ゲームと良く似た異世界に来たんだけど、取り敢えずバグで強くなってみた

九九 零

さて、闇ギルドに潜入だ!



「本当にごめんなさいっ!」

「良いって。そう何度も謝られても困るよ」

「で、でも…」

「俺、シツコイのは好きじゃないんだけど?」

「はい…」

ってな具合でマジックバックの件も収まり、無事に倒した魔物の死体を解体せずに依頼分だけ渡し終えた俺達は、まず宿屋に戻った。

「リーリ?」

「なによ」

リーリはギルドでの一件以来ずっと不貞腐れている。

一件と言うのは、俺を今日一日守るってくれるってやつだ。それを即座に断ったものだから、リーリは今すごく機嫌が悪い。

でも、本当に必要ないんだ。
逆に、居られると困る。

人には見せたくない事をするんだから当然だ。

「あの申し出は嬉しかったんだけど、今日は俺一人にさせてくれないかな?」

「それじゃあ、もしあの場で話を聞いてた冒険者が襲って来たらどうするのよ」

「それは…まぁ、大丈夫。としか言いようがないかな?」

「どこからそんな自身が出てくるの?頭おかしいんじゃないの?アンタ、ランクFでしょ?あそこに居たのはアンタよりも上のランクのランクDやCばかりよ。アンタ一人で敵うはずないじゃない」

ランクと言うのは冒険者の中での格付けみたいなもの。

ランクFが最低で、ランクAが最高。
上限突破して化け物扱いされるのがSランクって説明はアリサさんから受けている。

で、俺達…俺とリョウはランクFなわけだけど…。

「それはアレだよ。俺には転移魔法があるし、いざとなったら使い捨ての転移用スクロールも持ってるからね」

それに、俺達は規格外な力を持っている。
その力を過信してるわけじゃないし、扱いきれてないのもあるけれど、圧倒的な腕力にモノを言わせたら、ある程度の事は解決できるはずだ。

「スクロールって…アンタ、見た目によらず金持ちなのね」

見た目によらずって…。
神父服を着てるんだか、神父にしか見えないでしょ…。

「否定はしない。でも、そんなに言うほど持ってないよ?」

「ふーん」

めっちゃ怪しんでる。

そんなに俺の言葉って信憑性が薄いのかな?
ちょっと傷付くんだけど…。

「兎に角、今日は一人にして欲しい。リーリは…ミミルを冒険者登録しに連れて行ってくれないかな?」

「ミミル?どうして?」

「一人で俺達を追って村を出ちゃったから、当分は面倒見ようかと思ってさ。で、身分が保証できて、他の街でも簡単に入れる冒険者にしておくのが良いかと思ったんだ」

今しがた思い付いたんだけどね。

「ふーん」

また疑われた…っ。

本当に俺の言葉の信憑性って、どうなってるの?

「まぁ、良いわ。それぐらいならお安い御用よ」

「うん。それじゃあ、お願いね」

そうしてリーリと別れた俺は、ゆったりとした足取りで自室へと向かう。

自室に戻ったのは、別に寝るためとかじゃない。
いや、寝たい欲求はあるんだけど、その前に片付けなきゃいけない案件を思い出した。

部屋に入ると、案の定と言うべきか、少し予想外と言うべきか、彼女ーーノワールが部屋の隅で膝を抱えて待っていた。

まるで、虐められっ子みたいな暗い子になっちゃってる。
お父さん、そんな風に育てた覚えはないよ?

「やぁ、おはよ」

「…は、よ」

相変わらず、言葉遣いは下手くそなようだ。
一人にしてた間、何をしていたかは知らないけど、喋るのは練習してないのかな?

ちなみに、彼女は昨夜遅くに俺の寝込みを襲ったが失敗。その後、闇ギルドで殺されてしまった女の子だ。

見た目的に歳は…凄く若い。
小学生…は言い過ぎか。中学生ぐらいかな?

