魂送りの神様

野間屋心乙

不思議な放課後

 パチリと目があった。

「よっ! おっはー、朝陽あさひ

 彼の後ろの窓の外では、雨に濡れた木葉が日の光をを受けて艶々と光っていた。

「おっはー?? 龍」

 グッと背伸びをすると、背中がゴキゴキと音をたてた……気がした。

「もうみんな帰ったぞ」

 そう言われて、教室を見渡せば僕と龍しか残っていなかった。

「うわ……ごめん、待っててくれたのか?」

「いや、用事済ませてきたところ。早く帰ろうぜ」

「あ、うん」

 僕は立ち上がって鞄を背負うと教室の出入り口に向かった。

 一瞬、立ちくらみがした。

「朝陽」

 龍が僕を呼ぶ。

「うん?」

 僕は振り返った。龍は教室の真ん中に立っていた。

「神様は好きか?」

 また、突拍子もない質問だと思った。
 
 龍の姿は逆光でよく見えなかった。でも龍の家は神社で代々神主をしているからそこまで不思議じゃなかった。

「嫌いじゃないよ。むしろ好きな方かな」

 あの人間臭さが良い。夫婦喧嘩もするし、恋にも落ちるし、覗くなと言われて覗いちゃう、あの人間臭さが。

「そうか」

 龍が笑った気がした。
 
 突然クラリとしためまいが僕を襲った。一瞬だけ視界が黒く染まる。

「おい、朝陽!!」

 龍が階段の踊場から僕を呼んでいた。

「あれ、龍いつの間に?」

「いつの間に……って、俺ずっとここで待ってたぞ」

「あれ、『神様は好きか?』ってきかなかった?」

 龍は怪訝そうな顔で僕を見つめた。

「お前、熱ないか?」

 龍の手のひらが僕の額に当てられる。

「……ないな。まあ、今日は早めに寝ろよ、朝陽」

「……うん」

 さっきのは一体誰なんだろう。

 おかしな体験をしたのに少しも怖くはなかった。

 外は蒸し暑く、太陽が照りつけ、蝉と運動部の声がうるさいほど聞こえていた。









 




 



 



 
 


 

 










 




コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品