植物人間

透華

靴の音

あれから3日。
俺は社会復帰のためにカフェのバイトを始めた。
事件当時は高校生だった俺も、今では立派に成人した、らしい…。
実感がないがそこは仕方ない。
店長にも自分がどんな境遇かは一応話した。
断られるかとも思ったが、どうやらここ「ぷらんと」の店長、水瀬さんは心が抜群に広いみたいだ。
今は初日の昼下がり。
俺は店の前をほうきで掃いていた。
今は夏だから、あまり必要無い気がするのだが、水瀬さん曰く、「店の前からお客様は見ている」だそうだ。
確かに、あんまり汚かったらそりゃ入ろうとはしない。
すると、道の向こうからカコカコと忙しく耳障りな音を立てながら、化粧の濃いおばさんが歩いてきた。
遠くにいるはずなのに、やたら良く見える。
最近は目までおかしくなったのだろうか。
耳障りおばさんはほうきを持って突っ立ってる俺の前まで歩いてくると、ジロリと睨みつけた。
睨まれる覚えなんてないんだが…。
でも、ここで立ち止まるということはお客かもしれない。
俺は無表情だった顔に無理矢理、笑みを浮かべて、にこりと笑いかけた。


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