まぁ、どっちでも良いけど。

彼女が喋れるようになったのはつい昨日の話。それまで、どれほどの間喋れなかったのかは知らないけど、俺との会話だけでも喋ろうと努力する姿は応援したくなる。

「取り敢えず、改めて自己紹介をしようか。俺は神父のような何かをしてる魔法使いのココハ・ドコ。間違えないで欲しいんだけど、ココハ・ドコってのは名前ね。場所を聞いてるんじゃないから」

まるでジョークのような自己紹介。
十人が聴けば、十人が『冗談だろ』って言って笑うような自己紹介だ。

「…ノワ…ルは、ノワ…ル」

うん。ちゃんと自己紹介は出来るようだね。

ヨシヨシと頭を撫でて、ついでに猫耳の感触を堪能しながら気力を補充する。

「じゃあ、ノワール。早速だけど、俺は今から闇ギルドに行ってくる。その前に、これを渡しておくよ」

まだノワールを完全に信用した訳じゃないけれど、バグポーチを贈呈。
中には、多少の金品と武器と防具を用意しておいた。

これで、俺が数日帰ってこなかった場合でも大丈夫だろう。
万が一にもないとは思うけれど、用心するに越した事はないからね。

そんな俺の想いとは裏腹に、ノワールは一瞬の迷ってから不安を瞳に込めて見上げてきた。

「あ、ぶな…い」

どうやら、俺を心配してくれているようだ。

それもそうか。
悪の組織に単独で乗り込むって言ってるんだもんね。その脅威はノワール本人なら良く知っているはずだ。
だからこそ、単独で乗り込むべきでないと、ノワールはそう言いたい訳だ。

まぁ、元関係者なら悪の組織の内情を知ってて当然で、その危険度も分かっているのも当然だ。

でもーー。

「大丈夫。俺は勝てない戦いはしないし、危ない橋も渡らない。できる確信があるから、やるんだ。それに、本当に危なくなったら逃げるし」

「………」

暫く、ノワールと見つめ合った後、彼女は諦めたのか、不安気な瞳を浮かべながら顔を伏せた。

「ノワ、ル…ついて、く…」

そう言ってバグポーチを持つ俺の手を掴んできた。めちゃくちゃ心配されてるようだ。

なんて言うか…娘が出来たみたいな感情が湧いて来る。

「ノワ…ル…まも、る」

決意の篭った眼差しで見上げて来るノワール。
なんだか、本当の猫を見ているような気分になってくる。

「うん。ありがとうね」

意図せず俺の手が勝手に彼女の頭をヨシヨシとペットを愛でるかのように撫でてしまう。

時折当たる猫耳がフサフサで…なんとも言えない手触り。
頭を撫でるとノワールは嫌がるどころか、目を細めて気持ち良さげにしている。

あぁ、モフりたい…。

けど俺の意思がそれを許さない。相手は人間だから、自分の感情を吐露するのを深層意識が拒絶している。

軽く首を振るう事によって、猫耳に釘付けになる視線と共に邪念を振り払い、ノワールと視線を合わせる。

「でも、ダメ。街で買い物とか好きな事をして待ってて。これは俺一人でやるから」

ノワールは拒絶された事でガーンッと効果音が鳴りそうな瞳を浮かべた後、渋々と引き下がった。
聞き分けが良いのは、大変よろしい。

リョウなんて聞く耳すら持ってくれないんだから、凄く良い子だ。

「取り敢えず、このポーチの中にお金とか入れといたから」

はい。っと、バグポーチを押しつけるように持たせて、彼女に背を向ける。

「あ、そうそう。ノワールも冒険者登録しといて。分からなかったら、後で帰った時に一緒に行こうね?」

コクリとノワールが頷いたのを横目で確認してから、俺は『転移』を使って移動した。


ーーー


〜闇ギルド組員視点〜


俺はしがない盗賊だった。

なんの取り柄もなく、小さい頃からただ盗む事で食い扶持を稼いでいた。

そして、俺は気付けば闇ギルドに加入していた。

闇ギルドは、強いて言うなら何でも有りのギルドだ。

冒険者ギルドが魔物を退治するなら、俺達は人間を退治する。

相手が悪人だろうが善人だろうが関係ない。

ただ、依頼を受けて、それを熟(こな)すだけだ。

依頼の内容は色々あって、最近一番多いのが拉致。
その他には、殺人。強盗。放火。スリ。人間関係などの調査。強姦や恐喝や営業妨害なんてのもある。

そんな闇ギルド内で近頃変な噂が流れている。

「神父の化物とぉ剣士の化物だぁとぉ?寝言は寝て言えょぉ」

俺の対面に座る男ーー口が裂け、片目を失ってしまっている俺の友人のガルガフが俺の話を聞いて笑った。

「本当だって。まぁ昨日お前は居なかったから知らないかもしれないけどよ。奴隷商のバルバッスが緊急通信で大金を払うから助けろって俺達を呼んで、緊急依頼が発令されたんだ」

