T.T.S.

沖 鴉者

FileNo.3 The truth in her memory Chapter 2-8



「T.T.S.?」

 警察組織に属していて、その名を知らぬ者はいない。
 タイムマシンを守護する警察組織。ICPOの肝いりで創設された、今最も花形のポジションだ。
 確かな実績は上げているが、それでも一国の警察組織内の小さな捜査チームでしかない特異特別捜査本部第一課には、寝耳に水の来訪者だ。

「何で……」
「……」

「ウソでしょ……」

 反応は様々だが、メンバーが銘々動揺しているのが分かって、絵美は先を急がせる。

「甘さん、わざわざご足労いただき有難うございます。本日はどういったご用件でしょう?」
「当然、本件に関することですよ正岡絵美さん。えっと、みなさんリアルタイムで情報共有してるのよね?……だったらいっか」

 にこやかにメンバーを見回した鈴蝶は、ぼそっと独りごちて、特異特別捜査本部第一課のwebロビーに一件のデータを送ってよこした。

「ちょっ!どうやって私たちのロビー入ったんですか⁉」
「ロサちん、うっさい」

 ジェシカが嗜めたが、ロサが騒ぐのも無理はない。
 堅牢な防壁にまもられたロビーに、メンバー以外が入れるはずがない。だのに、鈴蝶は現れてからの数秒でアッサリと入って来た。
 だが、そんなことはT.T.S.にはなんでもないのだろう。
 こともなげに頷きながら、鈴蝶は続けた。

「ええ、少々お邪魔しました。そんなことより、種も仕掛けもないつまらないファイルデータですが、ご照覧ください。こちら本件の被疑者本人のデータになります。結論から申しますと、本件は我々T.T.S.が違法時間跳躍者クロック・スミスと称する未来人による犯行です」

 全員の顔に緊張と困惑が顕れる中、絵美と幸太郎だけが静かに互いの目を見合わせる。
 嫌な予感が、当たってしまった?
 2人だけが辿り着いた疑問が正鵠を射ていたのか、確証を得るには鈴蝶に問うしかない。

「ちょっと待ってください」

 絵美の言葉に、全員が視線を向けた。

「確度が不明瞭過ぎます。一体何をもってその情報をリークしたんですか?」

 警戒すべきは救いの手、そんな嫌な言葉が絵美の脳裏をよぎる。だが、こと政治にも繋がるような案件の場合、その慎重さは生死を分ける。仕方のないことだった。
 疑問提起に応えられないようならば、この話は聞き流すべき話だ。

「ああ、そんなことですか」

 だから、鈴蝶の言葉は衝撃的だった。

「ご安心ください正岡絵美さん。この情報、未来の貴女・・・・・から上げられたものですから、確度高いですよ」
「……え?」

 誰にも話していない絵美のT.T.S.承認試験申し込みは、こうしてあっさりバレた。

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