SCP版 エンジェル・オーバードーズ

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露呈

「お前はどっちだと思う?」

 そう聞いてきたのは対面に座る藤森だ。ここには他にも藤森の部下数人がいる。

 藤森からの質問に守人は下げていた顔を上げた。味方か。敵か。それはこっちが知りたいくらいだ。

「会えば分かる」

「そりゃそうだろうけどよ」

 守人の答えに藤森は背中を壁につけた。両手はアサルトライフルを持っておりやれやれといった表情で見てくる。

「分かってんのか? 今までの敵はテロリストや怪物ばかりだった。分かりやすい敵だ、立ち向かうにはやりやすいだろう。だが今度は違う。もし戦うことになれば、お前は顔見知りを殺すことになる。その覚悟はあるのかよ?」

 気負ったものではないが、それでも真面目な質問だった。

 彼の心配は尤もだ。守人はまだ知人との戦闘を行ったことがない。

 エリーとの殺し合い。そんな展開になった時、自分は拳を握り戦えるのだろうか。

 そのためには、怪物と渡り合う勇気とは別の覚悟が必要になる。

「…………」

 守人は、答えないままだった。

「即答はできねえか」

「戦いが始まれば否が応にも戦うさ。俺も死にたくはない」

「そりゃそうだ。が、逃げ腰で収まるなんて思うなよ」

 それで藤森は追及を止めた。言葉はきついが彼なりの気遣いだ。こんなんでも心配してくれている。

「覚悟決めるなら、今の内だぞ」

 それは守人にも分かっていた。彼の言うことは正しい。もし最悪の展開になった時、迷いがあれば殺されるのは自分。

「……分かってる」

 守人は、小さくつぶやいた。

 それからヘリは進み目的地へと近づいてきた。藤森は窓から進行先を見ると口先を尖らせた。

「おいおい、なんだありゃ。情報よりも多いんじゃねえか?」

 それを聞いて部下たちも窓から覗く。見ればそこには多くの戦車が並び兵士たちが戦闘態勢で待機していた。

 用心しているのか、もし戦闘になった場合を想定して。向こうにしても守人が攻撃してこない保証はないのだ。備えるのは当然のこと。

 とはいえ物々しいお出迎えに警戒心が増大していく。

「おいパイロット、交渉人は見えるのか!?」

「はい。視認しました。約二百メートル先。展開している部隊はさらに百メートル先です。戦車八台、兵士はざっと百人です」

「聞いたなファースト。むこうのお友達はこっちの十倍だとよ」

 藤森の顔が苦笑に歪む。皮肉混じりに言ったものの戦力差にうんざりしている感じだ。もしこれが戦闘になれば待機している援軍も相手にしなくてはならない。やってられない。彼我の差は歴然だ。

「藤森」

「お?」

 そこで守人に名前を呼ばれた。藤森は振り返る。その声質は固く、すでに覚悟が感じられる声だった。

「俺を降ろしたら領域から離脱してくれ」

 飄然としている藤森とは違う。さらにここから離れろという指示。それで藤森も理解した。

「……交渉は決裂か?」

「そのようだ」

 守人は立ち上がった。後部ハッチの前に歩いていく。扉は開き、青い空と乾いた砂の大地が視界に広がった。

「ファースト。降下する」

 守人はハッチから飛び降りると砂漠の上に降り立った。着地した衝撃に砂埃が舞い上がる。ヘルメットが煙に覆われた。

『ファースト? どういうこと?』

 そこで麗華から通信が聞こえてきた。藤森に言ったことを聞いてきた。

「姉さん」

 ここには題目上SCPとの共闘の打ち合わせで来ている。相手の戦闘時の備えはこちらの規模を越えているとはいえ離脱させるのは早計に過ぎる。

 そんな彼女の質問に、守人は答えた。

「これは共闘じゃない。戦闘だ」

 砂埃が晴れていく。正常な視界を取り戻し、その先にいる人物へ守人は言ってやった。

「そうだろう、エリー」

 エリザベス・アシュリーは一人で立っていた。以前会った時と変わらない。セミロングの青髪と砂漠仕様の黄土色をメインとした軍服。そして鋭さを湛えた瞳。

 軍服の色違いだけで、そこには守人の知っている彼女が立っていた。

 だがそれは外見の話で、守人には確信があった。

 彼女は話し合いをするためにここにいるんじゃない。戦う気だ。その体の内に秘めた戦意を守人はヘリの上から感じていた。

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