ゲームと良く似た異世界に来たんだけど、取り敢えずバグで強くなってみた

九九 零

説明します!


夜。領主の館にコッソリと椅子を返却してから、ベッドで横になりつつ、俺なりにこの世界の事を考えてみた。

まず、この世界の仕組みだけど、それはゲームの『オール・ワールド』とほぼほぼ同じ。
ただ、スキルや魔法などと言った中に、たまに武技と言う言葉が聞こえる事に気がついた。

ゲームには無かった言葉なので、調べる必要がありそうだ。

金銭は下から銅貨、銀貨、金貨、白金貨、閃貨となってて、銅貨一枚が10円程度の価値があり、それが100枚で銀貨一枚の1000円相当となる。

武器や防具のランク付けは下からN、HN、R、HR、SR、SSRとある。これの確認はしてないから、俺はそのようにゲームを基本に考えている。

それ以外にも、視界端にあるマップにはゲーム同様に自分の居る周囲の半径500mが常に表示され、拡大化すると半径1kmが表示される。
さらにメニュー画面からマップ表示で大雑把な世界地図が表示される筈だけど、それは未確認。

で、マップに表示される青丸のマークが味方。赤丸が敵。緑丸が無関係。で、つい最近新たに現れた黄丸が崇拝者。領主の館に椅子を返しに行った際にアータクルが個室部屋で熱心に混沌の女神『カオスト』に祈りを捧げていたのを確認した。

マップに表示される施設などは、認識。又は『そうである』と念じると施設の看板が表示がされる。
明日辺りに世界全土の施設を思い返して、覚えている限り全ての施設を表示させるつもりだ。

そして、魔法だが…。

魔法はイマイチ良く分からない。
頭に鮮明に思い浮かべる事が出来ると身体から何かが抜けて行くような感じがして、魔法が発動される。
でも、魔法名を言うだけでも発動できる。

原理はよく分かっていない。

スキルは使用するとスタミナ消費が激しい。
狂戦士バーサーカー』のスキルを使用した際にも、その後、全力で50mを駆け抜けたような倦怠感を覚えた。

狂戦士バーサーカー』スキルの影響下にある場合は疲れ知らずだけど、スキルを解除すればドッと疲労が押し寄せてくる。

あと、『狂戦士バーサーカー』スキルは力、スタミナ、魔力。その他の数値の全てを何倍にも底上げするスキルだけど、使用した際には途轍もない破壊衝動が押し寄せてくる。

もし破壊衝動に心を許してしまえば、一国ぐらい簡単に滅ぼしてしまいかねない。注意が必要だ。

それ以外のスキルは未確認。さすがの俺でも全てを把握しきれていない状態だ。

唯一、分裂と言うスライムのスキルだけは興味本位で確認済み。

髪の毛を一本だけ抜いて地面に落とすと、それが不死能力を介して人型となり、もう一人の俺となるのだ。

まぁ、偶然見つけた感じだけど。

リョウは賢者のジョブを取得。
賢者にはスキルは無いものの、魔法を作成できるメリットがあり、ゲームではオリジナル魔法を作る事が出来た。
デメリットは、賢者になった時点でデフォルトの魔法が無くなり、全てを一から作らなければなかったことだ。

まぁ、それがあっても十分過ぎるほど強かったけど。

なにせ、オリジナル魔法だ。本来無いものを作り出し、デフォルト魔法で出来なかった事を可能にするんだ。

ダメージの半分を跳ね返すシールドや空飛ぶ魔法。挙げ句の果てには、賢者には存在しない筈のスキルを魔法で創り出した奴までいた。

さすがに『狂戦士バーサーカー』のスキルまでは魔法で創れなかったらしいけど。

でも、これを現在俺が理解しているだけのこの世界の魔法の原理を含めて考えるにーーハッキリと想像できるだけで、どんな魔法でも創り出して発動させる事が出来る。

おそらく、どんな職業よりも強いかもしれない。

誤って危険な魔法を創り出さないように監視しておかないと、一国が簡単に滅ぼせるぐらいで済まない。

下手をすると、世界を滅ぼしかねない。

これは要注意だ。

さてさて、それじゃあ次は、俺がこれまで見て来た光景を思い返すとしよう。

まず、建物や立地。風景。それらに関する記憶。ゲームをしている時に画面に映し出されていた光景。
それは、今までに得た情報で、この世界では500年前の事だと考えられる。

