ダイスワークス✡リポート
賽縁庵の異変
翌朝、リクルートスーツで電車に揺られる俺の傍らでパンツスーツの三葉が笑う。
♧「ほら、こうなった」
♢「うるさい」
覚悟は決めたが、不安が消えた訳ではない。
これから向かう先は、言わば戦場。
その地理情報を知っておくのは、重要な事だ。
先天性特殊技能(GOD DICE)保有の者専用の特殊介護施設、賽縁庵。
極度の老衰や痴呆に陥った小車輪(Player)達が、その余生を人知れず過ごす終焉の地。
中でも賽縁庵は比較的サイコロの目が高い者達を入居者に持ち、一般人に見せられない現象の数々が暴発しない様、手厚い保護が為されている。
そこまではいい。
納得出来る。
だが、問題はここから先にあった。
ちょっと回想入りまーす!
ここ最近、賽縁庵が妙な事態に見舞われているらしい。
それは一ヶ月前、突然起こった。
原因は、すぐに分かったと言う。
♤「十二里君のお母さんがね、入居した翌週からなんだよ、一連の“異変”は」
♢「十二里さんの……お母さん?」
そんな俺の疑問詞を、誰よりも早く拾ったのは三葉だった。
♧「十二里蔵海さん。心理読力者で最も強力で、私達心理読力者の現代社会に於ける“生き方”の模範を示した人よ」
♢「え?そんな凄い人なの?」
♤「そうだね、蔵海さんレベルの人間が相手じゃどんな心理読力者も屈服せざるを得ない。一般人なんて瞬殺で彼女の傀儡さ」
♢「マジかよ……」
♡「……母の仕業だとは、思いたくないのですが」
これ以上ない程苦渋に満ちた表情で、心美さんは俯いた。
彼女は一体、何を見てしまったんだろう。
酸いも甘いも噛み締め、艱難辛苦を散々乗り越えた人間が、こんな表情を浮かべる程の事態とは、何なのか。
ゾッとしない話である。
♤「じゃあ、明日からよろしくね!」
回想終了。
あれ?思いの外参考にならないぞ?
おっかしいなーちゃんと思い出したんだけどなー。
♢「……具体的にどんな事態が起こってるのかすら全く分かんないし……」
何であの人達この説明で十分って思ったんだろう?
♢「まあ百聞は一見にしかずって事なのかね?」
♧「あんたまだ自分の価値が分かってないのね」
♢「三葉さあ、聞こえる様に話してよ。あと俺、まだお前を信用はしてないからな」
♧「あらそ、じゃあまだ努力の余地はあるって事ね」
♢「……解釈は任せるよ」
♧「そう」
思わせぶりな三葉の返事に、心が曇る。
当たり前の様に身体を揺する電車が、やたらと恨めしく感じた。
それきり、俺達は最寄駅まで一言も口を利かなかった。
♧「ほら、こうなった」
♢「うるさい」
覚悟は決めたが、不安が消えた訳ではない。
これから向かう先は、言わば戦場。
その地理情報を知っておくのは、重要な事だ。
先天性特殊技能(GOD DICE)保有の者専用の特殊介護施設、賽縁庵。
極度の老衰や痴呆に陥った小車輪(Player)達が、その余生を人知れず過ごす終焉の地。
中でも賽縁庵は比較的サイコロの目が高い者達を入居者に持ち、一般人に見せられない現象の数々が暴発しない様、手厚い保護が為されている。
そこまではいい。
納得出来る。
だが、問題はここから先にあった。
ちょっと回想入りまーす!
ここ最近、賽縁庵が妙な事態に見舞われているらしい。
それは一ヶ月前、突然起こった。
原因は、すぐに分かったと言う。
♤「十二里君のお母さんがね、入居した翌週からなんだよ、一連の“異変”は」
♢「十二里さんの……お母さん?」
そんな俺の疑問詞を、誰よりも早く拾ったのは三葉だった。
♧「十二里蔵海さん。心理読力者で最も強力で、私達心理読力者の現代社会に於ける“生き方”の模範を示した人よ」
♢「え?そんな凄い人なの?」
♤「そうだね、蔵海さんレベルの人間が相手じゃどんな心理読力者も屈服せざるを得ない。一般人なんて瞬殺で彼女の傀儡さ」
♢「マジかよ……」
♡「……母の仕業だとは、思いたくないのですが」
これ以上ない程苦渋に満ちた表情で、心美さんは俯いた。
彼女は一体、何を見てしまったんだろう。
酸いも甘いも噛み締め、艱難辛苦を散々乗り越えた人間が、こんな表情を浮かべる程の事態とは、何なのか。
ゾッとしない話である。
♤「じゃあ、明日からよろしくね!」
回想終了。
あれ?思いの外参考にならないぞ?
おっかしいなーちゃんと思い出したんだけどなー。
♢「……具体的にどんな事態が起こってるのかすら全く分かんないし……」
何であの人達この説明で十分って思ったんだろう?
♢「まあ百聞は一見にしかずって事なのかね?」
♧「あんたまだ自分の価値が分かってないのね」
♢「三葉さあ、聞こえる様に話してよ。あと俺、まだお前を信用はしてないからな」
♧「あらそ、じゃあまだ努力の余地はあるって事ね」
♢「……解釈は任せるよ」
♧「そう」
思わせぶりな三葉の返事に、心が曇る。
当たり前の様に身体を揺する電車が、やたらと恨めしく感じた。
それきり、俺達は最寄駅まで一言も口を利かなかった。
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