死んで神を殴りたいのに死ねない体 ~転生者は転生先で死を願う!?~
16. 冒険者ギルドと出発準備
「しゃーい……お、クリス様か? いよいよ冒険者に?」
ギルドへ入ると開口一番、受付に居るひげのおっさんに呼び止められる。
このおっさんは、ボルボ。ギルドマスターと言う奴らしいが、書類仕事が無い時はこうして入り口のカウンターに座って冒険者やお客さんと世間話をするという。
「いや、両親に止められたからまだ保留だ」
「なんだよ、面白くねぇ……クリス様の体なら盾として重宝するんだがなあ」
一応領主の息子なんだが、それを盾にするってすげぇな。まあ分かるけど。
「で、今日は何の用なんだ?」
「何かグレイス山にドラゴンがやってきたらしいじゃないか。ちょっと行ってみようと思ってな。必要な道具とかアイテム……被ってるな、食料は必要か、とか山頂までどれくらいかかるかとか、地図とか楽な道とか無いかなと思って」
「欲張りだな……そうだなあ、山頂までは麓から休みながら7、8時間ってとこだな。あの山はそんなに高くないが夕方とかに登り始めるならキャンプは必要だ。魔物はそれなり……とはいってもこの辺よりは確実に強い。クレイジージャッカルは菌を持ってるから噛まれたら……ああ、クリス様にゃ関係ないか……」
ふむふむ、俺は次々とメモをしていく。
「後、どっかにオークの集落があるらしいぜ。気をつけないとさらわれて……いや、これも心配ないか」
俺は魔物より危ない奴みたいで嫌な感じだな……。とりあえずオークもゴブリンと同じく知性があるため魔物としてのランクは動物系より高い。会わないに越したことは無いので、注意して進もう。
「サンキュ、助かるよ」
「冒険者の護衛とか雇わねぇか? クリス様なら余裕だろ。金儲けさせてやってくれると助かるんだが……」
あー毛皮回収とかなら頼むんだけどなあ……ドラゴンだし、もし期待通り俺が死んじゃったら冒険者のせいになるのでそれはちょっと可哀相だ。
「ドラゴンがどんなヤツかも分からないし、今回は悪いけど無しで頼むよ。今度埋め合わせするから」
ボルボさんは「絶対だぞ」と言い放ち、俺を見送ってくれた。
帰り道、リカルド商店という道具屋へ山登り道具を買うため足を運ぶ。
ちなみにリカルド商店は息子と二人で切り盛りしている、普通の道具屋だなのだが、その昔、経営不振で無理をした奥さんが病気で倒れたらしいが、息子が冒険者になって治療する薬を見つけて来たと言うのだから泣かせる話だ。
親父さんのリカルドは最初反対していたらしいけど、壮絶な親子げんかの末に息子さんは出て行ったとか。
数年して、いよいよ店も奥さんも危うい所に息子さんが帰ってきて冒険者として稼いだお金、薬、そして商売のノウハウを持って帰り今に至り、仲良く親子で商売が続けられているんだとか。
「リカルドさんの店はちょっと高いけど品質は間違いないから、冒険者の道具買うならここだよな」
リュックにザイル、登山ブーツに手袋やロープなどを買い、これで完璧とホクホクしていたら、おまけでポーションをもらった。俺には必要ないが何かの役に立つかもしれない。
---------------------------------------------------
そして家へ帰ると、フィアが出迎えてくれた。
「あ!?」
ちょっとうきうきオーラを出しているフィアの顔見て思い出す。
「すまん、ケーキ……忘れた……」
「ガーン(た、楽しみにしていたのに……ううん、でも元々ついでだったじゃない。クリス様は悪くないわ! でも、くすん……残念)」
口でガーンと表現するくらいショックだったのだ。俺は反省したが、今から町に戻っても売り切れているに違いない。別の日に買ってくると約束して事なきを得た。
その夜、夕飯時に俺は話を切り出した。
「明後日からちょっと山へ行ってくるよ」
すると母さん
「最近外に出てるわね、いいことだわ。次は何を作るのかしら? 楽しみだわ」
別にニートについて言及している訳ではないだろうが、心が痛い。
で、また何か思いつくと考えているようで、あっさりOKがもらえた。
「クリスのおかげでお金は困らないが使い道が無いな……何か人を使って給料にできるようなアイデアが欲しいなあ父さん」
チラチラっと俺を見ながらシチューを食べる父さん。元々貴族だからね、仕方ないね。
ドラゴンの所で死ぬ予定の俺は父さんをスルーした。
「あれ!?」
「海の次は山かい、クリスは忙しいね。一人で行くのかい?」
