T.T.S.
FileNo.2 In Ideal Purpose On A Far Day Chapter 1-1-Side:鈴蝶
~2176年9月30日AM8:24 東京~
時間跳躍に関する組織犯罪対策本部。
警視庁に設置された国際刑事警察機構主導のオフィスは、今日も閑散としていた。
それもその筈。
ここは手続き上のオフィスで、中にはデスクが一組設置されているだけだ。
だからデスクの主は、朝早くにも関わらず、オフィスの施錠を終えて警視庁を後にしようとしていた。
「いやー相も変わらずこの国は平和ねー」
薄っぺらな鞄をブラブラ振りながら、鼻歌交じりに老女は歩き出す。
T.T.S.Master、甘鈴蝶。.
国際刑事警察機構から日本に出向を命じられて以降、彼女はT.T.S.とそのオペレーションを司るI.T.C.、現在時間における実動部隊P.T.T.S.日本支部の全組織を取り纏めて来た。
と言うと結構なデキる女に聞こえるが、優秀な部下達が鈴蝶の仕事を殆ど奪っていくので、結構伸び伸びしていたりする。
だからこうして、警察庁から追いやられて警視庁なんぞに隔離されたオフィスを早々に脱出出来る訳だ。
ただ、だからと言って彼女がまるで仕事をしない訳ではない。
こんな何もできないオフィスにいるより、適所があるというだけだ。
「これでもう少しT.T.S.の皆さんが大人しい方々だとなお良いのですけどねえー」
T.T.S.という組織は、ほぼ元犯罪者達の寄せ集め集団だ。
世に明かせない経歴を持つ者も少なくない。
唯一まともと言えるのは、警察官上がりの正岡絵美位のもの。
その経歴を頼りにT.T.S.の内部統括を一任しているが、その負担が大きいのは自明の理だ。
故に、しっかりとサポートしてあげるためにT.T.S.の本部に赴く訳だ。
「絵美ちゃんに倒れられたりしたら……大変だものねー」
そう独り言ちた傍から、外部音声通話受信の警告アラートが視界を覆った。
年甲斐もなく可愛らしい悲鳴を上げながら、鈴蝶は応答した。
「朝も早くからおは疲れ様。このパターンだと絵美ちゃんかしら?ジョーンちゃんかしら?」
「……いい加減その名前で呼ばれるのは萎えるからめっ、って言わなかったかしらあ?」
「あら、その声はジョーンちゃんね。何かあったの?」
声の主は、他ならぬT.T.S.No.1のジョーン・紗琥耶・アークだった。
普段細かく連絡をするような人物ではない。
嫌な予感がした。
「貴女ねえ……まあいいわ……お姫様が熱でイッちゃった。一応解熱剤はゴックンさせたけどお、今日は一日寝かせといた方が良さそ」
「ああー……マージかー……」
とてつもなくあっさり嫌な予感が当たって、軽く目眩がした。
『ど、どないしましょ……って呆けてる場合じゃないね』
危うく凍りかけた思考を、米神をコツコツ叩いて再起動させる。
「オッケー……えーっと、アグネスちゃんは今日いるんだっけ?」
「アグネス射出すのお?アタシあの娘は肌が合わないから苦手え」
「そうは言ってもね」
「だったらアイツ射出してよお、あのカウパーってるの」
「カウパーってるって……」
それは彼女だけが使うT.T.S.唯一の男性メンバーを称する言葉だ。
「いや彼は今休みで……」
関係ないない、と笑う紗琥耶の声を縫って、もう一つのアラートが踊った。
正直、変な笑いが出た。
アラートの種類は機密漏洩警告。
漏洩予想地点は東京湾岸警察署。
漏洩状況予想、刑事事件事情聴取。
予想漏洩者、T.T.S.No.2い源。
「うん、そうね……これ行けるわ」
行先は、変更する必要がありそうだ。
時間跳躍に関する組織犯罪対策本部。
警視庁に設置された国際刑事警察機構主導のオフィスは、今日も閑散としていた。
それもその筈。
ここは手続き上のオフィスで、中にはデスクが一組設置されているだけだ。
だからデスクの主は、朝早くにも関わらず、オフィスの施錠を終えて警視庁を後にしようとしていた。
「いやー相も変わらずこの国は平和ねー」
薄っぺらな鞄をブラブラ振りながら、鼻歌交じりに老女は歩き出す。
T.T.S.Master、甘鈴蝶。.
国際刑事警察機構から日本に出向を命じられて以降、彼女はT.T.S.とそのオペレーションを司るI.T.C.、現在時間における実動部隊P.T.T.S.日本支部の全組織を取り纏めて来た。
と言うと結構なデキる女に聞こえるが、優秀な部下達が鈴蝶の仕事を殆ど奪っていくので、結構伸び伸びしていたりする。
だからこうして、警察庁から追いやられて警視庁なんぞに隔離されたオフィスを早々に脱出出来る訳だ。
ただ、だからと言って彼女がまるで仕事をしない訳ではない。
こんな何もできないオフィスにいるより、適所があるというだけだ。
「これでもう少しT.T.S.の皆さんが大人しい方々だとなお良いのですけどねえー」
T.T.S.という組織は、ほぼ元犯罪者達の寄せ集め集団だ。
世に明かせない経歴を持つ者も少なくない。
唯一まともと言えるのは、警察官上がりの正岡絵美位のもの。
その経歴を頼りにT.T.S.の内部統括を一任しているが、その負担が大きいのは自明の理だ。
故に、しっかりとサポートしてあげるためにT.T.S.の本部に赴く訳だ。
「絵美ちゃんに倒れられたりしたら……大変だものねー」
そう独り言ちた傍から、外部音声通話受信の警告アラートが視界を覆った。
年甲斐もなく可愛らしい悲鳴を上げながら、鈴蝶は応答した。
「朝も早くからおは疲れ様。このパターンだと絵美ちゃんかしら?ジョーンちゃんかしら?」
「……いい加減その名前で呼ばれるのは萎えるからめっ、って言わなかったかしらあ?」
「あら、その声はジョーンちゃんね。何かあったの?」
声の主は、他ならぬT.T.S.No.1のジョーン・紗琥耶・アークだった。
普段細かく連絡をするような人物ではない。
嫌な予感がした。
「貴女ねえ……まあいいわ……お姫様が熱でイッちゃった。一応解熱剤はゴックンさせたけどお、今日は一日寝かせといた方が良さそ」
「ああー……マージかー……」
とてつもなくあっさり嫌な予感が当たって、軽く目眩がした。
『ど、どないしましょ……って呆けてる場合じゃないね』
危うく凍りかけた思考を、米神をコツコツ叩いて再起動させる。
「オッケー……えーっと、アグネスちゃんは今日いるんだっけ?」
「アグネス射出すのお?アタシあの娘は肌が合わないから苦手え」
「そうは言ってもね」
「だったらアイツ射出してよお、あのカウパーってるの」
「カウパーってるって……」
それは彼女だけが使うT.T.S.唯一の男性メンバーを称する言葉だ。
「いや彼は今休みで……」
関係ないない、と笑う紗琥耶の声を縫って、もう一つのアラートが踊った。
正直、変な笑いが出た。
アラートの種類は機密漏洩警告。
漏洩予想地点は東京湾岸警察署。
漏洩状況予想、刑事事件事情聴取。
予想漏洩者、T.T.S.No.2い源。
「うん、そうね……これ行けるわ」
行先は、変更する必要がありそうだ。
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