でも、おかしな話だ。

ゲームの時代から500年もの時が経過しているのに、なぜか建物の類はおろか立地や風景までも多少の違いはあれどゲームの画面に映し出されていたモノと同じ。

俺の記憶に違う点はなく、500年の長い歴史を感じさせないほど不可思議なほど同じなのだ。

まるで、ゲームの中がソックリそのまま持って来たかのよう……いいや、違う。
この世界をゲームに持ってきたように思える。

そうでなければ、賢者のジョブや女神がこの世界にも存在しているはずなのだから。

おそらく、ゲームにするにあたって色々とアレンジしたのだろう。

伝説とまで言われた俺のジョブ狂戦士バーサーカー。失われたジョブ賢者。消えた四柱の女神。
これらがゲームにはあって、この世界にないのは、ここがゲームの中ではない証拠にもなる。

けど、そこで残る疑問が一つ。

なぜゲームのバグがこの世界で通用する?
何か理由があるにしろ、今の現状では情報量が少なすぎて判断できない。

おおよそ予測できるのは、この世界本来のバグがゲームに反映された。または、ゲームのバグがこちらに影響した。もしくは、これが本来のこの世界の姿だから。

そんな曖昧な推測しかできない。

思い返せば、1軒目の宿屋で使った裏ルート。あれは、一種のバグだと掲示板には書かれていた。

本来、あそこへ行くには別ルートがあるらしいのだ。

俺はそのルートを通った事はないけど、滅びた世界樹の木の根の隙間に迷宮の出入り口があって、そこを通る事で辿り着く事が出来るらしい。

でも、あの宿屋の一室からなら世界樹を失わず、迷宮を通らなくても行く事が可能だ。

まるで、緊急用の出入り口みたいなモノにも感じなくはない。

変な話だ。

変な話と言えば、俺達がこの世界に連れて来られた理由だ。

誰かに使命を言い付けられている訳でもなく、何かを言われた訳でもなく、唐突に何の前触れもなく連れて来られた。

これこそ変な話だ。

リョウに聴いても『知らない』の一点張り。
電話越しだったけど、同時にゲームを始めた途端、意識が途切れて、気が付けばこの世界に来ていた。

まぁ、その後、ゾンビ共がウヨウヨしている墓地に理由もなく埋められてたんだけど。

理由………理由か。

そうか、この世界に俺達が連れて来られたのは、もしかすると理由がないのかもしれない。

そうじゃなきゃ、俺達をこの世界に連れて来た何者かの接触があってもおかしくない筈なんだ。

そんな事を考えながら、俺の意識は微睡みへと溶けていったーー。










ーーーチュンチュンチュン。

そんな小鳥の囀りが聞こえてきて、俺は夢から覚めた。今となってはどんな夢を見ていたかすら覚えていない。

それにしても、小鳥の鳴き声は携帯のアラームよりもタチが悪いと今日初めて知った。

鳴き声のする場所が存外近く、おそらく締め切った木窓の付近。
しかし、小鳥の鳴き声を停止させるには完全に起きて窓を勢いよく開かなければならない。もしかすると、物を投げて追い払わなければならないかもしれない。

そうなれば、どのみち目を開けなければならない。

億劫だ。

起きるのが、とても辛い。

目を開けたくないし、起きあがりたくもない。
もう一度、あの記憶には残らない幸福感に包まれたい。

だから、俺は再び夢の中へーー。

ーーダンッ!

