T.T.S.
FileNo.3 The truth in her memory Chapter 1-4
4
~2176年10月6日AM8:42 東京~
地球の中心に980kmほど近づいた地下に降りた源を、T.T.S.史上初の任務単独任務に就く、という事態の異常さが襲う。
平賀青洲と川村マリヤは、かつてないほど混乱していた。
「おぃ源坊。こりゃ一体何だ?手前何しに行くつもりだ?」
「完全ステルスに完全防刃使用って何⁉屈折補正域の振れ幅エグイことになってるし、繊維密度との兼ね合い超難易度なんだけど⁉」
「ぅるせぇ!いっぺんに喋んな!」
柄強度可変型泉下客服というT.T.S.の任務用の衣服は、実は任務毎にその繊維密度を細かく調整している。そこにゲル状のナノマシンを浸潤させ、繊維の隙間に跳躍先の文化に適した衣服を投影する技術が肉眼視認化拡張現実、あるいは光学迷彩となる。
防刃加工によって繊維の間隙が詰まる中、いかに付着させるナノマシンの数を保つか、技術者チームに対する無茶ぶりは、単独で時間跳躍する源のそれに比類した。
だが、それでも彼らにはやってもらうしかない。
「無茶はこっちも同じだ。だからどぉにかやってくれとしか言えねぇ。Masterだって、アンタらになら出来るて思ったから下知したんだろぉよ」
さながら、被害者に共犯意識を植え付けて一時的に自己の正当性を呑ませる犯罪者のごときセリフを、源はアッサリと吐いてみせた。
普通なら、雇われ者同士の傷の舐め合いでどことなく丸く収まった感じに仕上がる場面だが、源はそこまで人望のある人間ではない。
「もっともらしいこと言って誤魔化してんじゃねえ、白々しい!手前に言われなくても用意は出来てんだガキが!」
「あんたが死のうがどうでもいいのよコッチは!喫緊でめんどくさいこと頼むなっつってんの!」
「何言ってもうっとぉしぃなテメェら」
「とにかく!さっさと着替えてプールに浸かれこのバカ!」
マリヤに尻を蹴られながら新しい柄強度可変型泉下客服に袖を通した源は、エアカーテンで仕切られたサウナ室ほどのスペースに押し込められた。TLJ-4300SH吽號に続く多重ロックが始まる手前、特殊任務以外では滅多に現れないこの空間は、全T.T.S.の面々が顔を顰める設備だ。
天井に設置されたノズルからとろみの強い液体が流れ出たかと思えば、それはエアカーテンの気体に触れた途端、さながら豆乳と苦汁の関係にも似た凝固反応を見せる。
それは足元を覆い、腰を呑み込み、胸を浸し、やがて頭の天辺まで源を漬け込んだ。石膏で型を取るように、ゲルで覆われている間、当然呼吸は慢しなければならない。
10秒にも満たない僅かな時間だが、全身を冷やっこくて軟らかい物質に包まれるのは、単純に不快だった。
「クソッ、いぃ加減鼻に入んのなんとかしろや……」
「源坊、1回しか言わねえから耳かっぽじって聞けよ。今回はナノマシンの密度が濃い。今までにねえほど大量だ。だから雨で落ちることもねえし、あらゆる屈折変化にも対応できるほど密だ。だが雷には気をつけろ。これだけナノマシン積みゃ誘導電流も無視出来ねえ」
「……わぁったよ」
ゾッとしない話だ。
いくら源でも、雷が直撃すればどうなるか分からない。
ちなみに、跳躍先と思われる関ヶ原の天候は、土砂降りの雨。場合によっては、雷も発生しる可能性もあった。
~2176年10月6日AM8:42 東京~
地球の中心に980kmほど近づいた地下に降りた源を、T.T.S.史上初の任務単独任務に就く、という事態の異常さが襲う。
平賀青洲と川村マリヤは、かつてないほど混乱していた。
「おぃ源坊。こりゃ一体何だ?手前何しに行くつもりだ?」
「完全ステルスに完全防刃使用って何⁉屈折補正域の振れ幅エグイことになってるし、繊維密度との兼ね合い超難易度なんだけど⁉」
「ぅるせぇ!いっぺんに喋んな!」
柄強度可変型泉下客服というT.T.S.の任務用の衣服は、実は任務毎にその繊維密度を細かく調整している。そこにゲル状のナノマシンを浸潤させ、繊維の隙間に跳躍先の文化に適した衣服を投影する技術が肉眼視認化拡張現実、あるいは光学迷彩となる。
防刃加工によって繊維の間隙が詰まる中、いかに付着させるナノマシンの数を保つか、技術者チームに対する無茶ぶりは、単独で時間跳躍する源のそれに比類した。
だが、それでも彼らにはやってもらうしかない。
「無茶はこっちも同じだ。だからどぉにかやってくれとしか言えねぇ。Masterだって、アンタらになら出来るて思ったから下知したんだろぉよ」
さながら、被害者に共犯意識を植え付けて一時的に自己の正当性を呑ませる犯罪者のごときセリフを、源はアッサリと吐いてみせた。
普通なら、雇われ者同士の傷の舐め合いでどことなく丸く収まった感じに仕上がる場面だが、源はそこまで人望のある人間ではない。
「もっともらしいこと言って誤魔化してんじゃねえ、白々しい!手前に言われなくても用意は出来てんだガキが!」
「あんたが死のうがどうでもいいのよコッチは!喫緊でめんどくさいこと頼むなっつってんの!」
「何言ってもうっとぉしぃなテメェら」
「とにかく!さっさと着替えてプールに浸かれこのバカ!」
マリヤに尻を蹴られながら新しい柄強度可変型泉下客服に袖を通した源は、エアカーテンで仕切られたサウナ室ほどのスペースに押し込められた。TLJ-4300SH吽號に続く多重ロックが始まる手前、特殊任務以外では滅多に現れないこの空間は、全T.T.S.の面々が顔を顰める設備だ。
天井に設置されたノズルからとろみの強い液体が流れ出たかと思えば、それはエアカーテンの気体に触れた途端、さながら豆乳と苦汁の関係にも似た凝固反応を見せる。
それは足元を覆い、腰を呑み込み、胸を浸し、やがて頭の天辺まで源を漬け込んだ。石膏で型を取るように、ゲルで覆われている間、当然呼吸は慢しなければならない。
10秒にも満たない僅かな時間だが、全身を冷やっこくて軟らかい物質に包まれるのは、単純に不快だった。
「クソッ、いぃ加減鼻に入んのなんとかしろや……」
「源坊、1回しか言わねえから耳かっぽじって聞けよ。今回はナノマシンの密度が濃い。今までにねえほど大量だ。だから雨で落ちることもねえし、あらゆる屈折変化にも対応できるほど密だ。だが雷には気をつけろ。これだけナノマシン積みゃ誘導電流も無視出来ねえ」
「……わぁったよ」
ゾッとしない話だ。
いくら源でも、雷が直撃すればどうなるか分からない。
ちなみに、跳躍先と思われる関ヶ原の天候は、土砂降りの雨。場合によっては、雷も発生しる可能性もあった。
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