T.T.S.
FileNo.4 『Sample 13』 Chapter 4-1
1
~2176年12月23日PM10:42 ???~
露払いの役割を存分に果たし、多数のドローンやアンドロイド兵を粉砕した源とギルバートは、工事現場に降り立った。
さながら基礎だけ組まれたビルの建築現場のように、打ちっぱなしの無機質な地面がグラウンドほどの広さで展開されている。
「……あそこだ」
しばしそれぞれ違う方向を観察していた2人だったが、やがてギルバートがある場所を指示した。
建築現場にあるはずのない、フォークリフトなどで釣り上げるパレットが積み重なった一角に、四角く鉄板が敷かれている。
10M四方の正方形はギルバートの一蹴によって取り除かれると、吸い込まれそうな闇を湛えた穴が姿を現した。
「ビンゴだな。じゃぁ早速行ってみよぉぜ」
「源、ちょっと待ってくれ。少し話がある」
「あ?」
真剣な声音に足を止めると、ギルバートはペストマスクを外し、皆が目を背ける素顔を曝した。
ハンセン病に侵された顔を前に、源は眉一つ動かさずに問い返す。
「んだよ?」
「分かってんだろ、さっきのヤツだ」
急激に悪くなった口調は、かつて幼い源が目標にしていた頃のギルバートのそれだった。彼の本気度が伺えるだけに、源は黙って先を促す。
「アレが俺たちと同じ存在だとしたら、間違いなくあのクソジジイも近くにいる。もしかしたら、同胞が腐るほど造られてるかもしれねぇし、俺もお前も死ぬかもしれねぇ……分かってんのか?」
不揃いの双眸が、ギロリと覚悟を迫って来た。
新人類組成計画というネオナチの人体実験によって生まれた人間兵器。
その一つの完成形でもある源とギルバートにとって、互いが激突すると何が起きるかはよく分かっていた。
増してや源は、ギルバートと一騎打ちをした記憶が鮮明に残っている。
だが、それらを全て呑み込んでなお、源は断言した。
「分かってっからここにいんだろぉが。バカかお前?」
「何?」
「お前、ホセとかエリカにアレの相手が出来ると思ってんのか?」
「それはそぉだが……」
「だったら俺らがどぉにかするしかねぇだろぉが」
「……それはT.T.S.のためか?」
「どぉいぅ意味だ?」
「どぉしてそこまでリスクを負うのかって訊ぃてんだ」
「お前あのクソジジイぶっ殺したくねぇのかよ」
「そ、そんな理由なのか?」
「他に理由なんかねぇだろ。何言ってんだ。しっかりしろよ」
そう拳で肩を叩かれて、ギルバートは嬉しくなる。
幼い頃から変わらない、自分本位な源がそこにいた。
「変わってないな、君は」
「テメェもな。ほら、さっさと行くぞ相棒。用意はいいか?」
「ああ、もちろん」
~2176年12月23日PM10:42 ???~
露払いの役割を存分に果たし、多数のドローンやアンドロイド兵を粉砕した源とギルバートは、工事現場に降り立った。
さながら基礎だけ組まれたビルの建築現場のように、打ちっぱなしの無機質な地面がグラウンドほどの広さで展開されている。
「……あそこだ」
しばしそれぞれ違う方向を観察していた2人だったが、やがてギルバートがある場所を指示した。
建築現場にあるはずのない、フォークリフトなどで釣り上げるパレットが積み重なった一角に、四角く鉄板が敷かれている。
10M四方の正方形はギルバートの一蹴によって取り除かれると、吸い込まれそうな闇を湛えた穴が姿を現した。
「ビンゴだな。じゃぁ早速行ってみよぉぜ」
「源、ちょっと待ってくれ。少し話がある」
「あ?」
真剣な声音に足を止めると、ギルバートはペストマスクを外し、皆が目を背ける素顔を曝した。
ハンセン病に侵された顔を前に、源は眉一つ動かさずに問い返す。
「んだよ?」
「分かってんだろ、さっきのヤツだ」
急激に悪くなった口調は、かつて幼い源が目標にしていた頃のギルバートのそれだった。彼の本気度が伺えるだけに、源は黙って先を促す。
「アレが俺たちと同じ存在だとしたら、間違いなくあのクソジジイも近くにいる。もしかしたら、同胞が腐るほど造られてるかもしれねぇし、俺もお前も死ぬかもしれねぇ……分かってんのか?」
不揃いの双眸が、ギロリと覚悟を迫って来た。
新人類組成計画というネオナチの人体実験によって生まれた人間兵器。
その一つの完成形でもある源とギルバートにとって、互いが激突すると何が起きるかはよく分かっていた。
増してや源は、ギルバートと一騎打ちをした記憶が鮮明に残っている。
だが、それらを全て呑み込んでなお、源は断言した。
「分かってっからここにいんだろぉが。バカかお前?」
「何?」
「お前、ホセとかエリカにアレの相手が出来ると思ってんのか?」
「それはそぉだが……」
「だったら俺らがどぉにかするしかねぇだろぉが」
「……それはT.T.S.のためか?」
「どぉいぅ意味だ?」
「どぉしてそこまでリスクを負うのかって訊ぃてんだ」
「お前あのクソジジイぶっ殺したくねぇのかよ」
「そ、そんな理由なのか?」
「他に理由なんかねぇだろ。何言ってんだ。しっかりしろよ」
そう拳で肩を叩かれて、ギルバートは嬉しくなる。
幼い頃から変わらない、自分本位な源がそこにいた。
「変わってないな、君は」
「テメェもな。ほら、さっさと行くぞ相棒。用意はいいか?」
「ああ、もちろん」
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