勇者の孫、パーティーを追放される~杖を握れば最強なのに勇者やらされてました~

結月楓

第十八話 『驚嘆』

「とりゃぁ!」

 ミカが真正面から爺さんに突っ込む。

「ほっほ。その程度の動きじゃわしの銀貨はとれんぞ」

 ひらりとかわすのは爺さん。

「ふふっ、ミカは囮ですよ! 風雲の力により汝を異空間へと運び去らん」

 エリザが転移魔法テレポートを爺さんにかける。

 爺さんはミカの目の前に後ろ向きで転移させられた。

「ほいっとー」

 ミカはそのまま銀貨の付いた首飾りを爺ちゃんから奪う。

「ほほっ、やるじゃないか。試験は合格じゃ」

「うぇーい、楽勝ー」
「やったー、ありがとうございます!」

 二人が喜んでいると、突然そこに三人の縛られた人間が現れた。

「なんじゃ!? お前たちは」

 爺さんが問う。

「あなたは伝説の勇者!? 俺達はあいつに助けられたのか……」

「どういうことじゃ、ちゃんと説明せい」

 その時、遠くのほうで凄まじい衝突音が鳴った。

「む」

 爺さんは音のする方を向くと、視界にアルフと魔人が戦っている様子を捉えた。

「あの銀髪の輩は敵なんじゃな?」

 爺さんは瞬時に状況を理解した。

「ここから髪の色まで見えるんですか!? あれはジャキといって強大な力を持つ魔人です。……それにしてもアルフのやつ、魔人と互角の戦いを繰り広げているとは驚きだ」

 サイフォスは信じられないといった表情を見せている。

「確かに一見互角じゃが……魔人の武器は勇者装備ではないか! 一体どうなっておるんじゃ。このままだと装備の差で押し切られるぞい」

 サイフォス達三名は縛られた状態のまま土下座をする。

「申し訳ございません! 勇者装備をアルフから奪った上に魔人に盗まれてしまいました」

「とんでもない仲間がいたもんじゃな」

「あの、わたくしのけつポケットに高位魔法士用のロッドが入っています。お爺様、これをアルフに渡していただけないでしょうか」

 ライトがかしこまった口調で爺さんに頼む。

「お爺様じゃと、貴様もジジイじゃないか! まあ良い、そのロッド受け取った」

 爺さんはロッドをポケットから引き抜くと、一足飛びで戦闘現場まですっとんで行ってしまった。

「あの年にしてあの身のこなし、さすが伝説の勇者だな……」

 そこにいたものは皆感心するしかないのであった。

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