世界にたった一人だけの職業

Mei

圧倒的不利。そして、形成逆転へー。ー3

 「おい、秀治。その「偽装魔法」ってなんだ?」
「「偽装魔法」っていうのは、魔法を偽装すること。つまり、相手に別の魔法だと認識させる魔法のことだ。……それが王宮の外か、あるいは中に施されている可能性が高い。まずはその「偽装魔法」を解かないことにはラーニャ石も見つからない」
 秀治が詳しく「偽装魔法」について説明した。二人はその説明で大体わかったのか、首を縦に振って頷いた。
「……偽装魔法の解除ってどうやるの?」
「恐らくだが、術式を分解するかもしくは破壊すれば解除できると思う。だけど、ラーニャ石によって耐性が付与されていたら術式の破壊は厳しいと思う。術式の分解の方は耐性を付与されていたとしても問題はない」
「どうして?」
川崎が不思議そうに小首を傾げる。かくいう俺も少し話が混乱し始めている。
「 術式の分解には魔法を使わなくても大丈夫だからだ。術式の分解にはやり方が二パターンあって、一つ目が分解したい術式に対して真逆の術式を使って組み上げた魔法を使うこと。二つ目は、自らの手で分解することだ。魔法を使って術式の分解は難しいかもしれないが、術式を浮かび上がらせる程度なら問題なく可能だと思う。そこから、解析魔法を使って解析して、後は魔法を使わず自分で術式の分解を行う。圧倒的に前者の方が楽で、後者は前者に比べて何倍も時間を必要とするが……ここまではわかったか?」
 蓮斗と川崎は、全て理解できたわけではなかったが、大体は把握できたので首を縦に振って頷く。
「で、作戦の方だが……これでいこうと思う」
秀治が作戦の概要を蓮斗と川崎の二人に伝える。所々分からないところを詳細に説明したりした。
「うん。それでいこう」
「私も異議なし」
 秀治、俺、川崎の三人はこれから始まる作戦に緊張感が高まるのだった。


ー翌日 明朝の王宮ー
(……あいつらはどこにいったのよっ……! あの駒どもに探しに行かせたけど一向に見つかる気配はないし……!)
 現在、レミリーは王宮にて親指の爪をかじり、苛立ちを露にし、血眼になりながら髪はぼさぼさのまま王宮内の通路を行ったり来たりしながら今か今かと川崎、蓮斗、秀治の発見を待っていた。その姿には、以前勇者の高峰やクラスメイト達に見せた柔和で高貴で礼儀正しい王女然たるものは微塵もなかった。レミリーは昨日の夜から一睡もせずにあの三人の行方を追っている。レミリーは魔法「共有」によって、「魅了」と「支配」の魔法によってコントロールされている高峰達やクラスメイト達と感覚を共有しているため、王宮を出ずともあの三人を探すことができるのだ。だが、レミリーにとって「魅了」と「支配」の魔法にかからない輩がいるのは想定外だったし、ましてやそれが三人もいたなんていうのはもっての他だ。そして、今こうしてあいつらの行方を追うこともレミリーからしたら想定外の事だったのだ。
 レミリーは昨夜、蓮斗が会話の内容を盗み聞くであろうことを予測し話に真実と嘘を交えて話した。そうすることで話に信憑性を持たせるためだ。そして、地下室に蓮斗を誘きだし、処分する算段だった。だが、想定外に想定外が積み重なった結果、今のこの状況を作り出してしまった。
(……今までずっと積み上げてきた計画がここで潰れるのは絶対に避けたい……。国王陛下のためにも絶対にあいつらを捕らえて殺さなければ……!)
 レミリーは、国王陛下に命を助けられた。いわば国王陛下はレミリーにとっての恩人でもあった。その恩人たる国王陛下に恩を仇で返す訳にはいかなかった。
(どこだ……どこにいる……!)
 レミリーが必死に蓮斗、川崎、秀治の居場所を特定しようと魔法「共有」を使い全力で探し続けていた、その刹那ー。
ゴゴゴゴゴゴゴ……
重低音の大きな音と大きい揺れが王宮全体に響き渡った。それを感じたレミリーは、遂には冷静さを失い取り乱し始めた。
(なぜ……!私の偽装魔法は国で最高と唄われているはずなのに……!くっ……。失敗は許されない!!国王陛下のためにたとえこの身を捧げてでも……!)
 レミリーは、王宮中に待機させていた兵士達約3000人と王宮外にいる兵士達約100人を総動員し、王宮の外にいるであろう敵を取り囲ませる。レミリーも急いで王宮の外へと向かう。すると、そこにいたのは……。
 レミリーが探していた"あいつら"、集まり蓮斗、川崎、秀治の3人だった。蓮斗達の目の前には巨大なラーニャ石が浮遊しており、地面にはぽっかりと大きな穴が空いていた。つまり、偽装魔法は解かれたということ。
 レミリーは歯噛みしながら兵士達に取り囲まれているであろう蓮斗達を兵士達の後ろ越しに睥睨する。
(……っ。なぜ外にいる兵士達があいつらの存在に気づかなかった……!? 私の魔法「共有」で全員の情報や五感を共有しているはずなのに……! だがまあいい。ここで奴らを処分すれば全てが終わる。計画も順調に進むようになる……!ふふふ……。あいつらが自分たちから出てきてくれて好都合だわ……! ここであいつらを殺す!!!)
 あの駒どもにも一応指示を出した。これであいつらは終わりだ……!
「全軍に命令する!!そこの不届き者達を処分しなさい!!」
「「「「「ウォーーーーーーーーー!!!」」」」」
兵士達は発狂したように声を上げ、蓮斗達に一斉に襲いかかった。
 
 
 

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コメント

  • ノベルバユーザー276254

    王女、自分の父親のことをお父さんとかで呼ばないで、国王陛下と言うんだ〜

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