世界にたった一人だけの職業

Mei

蓮斗・秀治 VS ザティック盗賊団 ー6

「……よし、これで全員だ」

 秀治は最後の人間族の少年の腕輪と足枷を外して、そう呟く。

「お疲れ、秀治」

 蓮斗はそんな秀治に労う言葉を掛けた。

「……さっきはごめんなさい。あんた達を盗賊達の仲間だと勘違いしてて……」

 エルフの少女は先程までの態度から一転して、申し訳なさそうな顔でそう言った。

「いやいや、仕方ないよ」

 蓮斗はそう言って軽く笑ってみせる。実際、子供達は精神的に追い詰められていたのだ。勘違いしたとしても仕方がないだろうと蓮斗は思う。人間(?)誰しも追い詰められれば余裕も無くなるというもの。いちいち気にしていてはキリがないのだ。

「で、でも……!!」

「それよりも、まずはここから出たくないか?」

 何か言い淀むエルフの少女の言葉を遮り、そう尋ねる蓮斗。こんなところにいつまでも居られない。時間も結構限られてきている。いつ他の盗賊が異常を察知してここに来るかもわからない。出来るだけ急ぐ必要がある。

 エルフの少女は暫く顔を俯かせ、何か考えていたようだったがやがて顔を上げ。

「ーーー出たい」

 決意のこもった眼差しでそう言った。

「よし、そうと決まればこれに入ってくれ」

 蓮斗はそう言うと、再び"万能収納インベントリ"を出現させる。突如空間にブラックホールのようなものが再び出現したことで、小さく悲鳴をあげて戦く子供達。だが、エルフの少女は覚悟を決めたようで。

「ーーみんな、行くわよ」

 そう言うと、エルフの少女はブラックホールのようなものを通り、"万能収納インベントリ"の中へと入っていった。子供達は息を飲んでその様子を見守る。

 暫くして、エルフの少女がブラックホールのようなものから顔を出した。

「みんな! この中凄いわよ! 部屋がちゃんとある!」

 エルフの少女は興奮した声音でそう言った。

 それを聞いた子供達は一同に目を輝かせた。エルフの少女が再び"万能収納インベントリ"に入ると、その後ろに子供達がぞろぞろと続き、中に入る。"万能収納インベントリ"に入った子供達はすげー、とかどうなってるの? といった感嘆の声を漏らしていた。


「全員入ったかー? 閉じるぞー?」

 蓮斗がそう問いかけると"万能収納インベントリ"の中から元気な声ではーい、と返事が聞こえた。蓮斗はそれを聞くと、"万能収納インベントリ"を閉じる。

「よし、行くぞ。秀治」

「そうだな」

 蓮斗と秀治は互いに頷き合うと、その場から立ち去っていった。


☆★☆★☆


 蓮斗と秀治は暫く薄暗い道を歩く。先程通った道だ。先程と違うのは、盗賊がいきなり襲ってくることはないということ。まあ、それもこれも蓮斗と秀治がここの道を来る際に、影に潜む盗賊を撃破していったからに他ならないのだが。

 もう暫く歩く蓮斗と秀治。すると、先程の分かれ道まで戻ってきた。今度は先程の道とは逆の右の道へ進む蓮斗と秀治。と、その前に。

「秀治。もう一度あれを頼めるか?」

「……悪い。魔力が足りなくて出来ない」

 秀治は悔しそうな顔でそう答える。

「秀治、そんな落ち込まなくても大丈夫だよ。要は、秀治の魔力を増やせば良いだけだろ?」

 蓮斗は何て事はないといった感じでそう言った。蓮斗はここに来て、あまり魔法を使っていないせいか、魔力が大分残っている。それを秀治に渡せばいい・・・・・のだ。

「"魔力譲渡トランスオーバー"」

 蓮斗がそう唱えると同時に、秀治は「何か」が流れ込んでくるのを感じた。

「おお……! これが魔力か……!?」

 秀治はその不思議な感覚に驚きの声を漏らす。暫くすると、不思議な感覚がなくなり、身体中から力がみなぎってくるのを感じた。

「秀治、これで足りるか?」

「ありがとう、蓮斗。これで足りる」

 秀治はそう言うと、詠唱を始める。

「……光の精霊よ……我の魔力を代価とし、おのが視覚を共有せよ……"見通す目スルービジョン"」

 秀治がそう唱えると、光の妖精が秀治の手元に現れる。

「よし、行け」

 秀治がそう命じると、光の妖精は右の道の方へ飛んでいった。秀治は最大限の集中力を持って盗賊達が潜んでいないかを確認する。

 暫くすると、光の妖精が秀治の手元に戻り、光の粒子となって霧散した。

「……どうだった?」

「…………道中に少し盗賊が潜んでいた。だが……奇妙な事に、一番奥の方には捕まっている人達以外誰も居なかった」

 秀治は難しそうな顔でそう言った。

「ってことは……"気配察知インディケイションサーチ"」

 蓮斗が奥の方を中心に"気配察知インディケイションサーチ"を発動させると、複数人の気配が引っ掛かった。

「秀治。この先に盗賊かは分からないけどいるよ」

「そうか……。行くぞ、蓮斗」

 秀治は何か決意の籠った眼差しでそう言った。

「分かった」

 蓮斗は秀治の言葉に頷く。そのまま二人は、右の道の方へと進んで行った。

 


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