が見えなくなり、気が抜けた聡は深く息を吐き出す。上手くアノマリーが怯えて、大人しく従ってくれたから良いものの、少しでも頭が回っていたのなら、自分自身が帰らなかった時に、国の上層部が不審に思って調査隊か何かを派遣することは目に見えているため、自身に手を出すことはほぼ無いと分かっていたはずだった。
 そうならないように、必死に恐怖心を植え付けたのだったが、こういう事態は初めてであり、加減が分からなかったのだ。
「さて、村に戻ろうか…っ!?」
『ウォォォォォ!!!!』
 アノマリー達が消えるのを見送った聡は、村へと帰ろうと踵を返した瞬間、いきなり体全体に感じる軽い衝撃と大勢の雄叫びに驚いて固まってしまう。
「え、ちょ、え?」
 慌てて視線を少し下に向けると、金髪の頭が見え、イルマが自分に抱き着いてきたのが分かった。
「い、一体何事?てかうるさ!」
 雄叫びの主はマリウスを初めとする、村の外に出ていた村人たちであり、そのあまりの音量に耳を塞ぎたいのだが、イルマに拘束されている状態であり、腕が動かせないでいた。
「ちょっと静かにしてくれ〜!」
 唐突の出来事であり、何でこんな状況になったのか理解が追い付かない聡の悲痛なる叫びが、村の外に響くことになった。
「いや〜、まさか本当に村に傷を残すことなくアイツらを追い返すとは!一体どんな魔法を使ったんだか!」
 数分後、未だ興奮が冷めない様子のマリウスが、満面の笑みを浮かべながら聡に向かって言う。
「あ〜、なるほど。だから喜びの意味で雄叫びをあげたと。」
 マリウス達の雄叫びを、フルで聞く羽目になった聡は、疲れた表情で呟く。
「あの〜、イルマさん?そろそろ離してもらってもよろしいでしょうか?」
 そして、どこか強ばった表情で、抱き着いたままのイルマに話しかける。先程までは雄叫びの五月蝿さが勝っていたのだが、今は少し静かになったため、今度はイルマの体の感触に精神を蝕まれているのだ。
「え、あ、ごめんね!嬉しさと安堵でつい…。」
 聡が声をかけると、イルマは慌てて顔を真っ赤にして、勢い良く聡から離れる。
「…ふむ。」
 その様子を見ていたマリウスが、何やら考え込んでいる。
「?」
 マリウスの醸し出す、なんとも言えない雰囲気に首を傾げる聡だが、その思考を邪魔するかのように、声がかかる。
「おい兄さん!あんたすげぇな!あの悪名高いクソ貴族を、こんな短時間で追い返すなんて!」
「え、あ、はい。ありがとうございます?」
 いきなり興奮気味な村人に声をかけられ、困惑気味にお礼を言う聡。爆上がりのテンションに、イマイチついていけてないようだ。
「胴上げするぞ、テメェら!」
『ウォォォォォ!』
「え?え?え?な、何を?って、うわぁ!?す、ストップ!」
 困惑する中、いきなり男たちに囲まれて、そのまま担ぎ上げられてしまう聡。
「だから、一体何事〜!?」
 村の男衆に揉みくちゃにされた聡が、ようやく解放されるのは、それから30分ほど後であった。
「さてと、そろそろ帰ってもらえるかな?」
 村の門の前で正座するアノマリー達を、ぐるっと見回しながら聡は言う。
「は、はい!了解であります!」
「あ、その前にちょっと…。」
 正座しながら元気良く従うアノマリーに、聡は顔を寄せながらヒソヒソと話し始める。
「分かっているとは思うけど、夢の中での出来事は、決して口外しないように。まぁ、どうせ言ったところで、誰にも信じて貰えない上に、俺が植え付けた魔法で、地獄の業火で焼かれるかのような気分を味わいながら死ぬ羽目になるけどな。」
 いくら魔法が自由に作成出来るとはいえ、効果の実験をする時間もなかったため、この言葉はハッタリである。しかし、アノマリーにとってはクリーンヒットしたらしい。
「わ、分かりました。」
  顔面を蒼白にしながら、ブンブンと首を縦に振っている。
「それと、悪事はもう働くなよ?」
「勿論です!」
「お前の悪事について、少しでも怪しい噂が俺の耳に入ったら、な?」
 ニヤリとしつつも、声色だけは低くし、念押しをする。
