世界にたった一人だけの職業

Mei

蓮斗・秀治 VS ザティック盗賊団 ー8

(ふぅ……。危なかった……)

 蓮斗は哄笑する盗賊の男を傍目にホッと息をついた。

 蓮斗は盗賊の男に刺されていない・・・・・・・。あれは蓮斗が作り出した幻影・・のようなものだ。

 蓮斗は、直前まで盗賊の男の気配に気づかず、刺される直前に気づいたのだ。それを幻影を実体化する魔法、"投写プロジェクション"によって作り出し、何とか回避した。

(……油断している今がチャンスだな……)

 盗賊達のほとんどが油断しており、蓮斗が気配を消していることに全く気づいていない。

 蓮斗は哄笑している男に一直線に向かっていく。右手には勿論短剣を。蓮斗はそのまま盗賊の男の頸動脈を切り裂いた。

「ーーーがああああああぁぁぁ!!」

 哄笑していた盗賊の男が一転、悲痛な叫び声をあげた。

「な、なんだ……!?」

「いっ……一体何が……」

 盗賊達は突然の出来事にただただ驚く事しか出来なかった。

「ぐっっっっ…………」

 蓮斗を先程刺した盗賊の男ーーレイブンは、呻き声をあげるとそのまま地面に倒れ伏した。

「頭! しっかりしてください!!」

「お頭!!」

 盗賊達は頭だったレイブンが倒れたことにより、更に混乱状態になる。

「な、何故お前が……生きている……!?」

 そんな中、蓮斗の気配遮断インディケイションカットを見破った盗賊の男が一人。その声に釣られて盗賊達が一斉に蓮斗の方を向いた。蓮斗は早々にばれたことに溜め息をつき、ばれたのならば仕方がないと気配遮断インディケイションカットを解除し、姿を現した。

「蓮斗! 生きてたんだな……!!」

 秀治は蓮斗が生きていたことに歓喜の声をあげた。

「……悪いな、秀治。心配をかけた」

 蓮斗は秀治に内心不安にさせたことを詫びた。秀治と蓮斗がそんなやり取りをしていると。

「くっ……!! き、きさまああああぁぁぁ!!」

 蓮斗の相手をしていた盗賊の一人が叫びながら短剣を右手に向かってくる。蓮斗はそれをいなし、鳩尾を短剣の柄で打ち付けて気絶させた。

 それを皮切りに次々と襲いかかる盗賊達。だが、誰一人として蓮斗に短剣を届かせた者はいなかった。

「があああぁぁぁ!!」

 次々と悲鳴をあげる盗賊達。蓮斗は淡々と短剣をいなしては、鳩尾を打ち付けるという攻撃を続ける。

 そうしていくうちに、残った盗賊は一人だけになった。秀治の方も、二人の盗賊をどうにか倒し、蓮斗の元へ。

 これで二対一。数的にも蓮斗達が優位に立った。戦力的には既に盗賊達を上回っている。最早盗賊達に勝ち目はないのだが……。その盗賊はニヤリ……と気味の悪い笑みを浮かべていた。

「……おい、お前らに勝ち目はない。大人しく投降しろ」

 蓮斗はそんな盗賊に投降を勧告する。だが、その盗賊はそれに答えることもなく不気味な笑いを浮かべ続けている。

 蓮斗は嫌な予感を感じながらも盗賊が投降に応じなかった為、盗賊に向かって一直線に駆け出すーーーが。

「…………我ら、誇り高き盗賊団なり!!」

 盗賊の男がそう言うと、頭上に大きな魔法陣が浮かび上がりーーー。





ゴゴゴゴゴゴ…………!





 空間内全体が激しく揺れ始めた。やがて、天井に亀裂が入り始める。盗賊の男はその光景に狂ったように嗤い始める。

「くっ…………!!」

 蓮斗は天井から落ちてきた破片をすんでの所で回避する。

(これは手段を選んでる場合じゃない…………!!)

 蓮斗は子供達を助けた時と同じことにならないようにと考えたが、今の状況ではそんな事も言ってられない。

「"強制収納テイクストレイジ"!!」

 蓮斗がそう唱えると、突如空間にブラックホールもどきが出現。それは、捕まっている人達を腕輪、足枷、その他諸ともに力強く吸い込んでいく。途中で悲鳴らしきものが聞こえたが、構っている暇はない。

「秀治!! 俺に捕まって!!」

「分かった!」

 秀治はそう言うと、俺の腕をしっかりと掴む。

転移テレポート!!」

 すると、蓮斗達の足元に白い魔法陣が現れる。その魔法陣から淡い光が放たれた。それと同時に一気に音をたてて崩れる鉱山。やがて淡い光が収まりーーー。

 そこには、崩れた鉱山の破片だけが一面を覆い尽くすように残っていた。


 
 

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