「もちろんわたくしが……!」
「行かせないよ? 俺一人で行くよ、今度のは旅行じゃないし」
アモルがガーンとなり、ウェイクもガーンとなっていた。流石双子だ。
「何しに行くの?」
すぐに復帰したウェイクに目的を尋ねられ、そういえばと考える。バカ正直にドラゴンに会いに行くなどと言えば確実に止められること必死。
「あ、ああ。キノコの研究にちょっとな。薬屋に行く機会があったんだけど、キノコって薬にするだろ? 何か新種でもないか気になってな……」
嘘にはホントの事を混ぜるとばれにくい。そんな話を思い出しながら、説明しウェイクも他の家族も納得してくれた。
「これがまた新しい開発になるのよねきっと……! お金は別に要らないけどクリスの作るモノは楽しみにしてるわよ」
母さんは欲が無いので、化粧もほどほど、宝石の類も欲しがらない。逆に言えば誕生日とかで欲しいものが分からないので困るくらいだ。だいたいアニメとかラノベの貴族ってわがままだったり見栄っ張りだったりするもんだけどな……。
「くっ……お、お兄様。どれくらい家を空けるのですか?」
「ん? まあ、2、3日くらいかな?」
もしかすると永久に帰らないかもしれないが。
「んほう!? 3日!? 3日も会えないなんてひどすぎますわ!? やはりわたくしも着いて……」
「お前は学校があるだろうが。元気なのに休んじゃう子はお兄ちゃん好きじゃないなあ」
「ふふ、わたくしが学校を休むわけありませんわ。(うう、残念ですが嫌われたくありませんし、我慢を!)」
とまあ、いつもどおりアモルが少しわがままを言ったが、今回はすんなり話が通り一人で旅立つことになった。
冒険者にならなくても、旅行って言っておけば色々行けるんじゃないかと気づけたのは僥倖だ。
そしてオルコスが静かな今の内に計画を進めねばうるさいからな。
だが、俺は山に登り始めた早々にとんでもないモノと遭遇することになる。
---------------------------------------------------
ドラゴンに会うためいよいよ山を登り始めるクリス。
途中で出会ったモノの正体とは?
そして、本当にドラゴンは居るのだろうか。
次回『困惑するオーク』
ご期待ください。
※次回予告の内容とサブタイトルは変更になる可能性があります。予めご了承ください。
ギルドへ入ると開口一番、受付に居るひげのおっさんに呼び止められる。
このおっさんは、ボルボ。ギルドマスターと言う奴らしいが、書類仕事が無い時はこうして入り口のカウンターに座って冒険者やお客さんと世間話をするという。
「いや、両親に止められたからまだ保留だ」
「なんだよ、面白くねぇ……クリス様の体なら盾として重宝するんだがなあ」
一応領主の息子なんだが、それを盾にするってすげぇな。まあ分かるけど。
「で、今日は何の用なんだ?」
「何かグレイス山にドラゴンがやってきたらしいじゃないか。ちょっと行ってみようと思ってな。必要な道具とかアイテム……被ってるな、食料は必要か、とか山頂までどれくらいかかるかとか、地図とか楽な道とか無いかなと思って」
「欲張りだな……そうだなあ、山頂までは麓から休みながら7、8時間ってとこだな。あの山はそんなに高くないが夕方とかに登り始めるならキャンプは必要だ。魔物はそれなり……とはいってもこの辺よりは確実に強い。クレイジージャッカルは菌を持ってるから噛まれたら……ああ、クリス様にゃ関係ないか……」
ふむふむ、俺は次々とメモをしていく。
「後、どっかにオークの集落があるらしいぜ。気をつけないとさらわれて……いや、これも心配ないか」
俺は魔物より危ない奴みたいで嫌な感じだな……。とりあえずオークもゴブリンと同じく知性があるため魔物としてのランクは動物系より高い。会わないに越したことは無いので、注意して進もう。
「サンキュ、助かるよ」
「冒険者の護衛とか雇わねぇか? クリス様なら余裕だろ。金儲けさせてやってくれると助かるんだが……」
あー毛皮回収とかなら頼むんだけどなあ……ドラゴンだし、もし期待通り俺が死んじゃったら冒険者のせいになるのでそれはちょっと可哀相だ。
「ドラゴンがどんなヤツかも分からないし、今回は悪いけど無しで頼むよ。今度埋め合わせするから」
ボルボさんは「絶対だぞ」と言い放ち、俺を見送ってくれた。
帰り道、リカルド商店という道具屋へ山登り道具を買うため足を運ぶ。