「め、滅相もない!こ、これからの人生は、贖罪に充てることを誓います!」
 聡の表情と言葉に、アノマリーは顔面蒼白で脂汗をびっしりとかきながら、泣きそうな顔をしている。
ーうん、これなら問題ないかな。この表情は、本物の怯えを含んでいる気がする。知らんけど。まぁ何か不都合が生じれば、どうとでも出来るしな。ー
 一見慢心に見えるかもしれないが、実際に聡の手に掛かれば、出来ないことはほとんど無いのだ。
「そう?なら良いんだけど。」
「え?」
 もっと追及があるのかと身構えていたアノマリーは、聡のあっさりとした態度に驚いてしまう。
 普通の精神状態の者であれば、ここで『甘いヤツめ!』とか考え、ほくそ笑むところではあるが、散々教育を受けてきたアノマリーは、聡の態度から言い知れぬものを感じ取り、大人しく帰っていくのであった。
「ふぅ。ようやっと嵐が過ぎ去ったか。」
 アノマリー達の姿が見えなくなり、気が抜けた聡は深く息を吐き出す。上手くアノマリーが怯えて、大人しく従ってくれたから良いものの、少しでも頭が回っていたのなら、自分自身が帰らなかった時に、国の上層部が不審に思って調査隊か何かを派遣することは目に見えているため、自身に手を出すことはほぼ無いと分かっていたはずだった。
 そうならないように、必死に恐怖心を植え付けたのだったが、こういう事態は初めてであり、加減が分からなかったのだ。
「さて、村に戻ろうか…っ!?」
『ウォォォォォ!!!!』
 アノマリー達が消えるのを見送った聡は、村へと帰ろうと踵を返した瞬間、いきなり体全体に感じる軽い衝撃と大勢の雄叫びに驚いて固まってしまう。
「え、ちょ、え?」
 慌てて視線を少し下に向けると、金髪の頭が見え、イルマが自分に抱き着いてきたのが分かった。
「い、一体何事?てかうるさ!」
 雄叫びの主はマリウスを初めとする、村の外に出ていた村人たちであり、そのあまりの音量に耳を塞ぎたいのだが、イルマに拘束されている状態であり、腕が動かせないでいた。
「ちょっと静かにしてくれ〜!」
 唐突の出来事であり、何でこんな状況になったのか理解が追い付かない聡の悲痛なる叫びが、村の外に響くことになった。
「いや〜、まさか本当に村に傷を残すことなくアイツらを追い返すとは!一体どんな魔法を使ったんだか!」
 数分後、未だ興奮が冷めない様子のマリウスが、満面の笑みを浮かべながら聡に向かって言う。
「あ〜、なるほど。だから喜びの意味で雄叫びをあげたと。」
 マリウス達の雄叫びを、フルで聞く羽目になった聡は、疲れた表情で呟く。
「あの〜、イルマさん?そろそろ離してもらってもよろしいでしょうか?」
 そして、どこか強ばった表情で、抱き着いたままのイルマに話しかける。先程までは雄叫びの五月蝿さが勝っていたのだが、今は少し静かになったため、今度はイルマの体の感触に精神を蝕まれているのだ。
「え、あ、ごめんね!嬉しさと安堵でつい…。」
 聡が声をかけると、イルマは慌てて顔を真っ赤にして、勢い良く聡から離れる。
「…ふむ。」
 その様子を見ていたマリウスが、何やら考え込んでいる。
「?」
 マリウスの醸し出す、なんとも言えない雰囲気に首を傾げる聡だが、その思考を邪魔するかのように、声がかかる。
「おい兄さん!あんたすげぇな!あの悪名高いクソ貴族を、こんな短時間で追い返すなんて!」
「え、あ、はい。ありがとうございます?」
 いきなり興奮気味な村人に声をかけられ、困惑気味にお礼を言う聡。爆上がりのテンションに、イマイチついていけてないようだ。
「胴上げするぞ、テメェら!」
『ウォォォォォ!』
「え?え?え?な、何を?って、うわぁ!?す、ストップ!」
 困惑する中、いきなり男たちに囲まれて、そのまま担ぎ上げられてしまう聡。
「だから、一体何事〜!?」
 村の男衆に揉みくちゃにされた聡が、ようやく解放されるのは、それから30分ほど後であった。
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