T.T.S.

沖 鴉者

FileNo.2 In Ideal Purpose On A Far Day Chapter 2-14

14


『何故こんなことになってしまった?』


『あの女に復讐するためだ』


『その通り、目標はあくまであの女のはずだ。だがこの体たらくは何だ?』


『だから依頼を受けたんじゃないか!あの女を引きずり出すにはこれしかなかった!あの馬鹿で的外れな子供の護衛を引き受けるしか!』


『しかしその子供は明らかにお前の足を引っ張っているぞ!結果はこの有様だ!子供を持て余し、一撃で沈めなければならないあの女を取り逃した!』


「わかってんだよそんなことは!」


 石畳に叩き付けたウォッカが割れて、男はハッと現実に還った。
 ロシア人義勇軍の一個師団を潰して奪った携帯ボトルのウォッカ15本は全て空けている。
 いまだに震える手足を、身体を抱いて抑えつけ、固く目を閉じた。


『それにしても、あの男はなんだ?』


 ベネチア上空から飛来した男。
 常人の跳躍力では叶わない高さにいた。
 高度跳躍機器ジェットパックの機影も確認できなければ、跳躍機内臓義足ディアフット特有の腰部の圧縮窒素射出調整機も認められない。
 つまり、男が自力であの高さまで跳んだと言うことだ。
 恐らく、あの男もあの女と同じ類の存在だ。
 咄嗟にマイクロウェーブシューターで迎撃したが、手応えもなかった。
 マイクロ波凝固が少しでも起こっていればいいが、望みは薄いだろう。
 いずれにしても、ここから先の状況では、あの男も障害になるだろう。


「悪い冗談だ」


 再三したが、改めて装備を確認する。
 先程使用したチャフグレネードの残りはあと三発、二丁一組トゥーハンズ仕様のマイクロウェーブシューターのバッテリーは共に80%を残していた。
場所と時代を考慮して、武器らしい武器を持ってきていない。故に残る自前の装備は義手にした両腕に仕込んだアサルトライフルと袂の隠しナイフくらいのものだ。加えて、今しがたロシア兵から手榴弾グレネードを4個強奪できた。
 戦闘用のプログラムもバグなくしっかり動いている。
 戦いはまだまだ続けられる。
 続けられるのだが。
 人外ともいえる戦闘能力を有する2人の相手をすると思うと、まだまだ不安があった。
 男は立ち上がって周囲を探る。
 とても素面でいられなかった。


「……今度はワインが欲しい。イタリア人でも襲うか」


 なに、焦ることはない。
 このねじ曲がった時間の中では、体勢を立て直す間も十二分にあった。

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