「おい貴様!ダルグ様になにしてくれてんだっ!」

入れなかった。

部屋の外でヤケに大声で怒鳴るヤツが居る所為で、夢の中へと至る門前から強制退去させられた。

ハラタツ…。

「なんだその言い草は!!貴様!この方を誰だと心得ているっ!?」

なんだよ…ホントに…。人が折角気持ち良く二度目を決め込もうとしてたのに…。

「な、なんだとっ!?貴様!その様な事を言ってタダで済むと思うーー」

ーーゴンッ!ガンッ!バキッ!

何かを激しく壁に打ち付けるような音が三度聞こえると、途端に部屋の外が静かになった。
小鳥の囀りすら聞こえない。

誰かが外の喧騒を解決してくれたみたいだ。
その人には感謝だな。そして、これでようやくゆっくりと二度寝をする事がーー。

「おーい!ヒビキー!朝だぞー!起きろー!ギルド行くぞー!」

出来なかった。
どうやら、お迎えが来たようだ。

それにしても、ギルドって…もしかして冒険者ギルドじゃないよね?
あそこ、前に逃げたから余り行きたくないんだよなぁ。

ーードンッドンッドンッ!

扉を激しく叩く音が部屋に響く。

「うぅ…」

あぁ…。嫌だ嫌だ。もう少し寝たいのに。
まだまだ寝足りないのに…。

でも、行かないとずっと煩いままだし…アイツ諦め悪いし…。仕方ない。行くか。

「わ、分かった…分かったから、少し待って…」

眠たい…眠た過ぎる…。
寝起きで発せられる俺の声なんて小さ過ぎて部屋の外にいるリョウには聞こえず、ずっと大声で呼び掛けてきている。

朝から元気なものだ。

余りの眠たさに瞼を完全に持ち上げる事が出来ず、半眼になりながら扉へとフラフラと歩いて行く。

「おう!ギルド行くぞ!ギルド!」

扉を開けると、物凄く良い笑顔をしたリョウが元気よさそうに言った。

勘弁して欲しい…。

そりゃ、リョウは昨日の昼過ぎからずっと寝てたから元気なんだろうけど、俺は領主に椅子を返さなきゃならなくて深夜まで起きてたんだからシンドイよ…。

でも、リョウを一人で行かせるのもなんだか気が引けるし…。

「分かったから、少し待って…取り敢えず、着替えさせて…」

「あ?もう着てるじゃねぇかよ」

俺の服装は、いつもの神父服だ。
だから、リョウも勘違いしたんだろう。

「これは昨日のだから…新しいのに着替えたい…」

「ちっ。早くしろよ!」

「はいはい…」

舌打ちされたけど、待ってくれるみたいで何よりだ。
このまま引き摺られて行く事も予想出来たから少し覚悟してたんだけど、杞憂で終わって何よりだ。

扉を閉めて、ササッと着替えを済ます。

『倉庫』から新たに取り出した神父服は新品のように綺麗で、折り目やシワなども一つもない。
一つ不満があるとすれば…。

「あー…風呂入りたい…」

自分の体の事。
不潔感が凄く嫌だ。
全身が痒くなってくる。

早い内にこの問題を解決しなければ、俺は不潔感に苛まれて夜も眠れない日々を送らなければならなくなる。

本当に早く解決しなければ…っ!

この部屋に姿見などはなく、自分の姿がどうなってるかなんて分かりもしないけど、寝る前に全身を濡れタオルで拭いてから清浄化の魔法『クリーン』を使用し、出来うる限りで体を清潔に保とうとした。

見下ろして確認するだけになるけど、体の清潔感。ちゃんと神父服を着こなせているかを確認してから、再度、扉を開いてリョウと合流する。

「そんじゃ、行くぞぉ!」

子供の遠足かっ!と声を大にしてツッコミを入れたくなるけど、眠た過ぎて声が出ない。
フラフラ、ヨタヨタと俺は覚束ない足取りで宿屋を出てギルドへと向かった。

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