「おぉぅ。そりゃぁ、良い金になったぁだろうぅ?」

「最後まで聞けよ。問題はその後だ。そのバルバッスが相手にしていたのが、例の神父と剣士だったんだよ」

「たかが二人だぁなぁ。あぁ、勿体ねぇなぁ」

コイツは真実を知らないから、そうやって簡単に言えるんだ。

だが、俺は真実を知ってる。

この目で見たんだからな…。

「神父は俺達が矢を射ろうが剣を振ろうが魔法を放とうが、全ての攻撃を避けやがった」

「あぁあ?背中からやらねぇのかぁ?」

「やった奴もいた。が、無理だった。ソイツは一番重症だ」

「ああぁ?」

ガルガフが首をゴキンッと傾けた。
なぜだか分かっていなさそうな顔だ。

そりゃ分かるはずもねぇ。もう一人の真の化物の話をしてないからな。

「もう一人の剣士の化物。そいつにヤられたんだ」

「殺されたのかぁ?」

「いいや、違う。殴り飛ばされたんだ」

「…?」

ガルガフの首が反対側にゴキンッと傾いた。

そりゃ、俺だってこんな説明をされても理解できねぇよ。
でも、実際にこの目で見た。

剣士の化物が剣をハンマーのように振り回す姿を。
そして、その得物を当てられた奴は、あっと言う間に弾き飛ばされる。

あの化物の側は、まさに地獄絵図だった。

途中からは誰も近寄りたがらなかった程だ。でも、頭のおかしい奴は突っ込んで行って玉砕していた。

「勝手に思い耽るなよなぁ」

「ああ、悪りぃ悪りぃ。一応、その化物と戦った奴らは全員生きてるぞ。ただ、半数以上は自信を喪失しちまってるか、身体を動かせないようになって寝込んじまってるな」

「おぉぉぅ。そりゃぁ、すげぇなぁ」

大袈裟に驚いてみせるガルガフ。

「信じてないだろ?」

「当たり前だろぉ。おっ、もしかしてぇアレかぁ?ソイツに噂を広めるようにぃ大金でも積まれたかぁ?」

「違ぇよ。本当なんだって」

「じゃあよぉ、さっきからそこにいる神父は化物なのかぁ?」

神父?

ガルガフが俺の隣の席を指差すものだから、視線を隣へ移すとーー。

「うひっ!?」

ーーガタンッ!

