T.T.S.
FileNo.4 『Sample 13』 Chapter 6-1
1
~2168年9月9日AM7:25 アリススプリングス~
この世界に真実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである。
今一度、ニーチェの言葉を何度も何度も脳内で繰り返す。自らに言い聞かせるように、自らを洗脳するように、源は再び髑髏を手に取る。
再び掌の上に現れた生首を苦々しく見詰めていると、パチリと開いた生首の相貌は源を捉えるより早く辺りを彷徨い出した。
「紫姫音はどこだ?」
「置いてきたんだよ。安全な所に」
「何故だ?」
「うるせぇ。ほっといたらテメェが一方的に勝手な事情押しつけてくっからだろぉが」
髑髏に少しだけ握力を加えつつ、源は生首をギロリと睨みつける。
「ちったぁこっちの事情にも付き合ってもらうぞ。まずは俺への用だけ言え」
「……いいだろう」
そっと目を伏せてから決意の眼差しを源に向け、シオンは口を開く。
「ではまず、お前自身について話そう」
カラカラの口の中から何とか生んだ固唾を呑み込んで、源は力強く頷いた。
「お前は間違いなく私の息子だ。私の血を分けた私の半身。お前のDNAの半分は、私のそれから出来ている。これは確実な事実だ」
一度は嘔吐いた食事を再び喉に詰め込まれたような苦しさが、胸を襲い喉を締め付ける。早くも吐き気を催しながらも、何とか源は頷いた。
生首を載せた左手に身体の震えが伝わらないように、グッと脇を締め直す。
そうして、己を喝破するように源は叫んだ。
「そんな事はどぉでもいぃ!さっさと本題に入れ!」
奥歯を噛み締めてシオンの続く言葉を待つ。
ただそれだけなのに、万力で締め付けられるような時間が延々と続くようだ。
それをジッと見つめるシオンの生首は、少しだけ顔を翳らせた。
「……すまない。私だって出来ればお前にそんな顔をさせたくはなかった。こんな状況に陥らせたのは私の責任だ。本当にすまなかった」
「……別にいぃ……今更……用件を早く話せ」
片や身を竦めるように、片や憑き者が離れたように、互いの目線が交点を失う。
その瞬間の2人の姿は、巨大な潮流に呑まれて引き裂かれた一組の親子そのものだった。
それでも、次の瞬間には2人の目に火が宿る。それぞれ事情があれど、自らの前に立ち塞がる障害に立ち向かう意志を持つ者同士なのが、それだけでわかった。
「すまない。話を本筋に戻そう。キミの姉妹についてだ」
「……紫姫音だけじゃねぇのかよ……」
この世界のどこかにいる、まだ見ぬ姉妹の存在に、源は少しだけ鼻白む。
その様子を見て、シオンは少しだけ表情と口調を緩めた。
「そうだ。紫姫音のオリジナルともう1人いる。だが、彼女たちの身元は、彼女たち自身のタイミングで明かすのを待っていて欲しい」
「……まぁ会うこともねぇだろぉけどよ」
「私もそう願うよ」
「で?」
閑話休題と、源は一拍挟み込む。
「本題のTLJ-4300SHについて、何か話ときたいことがあんだろ?」
~2168年9月9日AM7:25 アリススプリングス~
この世界に真実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである。
今一度、ニーチェの言葉を何度も何度も脳内で繰り返す。自らに言い聞かせるように、自らを洗脳するように、源は再び髑髏を手に取る。
再び掌の上に現れた生首を苦々しく見詰めていると、パチリと開いた生首の相貌は源を捉えるより早く辺りを彷徨い出した。
「紫姫音はどこだ?」
「置いてきたんだよ。安全な所に」
「何故だ?」
「うるせぇ。ほっといたらテメェが一方的に勝手な事情押しつけてくっからだろぉが」
髑髏に少しだけ握力を加えつつ、源は生首をギロリと睨みつける。
「ちったぁこっちの事情にも付き合ってもらうぞ。まずは俺への用だけ言え」
「……いいだろう」
そっと目を伏せてから決意の眼差しを源に向け、シオンは口を開く。
「ではまず、お前自身について話そう」
カラカラの口の中から何とか生んだ固唾を呑み込んで、源は力強く頷いた。
「お前は間違いなく私の息子だ。私の血を分けた私の半身。お前のDNAの半分は、私のそれから出来ている。これは確実な事実だ」
一度は嘔吐いた食事を再び喉に詰め込まれたような苦しさが、胸を襲い喉を締め付ける。早くも吐き気を催しながらも、何とか源は頷いた。
生首を載せた左手に身体の震えが伝わらないように、グッと脇を締め直す。
そうして、己を喝破するように源は叫んだ。
「そんな事はどぉでもいぃ!さっさと本題に入れ!」
奥歯を噛み締めてシオンの続く言葉を待つ。
ただそれだけなのに、万力で締め付けられるような時間が延々と続くようだ。
それをジッと見つめるシオンの生首は、少しだけ顔を翳らせた。
「……すまない。私だって出来ればお前にそんな顔をさせたくはなかった。こんな状況に陥らせたのは私の責任だ。本当にすまなかった」
「……別にいぃ……今更……用件を早く話せ」
片や身を竦めるように、片や憑き者が離れたように、互いの目線が交点を失う。
その瞬間の2人の姿は、巨大な潮流に呑まれて引き裂かれた一組の親子そのものだった。
それでも、次の瞬間には2人の目に火が宿る。それぞれ事情があれど、自らの前に立ち塞がる障害に立ち向かう意志を持つ者同士なのが、それだけでわかった。
「すまない。話を本筋に戻そう。キミの姉妹についてだ」
「……紫姫音だけじゃねぇのかよ……」
この世界のどこかにいる、まだ見ぬ姉妹の存在に、源は少しだけ鼻白む。
その様子を見て、シオンは少しだけ表情と口調を緩めた。
「そうだ。紫姫音のオリジナルともう1人いる。だが、彼女たちの身元は、彼女たち自身のタイミングで明かすのを待っていて欲しい」
「……まぁ会うこともねぇだろぉけどよ」
「私もそう願うよ」
「で?」
閑話休題と、源は一拍挟み込む。
「本題のTLJ-4300SHについて、何か話ときたいことがあんだろ?」
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