植物人間

透華

ノブの音

「そんなに無愛想ですか?」
俺は袋を広げながら、水瀬さんに話しかけた。
水瀬さんは楽しげに笑うと大きく頷いた。
「それを無愛想と言わないで何になるんだい?当時の話を聞いたとはいえ、表情が作れなくなっただけでしょう?言葉がもともと愛想ないからねぇ」
俺はその言葉を聞きながら、袋に箒の残骸を入れた。
そして、袋の口をキュッと縛る。
「感情が入ってないんだよね、要はさ」
「そうですか」
そもそも、言葉に感情を入れるってどうやるんだったか?
それさえも分からない俺は事故に遭う前は感情が入っていたかも分からなくなってしまった。
俺は水瀬さんから箒の残骸が入った袋を受け取ると裏口に向かった。
ノブに手を掛けようとするとそれよりも早くノブがガチャリと音を立てて回った。

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