T.T.S.

沖 鴉者

FileNo.3 The truth in her memory Chapter 2-6



 2168年2月14日。
 都内近郊にキャンパスを構える大学の学生寮で殺人事件が発生した。
 4名の男子学生が犠牲になり、内半数は未成年だった。全員刃渡りの長い獲物で喉を掻き切られており、即死。
 抵抗の跡も少ないことから、就寝中の奇襲による殺害と思われた。
 1階東側の窓だけが開いた寮からは、犯人と凶器は煙のように消え、目撃証言などの状況証拠も、監視カメラ映像や指紋などの物証も消えていた。
 警察は2000人の捜査官を投入したが、成果は得られず。メディアの連日の過熱報道とは裏腹に、捜査は暗礁に乗り上げた。

 そして、早くも2件目の事件が起こってしまう。

 同年7月17日。
 今度は、遠く離れた北海道札幌市内の男子学生寮で事件は発生した。
 痛ましいことに、3名の犠牲者は全員が未成年だった。
 手口は東京の事件と同じで、全員寝込みを襲う一閃で仕留められていた。
 侵入経路と思われる南西の窓は大きく開け放たれており、犯人が「さあ捕まえてみろ!」と声高らかに叫んでいるようだった。

 2つの事件が同一犯による犯行とされたのは、手口が同じということもあるが、もう一つ共通点があるからだった。
 干支だ。

 2月に東の窓から出入りしていた東京の事件。
 7月に南西の窓から出入りし、行われた北海道の事件。

 両方とも、卯と申を表す方角と月に起こっている。
 この奇妙な符号は、今回の事件にも同様に当てはまった。
 再び東京に戻って来た男子学生寮連続殺人事件は、12月に北東のドアをこじ開けて侵入されていた。
 しかしながら、2000人が目を光らせても何も見出せなかった事件は、伊達ではない。
 実績ある特異特別捜査本部第一課が捜査しているにも関わらず、28時間経っても決定的な手掛かりは掴めていなかった。

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