驚きすぎて思わず席を立ってしまった。

「どうしたぁ?まさか、本当にアイツなのかぁ?」

さすが闇ギルドに所属している事はあり、ここが闇ギルド内だとしても、即座に短剣を取り出して僅かに身構えたガルガフ。

「い、いや…バカな奴がソイツの真似をしてるだけだろ。まさか、こんな所に居るはずはないもんな」

そう。居るはずがないんだ。

なにせ、ここは闇ギルド。迷路のように入り組んだ地下道と幾重にも張り巡らされた罠と幾つもある隠し扉を通らなければ辿り着けない場所だ。

毎年、罠の解除を忘れたり、迷路で迷ったり、間違った隠し扉に入って死人が出ているほどだ。

だからこそ、ここはそう簡単に辿り着ける場所じゃない。例え、どれだけ避けるのが上手くても、どれだけ運が良くても、絶対に辿り着けない。

なのに…なぜだ。
冷や汗が止まらない。

椅子に座り直そうと思っても、膝が笑って言う事を聞かない。

「んーっ。闇ギルドの癖して、ここの紅茶は美味しいね〜。癖になりそう。ナハハー」

ヘラヘラと薄気味悪い笑みを浮かべる神父。

「っにしても、罠の量凄かったなぁ。スキル使って全部避けたのに、どうして発動するのやら…。もしかして、俺って罠に嫌われてる?うっはーっ。悲しすぎるなぁ〜」

呑気に独り言を呟き、嗤う神父。
それがまた、とても不気味に感じる。

「コイツ…コイツだ…ガルガフッ!にげ…」

「おぉうっ!!」

逃げろ。そう叫ぼうとしたが、ガルガフは飛び出して行ってしまった。

いや、ガルガフだけじゃない。他の奴等も一斉に俺の声が引き金となった神父目掛けて飛び出した。

俺には、この後の展開が易々と読めた。
全て避けられた挙句に、剣士の化物が現れて全員を殴り飛ばすんだ。

そうとしか思えなかった。

でも、俺の予想は斜め上を行く形で裏切られた。

ーーキィィィンッ。

それは、どこから響いたのか。

耳に張り付くような甲高い金属音が、いやに間延びして部屋中に響いた。

そして、俺の眼前に一本の剣…だったモノが突き刺さった。
剣の矛先。それが、爪先ギリギリにグサっと突き刺さった。

思わず後退りし、尻餅をつく。

そして、その光景を見てしまった。

突撃した全員の刃物による攻撃。
鎧や盾などで防がなければ切り裂かれるし、中には刃先に毒を塗りたぐっている者もいる。当たれば即死。あるいは麻痺して動けなる。そんな類のものだ。

だが、ソイツは全てをーー受けとめた。

逃げる事も、避ける事もせず、その身一つで受け止めたのだ。
それも、席から動く事なく、まるで俺達の攻撃など認知すら必要すらないかのように、動かず、呑気に紅茶を飲みながら全身で受けた。

なのに…なのに、神父は血の一滴すら流さない。それどころか、何人かの剣の刃が折れたり欠けたりする始末だ。

「に、人間じゃねぇ…」

誰かが呟いた。

だが、全員がそう思っている筈だ。
俺だって思った。

まるで現実味のない光景。

なにせ、神父は刃物による攻撃を生身一つで受けたのにも関わらず、傷一つ付かず、それだけに飽き足らず、攻撃者の剣を折りやがった。

…ありえねぇ。

「んー。やっぱり、高ランクの武器じゃないと傷付かないのかな?凄いなぁレベルって」

全員が戦慄の表情を浮かべて一歩後退ると、神父が一人でに納得したように頷いた後、コップを傾けて中身を飲み干すと立ち上がった。

一体、なんなんだ…コイツは…。

「それにしても、いきなり攻撃してくるなんて酷いなぁ。俺は平和的に解決しようと思ってるのに、それはないよね?」

敵意や殺意に囲まれても尚、神父は肩を竦めて戯けた風に笑ってみせた。

それが、より一層俺達に言いようのない恐怖を与える。

神父の言葉に誰も声を返さない。
折れた武器を捨てて、新たな武器を取り出して構える。闇ギルドに所属する者なら、予備で武器を備えているのは当たり前だ。

皆の頭にあるのは『どうやって神父を殺すか』それしかない。

唯一、情けない事に、俺だけが怯えて動けないでいる。

「まぁ良いや。じゃあ…どうしよっか?」

神父が首を傾げて次の行動を迷った瞬間。それを隙とみなした奴が背後から奇襲を仕掛けた。

しかしーー。

「い、いでぇええぇぇぇぇっ!!」

いつの間に振り返ったのか、俺には全く見えなかった。

神父は、いつの間にか背後からの奇襲者の頭を鷲掴みにして持ち上げていた。

奇襲者は悲鳴を上げてもがき暴れるが、神父を蹴ろうが殴ろうが武器で斬りつけようが、何をしたってビクともしない。

まるで、鋼で出来た巨人に掴まれているようにしか見えない。

「残念だけど、俺の背中には目が付いてるから、不意打ちは無意味だよ」

背中に目が…?
化物だとは思っていたが…まさか、本当に付いていたなんて…。

背後から奇襲を仕掛けようが、遠方から狙撃しようが、影から奇襲を仕掛けようが、どれも尽く回避されていた。
でも、それなら納得がいく。

「ごめんごめん。今のは軽い冗談だよ。ただの気配察知で分かるだけだから」

なっ…!じょ、冗談…だとっ!?
こんな場面で冗談だとっ!?

コイツ…頭おかしいだろっ!

一体、何人に囲まれてると思っているんだ!?
こうしている内にも騒ぎを聞きつけた奴等が集まってくるんだぞ!?

幾ら、コイツが化物だとしても、たった一人!

敵うはずがない!

いや…もしかすると、もしかしなくても、俺達なんて敵じゃないと言いたいのか…っ!?

「で、一つ聞きたいんだけど、ここの頭領?リーダー?ギルド長かな?それってどこにいるか教えてくれないかな?」

「………」

その質問に、勿論誰も答えない。

答えるよりも、侵入者を殺す方が優先的なんだ。なにせ、侵入者を殺すか、生け捕りにすればギルドから多額の報酬が入る。

だが、俺は思う。

ギルド長を売った方が、俺達の安全は確保されるんじゃないか?ーーと。


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