ちなみにリカルド商店は息子と二人で切り盛りしている、普通の道具屋だなのだが、その昔、経営不振で無理をした奥さんが病気で倒れたらしいが、息子が冒険者になって治療する薬を見つけて来たと言うのだから泣かせる話だ。
親父さんのリカルドは最初反対していたらしいけど、壮絶な親子げんかの末に息子さんは出て行ったとか。
数年して、いよいよ店も奥さんも危うい所に息子さんが帰ってきて冒険者として稼いだお金、薬、そして商売のノウハウを持って帰り今に至り、仲良く親子で商売が続けられているんだとか。
「リカルドさんの店はちょっと高いけど品質は間違いないから、冒険者の道具買うならここだよな」
リュックにザイル、登山ブーツに手袋やロープなどを買い、これで完璧とホクホクしていたら、おまけでポーションをもらった。俺には必要ないが何かの役に立つかもしれない。
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そして家へ帰ると、フィアが出迎えてくれた。
「あ!?」
ちょっとうきうきオーラを出しているフィアの顔見て思い出す。
「すまん、ケーキ……忘れた……」
「ガーン(た、楽しみにしていたのに……ううん、でも元々ついでだったじゃない。クリス様は悪くないわ! でも、くすん……残念)」
口でガーンと表現するくらいショックだったのだ。俺は反省したが、今から町に戻っても売り切れているに違いない。別の日に買ってくると約束して事なきを得た。
その夜、夕飯時に俺は話を切り出した。
「明後日からちょっと山へ行ってくるよ」
すると母さん
「最近外に出てるわね、いいことだわ。次は何を作るのかしら? 楽しみだわ」
別にニートについて言及している訳ではないだろうが、心が痛い。
で、また何か思いつくと考えているようで、あっさりOKがもらえた。
「クリスのおかげでお金は困らないが使い道が無いな……何か人を使って給料にできるようなアイデアが欲しいなあ父さん」
チラチラっと俺を見ながらシチューを食べる父さん。元々貴族だからね、仕方ないね。
ドラゴンの所で死ぬ予定の俺は父さんをスルーした。
「あれ!?」
「海の次は山かい、クリスは忙しいね。一人で行くのかい?」
「もちろんわたくしが……!」
「行かせないよ? 俺一人で行くよ、今度のは旅行じゃないし」
アモルがガーンとなり、ウェイクもガーンとなっていた。流石双子だ。
「何しに行くの?」
すぐに復帰したウェイクに目的を尋ねられ、そういえばと考える。バカ正直にドラゴンに会いに行くなどと言えば確実に止められること必死。
「あ、ああ。キノコの研究にちょっとな。薬屋に行く機会があったんだけど、キノコって薬にするだろ? 何か新種でもないか気になってな……」
嘘にはホントの事を混ぜるとばれにくい。そんな話を思い出しながら、説明しウェイクも他の家族も納得してくれた。
「これがまた新しい開発になるのよねきっと……! お金は別に要らないけどクリスの作るモノは楽しみにしてるわよ」
母さんは欲が無いので、化粧もほどほど、宝石の類も欲しがらない。逆に言えば誕生日とかで欲しいものが分からないので困るくらいだ。だいたいアニメとかラノベの貴族ってわがままだったり見栄っ張りだったりするもんだけどな……。
「くっ……お、お兄様。どれくらい家を空けるのですか?」
「ん? まあ、2、3日くらいかな?」
もしかすると永久に帰らないかもしれないが。
「んほう!? 3日!? 3日も会えないなんてひどすぎますわ!? やはりわたくしも着いて……」
「お前は学校があるだろうが。元気なのに休んじゃう子はお兄ちゃん好きじゃないなあ」
「ふふ、わたくしが学校を休むわけありませんわ。(うう、残念ですが嫌われたくありませんし、我慢を!)」
とまあ、いつもどおりアモルが少しわがままを言ったが、今回はすんなり話が通り一人で旅立つことになった。
冒険者にならなくても、旅行って言っておけば色々行けるんじゃないかと気づけたのは僥倖だ。
そしてオルコスが静かな今の内に計画を進めねばうるさいからな。
だが、俺は山に登り始めた早々にとんでもないモノと遭遇することになる。
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ドラゴンに会うためいよいよ山を登り始めるクリス。
途中で出会ったモノの正体とは?
そして、本当にドラゴンは居るのだろうか。
次回『困惑するオーク』
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